救援隊出動!
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「「「ありがとうございます!ありがとうございます!」」」
ネスク達は困惑をしていた。重傷だった者達が目を覚ましたら、地面に頭を擦りつけながらお礼を言っているからだ。彼らの傷は、既に後遺症もなく元通りに戻った。
ネスクを除く殆どが女性陣のため、身なりは裸ではなく、狩り取った獣の毛皮を全員に巻かせてある。
「頭を上げてくれんかのう?このままじゃ、話しづらい」
ミレドが合計23名の治した男達に声を掛ける。刺激が強いため、年少組はポーアとカレンの蔓羽衣で目を覆って隠している。彼女達の意思次第で、自由自在に扱えるのだからドルイドの蔓羽衣は手が増えたと考えればとても便利な物である。
「それで……なのじゃが、襲った敵は、『ゴブリン』かのう?」
「「「………………」」」
沈黙の後に、全員がゆっくりと縦に頷く。
「どのぐらいかわかるかのう?」
「そこらじゅう、ゴブリンどもだった…」
「緑の悪魔どもがそこらじゅうに」
「あいつらは、俺の嫁を……」「作物も……」
「牛の内臓を引きずり出して……殺しやがった」
「ダチが苦しむ様を見て笑っていやがった………!」
ゴブリン。簒奪された作物に、家畜。
そして、女性の誘拐。ここまで情報は予想通りであった。
だが、一つだけ新事実が浮上した。
「オークが………混ざってやがった」
オークとは、巨大な体躯に豚というか、猪の顔を持つ魔物である。よく、鬼と混合されがちではあるが、列記とした別種である。
「お願いします!冒険者の皆さん!どうか、どうか家族を救い出して下さい!お願いしますお願いします!!」
「妻を娘を…!」「妹を……!」「どうかお願いします!」
家族を守れなかった悔しさから来るのか、大の大人がわんわんと涙を流す。現在の時間は、到着して既に二刻限(二時間)は経過している。
救えるかどうかといえば、グレーである。
夜中から早朝に掛けて襲ったとすると、既にかなり距離が離れすぎている。東から顔を出し始めていた太陽は真上に駆け上っている。
袖を引かれて、視線を下へ向けると先ほど助けた少年がいた。
「一生のお願いだ!かあちゃんを、妹を助けてくれ!
なあ、頼むよ!お願いだ!お願いだ!!」
涙を流しながら顔をクシャクシャにして頼んでくる少年を見て、断ろうとした言葉を飲み込む。
そんな少年にクーシェが歩み寄る。
「私達は、冒険者ではありませんが、あなた方を見捨てるような事はしません!」
安心させるように話し掛けるクーシェが温かな笑顔を少年へと向ける。クーシェの腕の中に飛び込むと、そのまま泣き続ける。
「決まりじゃな!」
「ああ、…………やるか。」
「戦闘準備ですね!」
その様子を見て、ネスク、ミレド、ポーアが静かに戦闘準備を開始する。ポーアの呟きを聞いたカレンが剣を抜いて掲げる。
「私は騎士です!『騎士』の名に掛けて、あなた方の願いを飲みましょう!安心めされよ!!」
それは、こちらでは『騎士』が"絶対の誓い"を立てる際にする行動である。
「……ありがとうございます……ありがとうございます」
神に祈るかのように、感謝の言葉を唱え続ける。
それを見てネスクはクーシェを制するのを辞めた。
「【爆発】」
激しい爆発が空へと打ち上げられた。空で爆発を起こした後、黒煙が舞う。本当であれば、広範囲魔法なのだが、今は人助けの狼煙として使用された。
―――人の役に立つ。魔法にとって、これほど名誉な事はない。
「流石にこの狼煙に気付かぬほど曇った目はしておらぬとは思いたいのう。」
「『超級魔法』を使用されたのですからその揺らぎを見過ごす方などおりません。」
【爆発】は、『上級』の一つ上、―――『超級魔法』に分類される魔法だ。
威力は抜群だが、大量の魔力を消費する燃費の悪い魔法である。威力だけをみれば、もっと上の、『極限魔法』に分類されてもおかしくはない。
『超級魔法』に収まっているのは、【爆発】の上位互換である【爆災】と呼ばれる魔法が存在する。
「ふぅ、さて行こうか」
『極限魔法』程ではないにしろそれなりに使うこの魔法は体への負担もそれなり、戦えなくなるほどではないが、しばらくは皆の力頼みになる。
「………置いて来て良かったの?」
「今回は、ルリの方が適任だからな。頼りにしてるぞ!」
「うん、頑張る……!」
頼りにされてルリが静かに燃える。今回の配分は、
―――ミレド、ポーア、ネスク、それに加えたルリ。
この4名がゴブリン殲滅に加え、人命救助へと赴いている。
「ネスク様、クーシェ様も同行して頂いた方がよろしかったのでは?」
「………いや、そういうわけにも行かないかな。」
クーシェ、カレン、ルリ以外の年少組(パルメルス、ネア、マロン、フィアール)が留守番に加え、これから来るであろう王都側兵士達への説明役である。
それほど時間を掛けるつもりは無いが、無一文の上、無防備な村人達を放っては置けない。
クーシェを置いていくと伝えた所、『置いて行くのですか?』と捨てられる子犬のような表情をしていた。胸に刺さる物があったが、自分に鞭を打って連れてこなかった。
クーシェは、頑張り過ぎる一面がある。昨日から徹夜をしている彼女に無理させるわけにもいかない。今朝も彼女の五感を頼りにここまで来たのだ。
急に倒れられても心臓に悪い。
「今回は、クーシェには荷が重いのう。『獣』も使えぬとなると、戦闘技術と魔法のみでは、数に負ける。
しかし、何故ルリを連れて来たのじゃ?師弟贔屓か?」
「違う………ルリどっちだ?」
「………あっち」
「そういうことか。」
北東を指差したルリの様子を見て、ミレドが何か納得した。ルリには、目では視えない者(精霊)を視る力がある。




