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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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国境の門にて

更新します。


「はい、次―――」


 門番をしている兵士がネスク達の前に並んでいた人達のチェックを始めた。手荷物検査に、所持している物まで徹底した検索。流石は国の玄関口にあたる門である。


「やっと、ですね。長かったです……」


 少し疲れた様子のクーシェ。

 かれこれ一時間くらい長い時間を掛けて長蛇の列に並んだ。早朝から出発して既に昼を過ぎた。


「もうちょいだ。頑張ろう!」


 この門を越え、街を抜けて少し歩けば第二の検問所。更にもう一街を過ぎれば、王都までは目と鼻の先。その前にもう一つ検問所があるがそこが最後の検問所である。


 そこまで行くには今日一日ではどうにもならないからどこかで宿を取るか、野宿をする必要がある。


「はい、次―――」


 門番をしている兵士がネスク達を呼ぶ。兵士数名に手荷物を渡す。中身を見られても大丈夫なように『袋』には偽装魔法をかけてある。


 食料、衣類、短剣などなど。中身を触れられても大丈夫でかつ、旅支度用に見える物だけを袋に出し、異空間は引っ込めてある仕組みだ。鑑定魔法で詳しく見られない限りは破られない。


「ん?君は、『灼熱の狼(カプシモ)』か?」


 チェックをしていた兵士の一人がクーシェに声を掛ける。


「そうですが、あの何か?」


「なら、大銀貨五枚払え」


「えっ?」


 その言葉に耳を疑った。クーシェも驚きのあまり固まってしまっている。更に続け様の言葉に耳がどうにかなってしまったのかと思った。


「あー、それから『エルフ』に『マーメイド』『ユニコーン』に『ドルイド』もだ。」


「どういう事じゃ!?」


 ミレドが食って掛かる。ミレドの鬼気迫る表情に検査をしていた兵士が全員怖がっている。


「お前は、…………混種か?なら良い。上からの決まりだ。現十種族の奴らには国に入る時に、人権税として大銀貨三枚を貰うよう取り決めているんだよ。お前ら知らなかったのか?」


 一人だけ平常運転の兵士がそう告げる。


「一ついいですか。何で『灼熱の狼(カプシモ)』からもその『税』を取るのですか?」


 ミレドが感情を昂ぶらせた事で自然とネスクは冷静でいられる。内心はあまり良くないがポーカーフェイスで怒りを表に出さない。


「『希少種』だからだ。もし、希少種である奴に何かあっても、国としての責任は取れないからだ。」


「……そういうことか。」


 つまり、何かあってもそれは『自己責任』であって国は一切関与していないと言う形式を取りたいのだ。本当に国家とは、ドス黒い奴らの巣窟である。『賢王』と呼ばれる王が統治していても、国全てに目を光らせる事は出来ないと言う事だ。


「お前は人間か。なら、お前はこれに触れろ。」


「……これは?」


「犯罪を犯していないか、全員チェックする。」


 先ほどの農民と思しき人達も触れていた。ネスクはこの手の平サイズの魔結晶に触れてみた。――――何も起きない。

 他の皆もそれに触るが、何も起きない。


「よし、後は金さえ払えば、通ってよし。さあ、どうする?エルフが一人、マーメイドが一人、ユニコーンが一人、ドルイドが三人………いや、二人にカプシモが一人で合計、大銀貨二十枚だ。払わないなら、ここは通せない。」


「ならば、力尽くで!!」


 ミレドが攻撃態勢を取ろうとする。


「やめとけ、ミレド。ここで事を構えたら、それこそ目的から遠ざかるぞ。」


「ガルルル!!!」


 今にも噛み付いて行きそうなミレドを手で抑える。怒りで溢れ出るミレドの魔力で『封印の包帯』が千切れた。


「では、こちらを」


 ポーアが金貨を二枚取り出して近くにいた兵の一人に渡す。


「騒がせてすみません。こいつには後で言っておきますので!」


 ペコペコとネスクが謝りながらミレドを抑えたまま荷物を受け取り門を通る。あまり長居すると悪目立ちしているためまたトラブルに巻き込まれるのも面倒なのだ。 


「お、おう。確かに受け取った。

ようこそ、ペルメス王国へ」


 律儀に返すその兵士を横に皆が無事通り過ぎるのであった。


 * * * * *


 人並みが途切れた頃、兵士達は一息付いていた。


「「「「怖かった〜!!!!」」」」


 門番をする四人が声を揃えてヘタリこむ。今日に限って、めちゃくちゃヤバい奴らが中に入る検問所に来たのだ。


「おう、お前らお疲れ。」


 ヘタリこむ四人に報告に行っていた兵士が労う。


「ブンタさんよく、あの人達を相手に金なんて取れましたね!」


「今は仕事中だ。分隊長と呼べ!」


 この五人は、国境の門番を任せられたペルメス軍所属の国境部隊第156部隊である。

 王都から離れた国境(ここ)を警備する任に就いている。


「あ、すいません。つい、」

「隊長の名前と役柄ってほぼ同じですから。」

「ブン隊長〜!飲み物下さい!!」

「俺も俺も〜!」


「お・ま・え・ら!!!」


「「「「ひぇ、ごめんなさ〜い!!」」」」


 いつもの(躾の)一発をお見舞いしようと思ったが今日はやめた。流石にあんな物の後なのだ。可(・)愛(・)い(・)部下が不憫に思えてしまったからだ。


「………今日、この後一杯行くか?」


「「「「行きます!!!」」」」


「………調子の良い奴らだ。」


 仕事中であるが、煙草(タバコ)に呪文を唱えて、魔法で小さな炎をつけて今日を振り返る。

 今日、魔物よりも凶悪な連中を門の中へ通した。

 正直、あの圧倒的な魔力を浴びせられて自分自身も内心では冷や汗が止まらなかった。一緒にいた少年が白い少女を止めていなければ、今頃、あの世(あちら)で祖母と隠居生活をしていただろう。


 ドルイドにユニコーン、マーメイドにエルフ。某連合国のトップに位置する十種の内の四種が一斉に来たのだ。始めは、偵察を窺ったが人間の子供が一人混じっていたから違うのだろう。

 某連合国は、人間を嫌う。そんな連中が人間の子供を使うとは到底思えない。

 他にも数名。混種―――種が交わった者が一緒に来たが中でもハチュウ類系。

 リザードマンかドラゴンの血を持った少女(全身の白からアルビノと思われる少女)が危険であった。その魔力は圧倒的。よく、あの魔力を受けて失神しなかった物だと自分を褒めたい。

 あれは、もう『歩く災害』だ。目的がどうのこうの言っていたからさっさと通して、目的を果たしてもらった方が良い。


「…………ん?いつもより火の付きが悪いな。どうしたんだ?雨が降ってるわけじゃねえし。」


 なんだか、肌寒い。

 今は夏。こんなに冷え込むのはおかしい。異常気象なのだろうか。


「こ(・)ん(・)に(・)ち(・)は(・)」


 振り返ると小柄なフードを深く被った人物がいた。いかにも怪しげな人物。そして、大柄な人物がもう一人。どちらも口元だけがフードから出ている。


「あの、中へ入りたいのですが、通ってもよろしいでしょうか?」


 おそらく女性だろう。声の高めな綺麗な声である。


「………あ、ああ。その前に手荷物と装備、それから身元検査を受けてくれ。お前ら……」


 兵士の四人が検査をするために二人へと近づく。小柄な方のフードの人物に触れようとしたその時、


「無礼者!!」


 触れようとした部下の一人が盛大にふっ飛ばされた。


「チッ!!」


 今日に限って厄介事が重なる。帯刀していた剣を抜く。部下をやられたのだ。それで黙っているほど人間性は出来ていない。

 丸太のように太い腕。その腕へと斬りかかる。だが、太い腕を斬りつけた瞬間、刃が根本から折れた。


「人間ごときが剣を向けるとは身の程を知れ!!!」


 首を掴まれ持ち上げられる。すごい力で呼吸ができない。その太い腕の先、爪が鋭く尖る。


(マジか)


 尖った爪がそのまま、頭に振り下ろされる。死が見える。あの太い腕の怪力だ。脳をそのまま………


「「「分隊長!!!」」」


 部下の叫び声が聞こえる。

 願わくば、彼らの命だけでも無事であるように。





『止めなさい』


 小柄なフードの人物の声で大柄な人物が静止した。


「今すぐ、その方を下ろしなさい。それとも、もっと『躾』られたいのですか?」


「ゴホッ!ゴホッゴホッ!」


 首を放された事で呼吸が出来るようになり咳き込む。危うく、窒息する寸前であった。


「うちの者が失礼しました。これは些細なお詫びです。お受け取りください。では、私達は急ぎます故、通らせていただきます。」


 小柄なフードの人物が床に何か置く。


「あの、せめて水晶に触れて………いただければ」


「あん?」


「ひっ!」


 部下の一人が魔結晶の水晶を恐る恐る出すが、がんを飛ばすような声で怯えた声を出す。


「………凍結」

「あがあああああぁ!!!!」


 少女の呟きの後、突如もう一人が苦しみ出す。その場の全員がそれを見て固まった。先ほど、分隊長の首を鷲掴みにした片腕が"凍り付いていた"。


「これでよろしいですか?」


 魔結晶の反応はなし。大柄な人物も残った腕で触れるも反応は無い。少なくとも、

――――犯罪は犯していないようだ。


「では、お騒がせしました。」


 礼儀正しくペコリとお辞儀してその二人組は去って行った。


「隊長!!!」


 思い出したように一人がふっ飛ばされた一人に、もう一人が隊長のブンタに近寄る。全員何が起こったのか未だに理解が追いついていない。


「俺は大丈夫だ……それより………マジか。」


 目線の先には小さな小瓶に入った赤い液体。それは極一部の薬学者が作る事が出来る『ポーション』と呼ばれる物。売れば、高額で取引される物が二(・)本(・)も置いてあるのであった。

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