米茸再び
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実りに実った米茸が高々と立ち並び竹林が畑にそびえ立つ。実験の一環として、魔法【成長促進】を掛けた影響で通常の二分の一の約一ヶ月弱で食べられるまで成長した。
あまり掛け過ぎると、その辺に生息する竹藪と同じようになってしまうため、少しずつ与える魔法を制御しながら毎日掛けた。魔力が多過ぎると、しっかりした味にならず、場合によっては、『魔物化』してしまうため大変であった。
「それじゃ、刈るぞ!!!」
「「「「「おー!!」」」」」
ネスクの掛け声で全員が声を挙げる。今日は、全員集合である。今回は、人手がかなり必要だからだ。
稲と違って少しばかり硬いためナタ形状にした道具を使う。以前手伝って貰ったクーシェやミレドはもちろん、"見ていた"と言っていたポーアには説明は不要だろう。カレンや年少組、ついでに精霊二人には刈りながら教えれば良い。
――――何事も経験である。
「この竹………食べる事が出来たのですね。」
パルメルスがそう呟いた。
「パルメは力が弱いから皆が切った米茸をこうやって一束にしてくれ!」
「は〜い!」
ネスクがパルメルスの前で幾つかを束にして米がなっていない根元の方を細い紐で結んで見せる。それを見たパルメルスがトコトコと切り倒された米茸を拾いに行く。年少組の中ではパルメルスが一番力が弱い。
十人十色ともいうため誰しも苦手と得意はある物だ。
「フィアも手伝ってくれるか?」
「わか、りました。」
フィアールが恐る恐るといった感じにパルメルスと同じように拾いに行く。気が弱いフィアールとは未だに馴染めていない。ポーアやクーシェとはよく話しているため誰にでも、と言うわけではないのだろう。
「はぁ、……どうしたもんかな。」
怖い思いをした彼女とのこれからを思うとため息が出てしまう。
「…………おつか、れ?」
そう言ってルリがネスクの頭を撫でる。小さな手が優しく撫でてくる。
頭を撫でてくる小さな可愛らしい容姿に心が洗われる気がする。
「……ありがとう」
「ネスクさんネスクさん!どうですか!」
ルリの可愛らしさに和んでいると元気な声がネスクを呼ぶ。呼ばれた先にフルールがいる。
「ナタを振り回すな!当たったら大変だからな!!」
子どもの体格からすれば、重い筈のナタモドキをぶんぶんと振り回していた。
「わかりました!」
空いた片手で手を振った後、米茸を根元からスパっと切り倒す。最近は、以前の遠慮がちの奥ゆかしさは息を潜め、おそらく本来の素の元気な姿なのだろう。
――――パワフルになったともいえる。クーシェほどではないにしろ、前世の子どもの身体能力を凌駕している。力の強さは、年少組の中では随一。
「ふ〜ん、ふふ〜ん♪」
鼻歌混じりの上機嫌な様子で切り倒す。元気なフルールを見ていると、心の奥がほっこりする。
このまま元気になってくれるそれが一番である。
「おっとっと!」
前のめりに転がりそうになる所を踏ん張る。
「ちょっと。サボってないで仕事やりなさい!!」
「悪い悪い。そういうお前も仕事しろよ?」
「あら、してるわよあんたと違ってきちんとね♪」
左手で時折、何かを指している。
おそらく自分の"羽根"を操作しているのだろう。
辺りを見渡すと次々にネスクの背よりも高い稲が刈られて行っている。魔力の反応からしてクーシェ、ポーア、ミレド、カレンとは違う。小さな反応が無数。その反応は、羽根である。一ヶ月間付け狙われていたから間違える筈もない。
だが、一ヶ月前より手数が増えた気がする。
「ふふふ驚いたでしょ!今ならあんたにも引けを取らないわよ!」
ニヤリと笑うネア。この一ヶ月狙われた甲斐があったというものである。
「おー凄い凄い。よくやったな!」
「な、なによ……もっと悔しがりなさいよ。」
純粋に褒めるとぷっくりと頬を膨らませる。
教えたアドバイスを素直に受け取らなかった物の、自分でもより良くさせようと努力した証が今の光景である。和解してからお互いの"秘密"を晒して、根が少しばかり丸くなった。………そんな気がする。
仲が現状維持の者もいる一方、少しばかり距離が近づいた者もいる。まだまだ、距離は近くはないものの良い傾向にある。
「あっ。ネスクさん、芋虫が付いてるよ?」
「え?おいどこだ!?」
ネスクがキョロキョロと自身に付いた虫を探す。
足踏みをして振り落そうとする。
すると、
「ぬあっ!??」
ネスクの姿が消えた。
「「「あ。」」」「あんた……何やってるのよ…………」
パルメルス、ルリ、フルールが驚き過ぎて、抜けた声を挙げる一方、ネアだけが呆れている。"落とし穴"に落下したのだ。ネスクがすっぽりと入ってしまうくらい大きな穴。
「おぬし……何やっとるんじゃ」
「ネスク様大丈夫ですか?」
「カレン、手を貸してあげて下さい。」
「畏まりました」
ネスクの様子に気付いた四人も寄ってくる。
落とし穴に落下したネスク。その穴に向かってミレドとクーシェが覗き込む。ミレドは呆れた表情を浮かべ、クーシェは心配そうな顔をしている。そして、ポーアはカレンに指示を出す。
「一体……何が……」
落ちたネスク自身も理解出来ていない。足元は確かに
しっかりしていた。突如地面が抜けたのだ。
「ありがとう、カレンさん」
「いえ、ケガがなく何よりです。」
上から差し出された手を借りてネスクは脱出する。理解出来ないまま、ネスクは作業に戻るのであった。
不思議がる一行の中、一人だけ笑いを堪える者がいたのだった……。




