↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
232/347

ネスクとネア その肆

更新します。大分、話の内容が濃厚かつ、長文になってしまいました。


 ぱらぱらと雨の音が聞こえる。

 小さい範囲―――自分の周囲半径50メートルくらいで結界を張ってある為。魔物の類と木の葉から漏れ落ちる雨くらいは、防げるはずだ。


「雨………止まねぇな………」


「………うるさいわね。喋らないでくれる?」


 当たりのキツめの言葉だが、(前世で慣れているため)気にならない。


   ゲコゲコ    ゲコゲコ


   ゲコゲコ     グエッ


 雨の振り仕切る中、蛙の合唱が始まる。綺麗なハモり声の中、一匹だけ腹を蹴られたような鳴き声をする。



   ゲコゲコ    ゲコゲコ


   ゲコゲコ    ワンッ


 再び、合唱すると今度は、一匹だけ犬の鳴き声が聞こえた。

 彼女の毒舌より、むしろそちらの方が気になる。


     ゴロゴロ     ピカッ!!!









        ドンッ!!!!!!!




 発光した後、軽く揺れた。


  雷がどこかに落ちたようだ。

 はて、昔。何かのテレビで雷について習ったな。

 確か――――雷は、高い所に落ちるんじゃなかったっけ?

そんでもって、木の近くが一番危険な筈………。


「ちょ、ちょっと!何か喋りなさいよ!」


「急に何だよ。喋るないえば、今度は喋れって……」


「う、うるさいわね!いいから!!何か喋りなさい!!!」


 急に動揺した様子のネアが何か喋るように施す。若干ではあるが、いつものネアより顔色が白い気がする。


 雷の後の動揺……………もしかして………


「お前、………雷が怖いのか?」


 ネアが固まった。白くなった肌も相まって石像のようにカチカチである。


「は、はあ!?そんなわけ無いでしょ!雷なんて怖いわけ」


 ネアが話している途中――――、


 ピカッ


 再び雷の発光した光。


(一……ニ………三………四……)


 一から数えていく。そして、十秒を過ぎた所で―――



    ドンッ!!!!



 どこかで雷が落ちた。


「ひあっ!」


 雷が落ちた音の後、急にネアが飛びついて来た。


「お前、大丈夫か?」


 腕にしがみつくネアは小刻みに震えている。そのくらいなら雷を恐がる女の子。――――なのだが、


「ゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイ――――――」


 ブツブツと呟くネアの声で尋常じゃない事が分かった。まるで壊れた機械のように、『ごめんなさい』という言葉を永遠に呟いている。

 半年くらい前彼女達が来た時、俺自身は、彼女達に会わなかったため知らないが後から聞いた彼女達の様子と今のネアの様子と酷似している。

 誰がどんな様子だったのかまでは、知らない。

 だが、ネアの様子から。

――――"雷"か、もしくはその落下音が何かの引き金になっているのは明らかである。


「ふぅ、世話の焼けるヤツだ。」



 包帯だらけの手でネアの肩をしっかりと掴んだ後、空いた手を前に出す。そして、


「【無音(サイレント)】」



 周りの音が―――――全て消えた。


(結界内を指定。魔法【無音(サイレント)】の効果を限定させました。これで……よろしいですね、大朏様)


(愛してるぜっ!ソフィ♪)


(へっ。空っぽな愛などいりません。そんな物、ゴミ箱に捨てておきますので、無駄口を叩かず早くネア様を何とかして上げてください)


 Oh……これぞ、『毒舌ソフィア』


 先程のネアが可愛く思えるくらい鋭い切れ味の言葉でネスクの心がちょっとだけ磨り減った。


「さて、冗談はこの辺にして……」


「ゴメンサイゴメンサイゴメンサイゴメンサイ」


 今もなお、『ごめんなさい』を言い続けるネア。彼女に掛ける言葉を探すが何と言って声を掛けるべきか悩む所である。軽すぎる言葉は彼女の壊れかけの心には響かない。かといって、そのまま放置も出来ない。


 と、なれば―――――、


「【心に鳴るは 祝福の音(フォトン・セラピリオ)】」


 こちらもあまり(大掛かりな)魔法を使える身体ではないが、それでも彼女の為にこの魔法を使う。

 光魔法にあたる【心に鳴る 祝福の音(フォトン・セラピリオ)】は、解呪の魔法である。精神支配もしくは、精神汚染を受けた者の精神を浄化させ、正常に戻す魔法。


「私は、………私は…………」


「大丈夫だ落ち着け。心を鎮めろ………」


 無言で静かになったネア。顔色も元に戻りつつある。

 いつもなら、抱きしめた体勢になっているため直ぐに攻撃されそうであるが………。


「…………人間のくせに………。」


 手を振払わず、大人しい。ふて腐れたような声を発するが、何というか。言葉のトゲが立たず、柔らかい感じがする。


 * * * * * *


「………何か聞かないの?」


 しばらくして、落ち着いたネアが隣でそう呟いていた。今まで声を一切発しなかったため答えるのに反応が遅れた。


「……何をだ?」


「とぼけないで!………何で、私が……ああなったのか……知りたくないの?」


 ネアが目を伏せる。その様子は、以前のミレドを彷彿させる。


  触れられたくない、知られたくない。


 そんな感情が透けて見えるようである。


「お前の弱い所を知ってどうするよ?

そんなもん知りたくもねぇ。だから、俺の答えは一つ。

………ノー。そんなもんいらん!」


 正直、どうでもいい。調べようと思えば、調べられる。それこそ、本人の考えていることから彼女の素性まで―――その他etc………


「なっ。何よ!人がせっかく……」


「俺の勝手だ!話したければ勝手に話せ。聞くだけは、聞いてやるから。」


「なっ!人間のくせに生意気!人間のくせに!!人間の……くせに………」


 ネアの声に耳を傾けていると、両手がズキリと痛む。代償が発動する合図である。この感覚も久しぶりで、ズキンズキンと重い痛みが走っている。

 やはり、上級に位置する魔法を使えば反動が来る。

 使おうと思えば使えるが、使い過ぎると変異する。


(何とも不自由な体だな……。)


 何もしなければ、直ぐに痛みは鎮まる。


「小さい頃、私、お父様に監禁された事が……あるの。」


 今は黙ってネアの話を聞こう。

 ネアの様子は先程の取り乱した時より落ち着いている。だが、その瞳は淀んでいる。それほどまでに、

―――その頃の記憶がトラウマとなっているのだろう。


「前に言ったけど…………私には上に二人。下に一人の兄弟がいるの。もちろん、他の兄弟は第一婦人の……アーネリア様の子だけど………」


 つまり、腹違いの兄弟ということか。

 妾の子であり、他が正妻の子どもならさぞかし、肩身も狭いのではなかろうか。


「私が5歳の時、父様はよく一つ年下のデリアを可愛がってたの……。その頃の私は自分の立場を理解出来てなかったから……父様に構って欲しくて、我儘を言ってしまったの………」


「お前………今年でいくつ?」


「………十二………」


 ぼそっとネアが呟いた。と言う事は、七年前。

 その頃の記憶を今も残っていると言うことはそれほど根強く残っているのだろうな。

 ちなみに、ルリも十二、フルールとパルメルスは十一。

マロンとフィアールがその下の十といってたっけ。

 一番意外だったのが、ルリだ。

 エルフは、長寿の種族のため、見た目と年齢が不釣り合いな事が一般なのだが、その見た目通りの年齢であった事は彼女の口から聞いた時驚いた。


「その年で親に甘えたり、我儘を言うのは普通だと思うが」


「カラス人の親離れは早いの。

5歳から情報収集について学ぶから……。」


 5歳といえば、向こうでは小学校に上がった時期。

 そんな子どもにそんな教育をして、大丈夫なのだろうか。精神的に幼すぎる子どもに武器の扱いや、情報収集などを学ばせても理解出来ない気がする。


「それで、父親に何を言ったんだ?」


「頭に撫でたり、抱っこしてって………」


 年頃の女の子の年齢になったせいか。

 気恥ずかしくしながら消えそうな声でそう言う。

普段のクールそうな雰囲気が可愛らしい女の子の反応をするとキュンと来る物がある。


「…………してもらえたのか?」


「………殴られた。『甘えるな』って、叱責された後に三日間、部屋に閉じ込められた。」


 それ、立派な虐待ではなかろうか。

 警察にでも、訴えれば動いてくれそうだが、こちらがあちらと同じとは限らない。こういうのが"一般"なら、何とも胸に来る物がある。


「………殴られた後、閉じ込められて………痛かったし、寒かった………それで、………部屋は、薄暗くて……一人ぼっち………。その日は、雷がよく……鳴ってたの……。

 誰もいない誰も聞いてない部屋でずっと……『ゴメンサイ』を







………………………………言ってたの……」


「もういい!!!」


 ピカッと再び雷が鳴った。もちろん【無音(サイレント)】を使っているため音は全くならないが、彼女の悲痛な心の底を聞いていたたまれなくなった。


「………ちょっと待ってろ」


 光を宿さなくなってしまったネアの瞳。自分が映っているとは、思うがネアの頭にぽんと、片手。置いた後雨宿りしている木から出る。


 せっかく乾いた服に着替えたが、また着替えれば済む話である。


「………解除」


 防音に使っていた魔法を解除する。

今から集中するためだ。魔力の巡りを体に這わせる。

――――注ぐポイントは、両手である。


「【漆黒の雷(ケラノス・メラ)】【暴風の嵐《ウーラガノ・シュトゥルム》】」


 上級魔法の上に存在する魔法。極限魔法といわれる分類は、この世界に存在者達の中でも極少数。一発撃つのがやっと、といわれるこの魔法を同時に二(・)つ(・)も発動させた者などこの数百年遡っても存在しない。


 左手に荒れ狂う風の渦。生身の人間が触れれば荒れ狂う風の刃に切り刻まれる嵐がネスクの左手に凝縮されて収まっている。

 逆の右手は、黒(・)い(・)雷が火花を散らす。いつもの雷に『聖の光』ではなく、『破壊の闇』を混ぜたため。黒く変色して威力が高まっている。


(目標補助を開始します。目標……空(・)辺り一帯の雲を座標に威力を相殺しうるポイントを模索…………完了。方角………東です。)


 正直、方角はどうでも良い。辺りの雨雲を吹き飛ばせれば、それでいいのだから。


「『合成魔法』【黒雷嵐(ブラック・テンペスタ)】」


 ソフィアの支持通りに東の方角に、両手を合わせた。二つの極限魔法が荒れ狂い合わさる。風の刃が渦巻く竜巻が黒く染まった雷を纏って空へと駆け上り辺り一帯の雨雲を吹き飛ばす。


 一瞬で雲が吹き飛び隠れていた晴れ間が差し込む。


* * * * *


「……………」


 ネアは、言葉を失っていた。

 エルフすら、扱う事が難しい『極限魔法』を目の前の少年は、容易く二つもやってのけた。

 それどころか、二つを一つに合わせた魔法に作り変えた。それは、物語で語られる星すらも砕く事が出来る魔法―――『星魔法』に相当する威力。

 魔法の匠も凄まじいが何より驚いた事がある。


「あ、……あの、それ……は………」

「おっと、やっちまったな……」


 少年の両手の包帯が解けている。前々から、何故包帯をずっと巻いているのか疑問であったが、その疑問は今日解決した。


「皆には内緒だぞ?秘密を教えてくれたから見せるが、まあ、こういう事だ。」


 そこには、人間の肌では無く、『人魚(マーメイド)族』のヒ(・)レ(・)のような、白い鱗があった。

 雲間に隠れていた太陽の光を浴びてキラキラと輝く鱗。


「こんなもん見せちまって悪いな。気持ち悪いだろ?」


 ネアが言葉を失って声が出ないためふるふると横に振る。


「これ見せたら、まーた心配かけちまうな。特にポーアとクーに………」


 しみじみとする少年。その様子から二人には逆らえないということがよく分かる。

 その二人は、いつも優しく世話してくれる人の内の二人だ。一年前に、種族諸とも人に狩られてしまったといわれる灼熱の狼(カプシモ・ウルフ)の少女と、身内の内乱によって、その立場を追われ追放されたとされるポーア様その人。


「晴れた事だし……帰るか?」


 その(晴れた)原因にした少年がそう言う。先程かなり深刻な話をしたというのに何とも軽い。


「あの、私の………話……」


「ああ言ったからしっかり聞いて記憶した。お前の傷の事もな………。人間誰しも思い出したくない物あるもんだ。俺もある。」


「ある、の……?」


 それは素直に驚いた。自分の嫌がらせ紛いの事をこれでもかと(自分でも)思うくらいしたのに、けろっとした目の前の人物がそう言ったからだ。


「話せるようなら、誰でも良いから相談すると良い。

 ここには、お前を想う奴ばかりだからな。ミレドでも、クーでも、ポーアでも、カレンさんでも良い。ルリや他の子らでも良い。言えば心の内が軽くなる事もあるからな。」


 例に挙げられた人物が全員脳裏を過る。

 皆明るくて気軽に話せる人物達である。


「トラウマは、記憶が消えない限り残る。人から受けた傷だからな。時間が解決する事もあるが、それを癒せるのも人だ。それだけは、忘れるなよ?」


 少年が何を言ってるのか分からないが、何となく。分かったような気がする。ルリやフルール、パルメルス。

 特に少年と接した自分と同じ痛みを受けた少女達は、最近以前より、雰囲気が明るくなった気がする。

 少女達も、この少年に傷を癒やして貰ったのだろう。

………多分


「へ、へっくち!」


「……………」


 変な間が広がった。顔が徐々に熱くなって来た。

 自分でも分かる。――――恥ずかしい。


 それもその筈だ。拭いたとはいえ、薄着の白いワンピースのような服のみ。濡れて冷えた体では当然である。


「ぷっ。わ、悪い!」

「っ―――!!」


 考えるよりも速い。乾いた羽を広げて左手を広げる。

パラパラと羽から落ちた羽根が少年の方を向いて空中で停止。


「ほ、本当悪かったって!!」

「地獄に〜〜〜〜落ちなさい!!!!」


 ネアがネスクに向けて翳した手を真っ直ぐ指した。

  羽根が一斉照射を開始した。


「うおっ!あぶなっ!!」

「待ちなさいよ!!!!」


 羽根の射出を受けながらネスクは、走り出す。

その先は、中心地――『家』である。以前は、嫌がらせで羽根を動かしていたが、前より心が軽い気がする。

 隠していた秘密を打ち明けた事で心が軽くなったのだろう。


 今は、とても楽しいと感じる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。