ネスクとネア その参
続き更新します。
ネアとの和解?停戦協定から何事もなく、
―――数週間が過ぎた。花が咲き乱れる季節から夏の香りを漂わせる空へと移り変わろうとしている。
大きな入道雲が羊の綿のような空。
これから一雨でも降るのであろうか。
(本日、午後から洪水量、増し増しです。
洗濯物の早めの回収をオススメします。)
天気予報に似たお知らせが届いた。
当然、そのアナウンサーは、『ソフィア』。
ソフィアとの繋がりは引き続き継続中である。と、……いうか、
以外に便利なためリンクを切りたくない。
最近は、停戦協定が成立して、落ち着いている。
まだネアは、警戒心を持っている様子であるが、以前のように日中狙われるような事が無くなったため穏やかな日々。
以前起こった『免罪事件』の件も自然と片付いていた。裏でネアが何かしらアクションを起こしたのだろう。
免罪事件というのは、数週間より更に前。ネスクが『書庫篭もり騒動』を起こす三日前まで遡る。
ネスクが珍しく、女性陣が風呂に入るより先に入った日。ふとしたきっかけで、壁に小さな穴が空いているのを発見した。
ネスク自身は、本当に小さい穴だったため風呂に入った時は、気にしていなかった。風呂から出た後、部屋に戻った際、後に入る女性陣の事をネスクは考えてしまったのだ。
小さな穴が空いていれば当然気にする。特に女性は。
覗きとか嫌だろうし、その穴から虫が中へ侵入してくるのも嫌。(自分もそれはちょっと……)
釘に、補修用の板、トンカチを持って穴が空いている風呂小屋に戻ったが最後。
―――叫びの声の後、ミレドによって、壁ごと吹き飛ばされた。顔面にクリーンヒット。
ネスクがその後―――、湖の中へ吹き飛び、水面から顔を出すと、ミレドとネアがいた。
どうやら、他の皆より先に浴場に入っていたようだ。
それからの展開は、………お察しの通り。その場の状況判断とネアの『覗き』という発言により、『覗き』という免罪が出来上がってしまったのだ。
正直、子どものから………ゴホンッ!
幼子には、(そういう目での)興味は欠片も無い。クーシェ達に言い訳。もとい、理由をちゃんと説明した。
クーシェやミレドは、分かってくれたのかな?と思うのだが、ポーアにはしっかり怒られた。その形相は、般若のようであった。…………怖かった(涙)
この時、反省点があるとすれば
―――明日の朝にでも、補修をすれば良かった。
こんな森奥に覗きに来る人もいないし、虫が入ってくる可能性はあったが、そこを瞑って直ぐにするべきではなかったと反省した。
鼻先にポツン。と水滴が落ちて来た。
「………やべっ、降ってきたな。」
降ってきたため森を急いで走り出すが本降りへと雨粒の大きさが変わった。走る体に髪と、雨がびっしょり。
距離がある為仕方なく家へと帰らず、近くの青葉が青々と繁った木の下へと入る。
「……こんな森の中で奇遇だな。ネアも雨宿り?」
「……口を開かないで。うるさい」
世界中の反抗期の娘を持つ父親の気分である。
大きな木の根元の反対側にネアがいた。空を見上げている。黒髪に水滴が含まれ水気を含む。雨で濡れた羽を広げて乾かしている。
また、俺の監視でもしていたのであろうか。
「言っておくけど、……あんたを監視してた訳じゃないから。」
「ならどうしてここにいるんだ?今日は、ルリ達と家の周辺の探検と聞いてたが……」
「……みんなとはぐれたの……。」
「空から探せば良かったんじゃないのか?」
「私、そこまで高く飛べないもの……。それに、木が邪魔で見えないし……」
「【探知】は使えないのか?」
「……悪かったわね。使えなくて……」
―――どうやらネアは、【探知】が使えないようだ。
わざわざ目で探さなくても。【探知】さえあれば、意外と何とかなる。空を飛んで探さなかったのかという質問も、上空から【探知】を使えば【長距離・探知】を使うまでもなく、広範囲を探せるという意図もあってのこと。
ネアがムスッと拗ねたように頬を膨らませる。
その表情は、年相応の幼い少女である。彼女の育った環境のせいか、他のルリやパルメルスやフルール達と違って大人びた雰囲気を持つ彼女のそんな表情は、初めてである。
「今日は、ツイてないわ。みんなとはぐれちゃうし、探してたら雨が降って来ちゃうし、……あんたと雨宿りするハメになるし。」
相変わらず、言葉がナイフのように鋭い。自分の心を抉っていく。
「悪かったな。俺で……」
びしょびしょになった服を脱いで魔法の袋から乾いた布と替えの服を取り出してそれに着替える。
「………ほら、そのままじゃ。風邪、引くぞ。」
着替え終わった後、乾いた布を取り出して手で持ってネアへと伸ばす。ネアとは木を挟んで、背中越しになっている。流石に着替えは、自分の物しか無いがタオルもとい、手ぬぐいは大量に入れてある。
このタオルは、蚕の魔物が生み出した糸を何度も魔法で織って、織って、織って………機織りの要領で縦横クロスを繰り返した布。―――吸引性がよく、肌触りも良い。
「ふん。人間のくせに、気が利くじゃない」
ネアが差し出した布を引ったくって手から強引にむしり取った。
「そりゃ、どうも……」
彼女なりの『感謝』なのだろう。言葉は、キツめであるが、その辺しっかりしている。人によっては、礼をしない人もいる。そう思うと彼女は、素直な方だろう。
デレがなく『ツンツン』で、トゲだらけであるが……。
(連絡送られなくて、よろしいのですか?大朏様)
(と、そうだった。ネアの事、探してそうだしな)
(そう思いまして、簡潔メッセージをミレド様に送っております)
実に気の利いた相棒である。
(サンキュ!)
ぱらぱらと雨が降って来る。
葉っぱに落ちた水滴が弾ける音。雨の日特有の水気を含んだ空気がやって来る。
人によっては、雨が嫌いという人も少なからずいるが、俺はそうでもない。水滴が弾ける音は、良いリズムを耳に届けてくれる。これを聞いていると、自然に瞼が重くなって心地よい。
「ねぇ、ちょっと!寝てないで手伝ってよ!」
眠りこけようとした所で邪魔が入る。
「なんだ?お腹でも冷やして痛いのか?なら、ポーアが作った丸薬をやろう。な〜に、味は苦いがよく効くぞ!」
「違うわよ!羽に手が届かないから手伝ってっているの!察しなさいよ!!」
「察しが悪くて悪うございました。
タオル、……貸せ」
渋々といった表情でネアがタオルを放り投げる。それをキャッチして羽を拭いてやる。しっとりと湿った羽。
濡れた羽では飛べるものも飛べないだろう。
「綺麗な羽だな。毎日手入れでもしてるのか?」
湿った羽をタオルでポンポンと、押さえるように拭く。漆黒の翼の羽。その羽には、ゴミや虫などは一切付いておらず、非常に素晴らしい綺麗な羽である。
「当たり前でしょ!黒い翼は、カラス人の誇りその物なのよ?」
ポーアやクーシェもよく、尻尾や蔓羽衣の手入れをしている所をよく見かける。それぞれの種族によって、誇れる物があるのは良いことだと思う。
「人に任せないと届かないなら……。普段は、どうやって手入れをしているんだ?」
「ルーちゃんやパルちゃんに手伝ってもらっているの。お互いの届かない所はしてもらうの。」
「ふーん。………一応聞くが、そういうのって……他人に触らせて大丈夫なのか?」
以前、クーシェから聞いた事がある。
尻尾や羽は、意外にデリケートだそうだ。ちょっとした事でも敏感に感じる者もいるそうで、家族や親しい人出ないと滅多には、触れさせないそうだ。
「ふんっ。勘違いしないでくれる?今、ここにあんたしかいないからやらせているだけ。普段なら、絶っっっ対触らせないから!」
「はいはい。一々、かっかするな。別にとって食ったりしないからさ。」
「分かっているならいいわ。今の内に堪能しておく事ね。感謝しなさい!」
「……可愛くない奴め」
「何か言った?」
「いいえ〜、何でもないよー!」
憎たらしく上から言うネアだが、どうも憎めない部分もある。内に秘める思いに少し触れたから分かるが、彼女は心を許した相手なら、とても優しいと言うこと。
仲間思いで、仲間のこととなれば自分が傷付くことも厭わない。
――――少し危なっかしい。そして、自分と似ている気がどことなくある。
一旦切ります。続きは、その肆に書く予定です。




