実戦訓練報告書より。
更新します。
報告書
本日実戦訓練は無事終了
軽傷者は、多数出た物の彼らの中の、『回復魔法士』の活躍により0名。
彼らの実力は、我らの力を大いに凌駕している。
―――と、報告します。
危険度『B』以上の魔物多数と遭遇。これを何の障害もなく、撃破、もしくは、討伐。―――各部隊の報告により、一部のパーティーは危険度。推定『A』のワイバーン、サンダーバード、大蛇を討伐。
これは、紛れもない我らの希望。魔王を打倒し得る者達であると今回、参加した部下の者達から歓声の声有り。
危険度『S』以上の魔物。――――キメラ、大蜘蛛、レオパード、ヒュドラー、ベヒーモス等の大型魔物とは、遭遇せず。
近日、危険度の高い魔物の出現率の低下により聖龍・ミレドグラル様の住まいである『中心地』への進行可能と予想出来る。
報告・提案。
我らのみの力では、『人』としての限度が見られる。人の域を超えた異界の者達への指南は、日が経つ毎に難を極めつつある。よって、聖龍様に直々の指南を、『我が国の意思』として頂けるよう推進する。
個人の意見としては、魔物の討伐は、やすやすとなりつつある彼らであるが、相手は、千年前。我ら人類ならびにその他の種を滅ぼしかけた相手、魔王。
千年前の魔王が死した今、再び、蘇ったとは思えない物の、その力は、計り知れない物有り。
―――――以上。
実戦訓練より、報告を終了。
近衛騎士団副長 キャンメル・アールへイド
* * * * *
「ふーむ、これ程まで成長が著しいとは、考えもしませんでしたな。まさか、数日で既に、『A』の魔物を狩ることが可能とは……な。」
「ええ、私も、……驚きました。―――異界からの召喚者。
彼らの力、成長がこれ程突飛しているとは……。報告を知らされた時、飲んでいた紅茶を吹きそうになりましたよ。」
「ほっほっほ、ぬしがよく言うよ。―――『閃光の獅子』光の申し子。
陛下より直々に下賜された世界でも一、ニを争う我ら『ヤグラシア王国の牙』にして、近衛騎士団団長殿。」
紅茶を口に含んだ後、窓際に設置された書斎机に腰掛けた青年に話し掛けるエルメス。白髪へと変わりつつあるエルメスとは反対に黄金に輝く髪に、翡翠のように澄んで美しい青いの瞳を宿すその青年は、年は、三十前後の若き獅子。
――――ヤグラシア王国団長。
アルゲルト・フェータル・レオルギートその人。
「それで、どうするのか?団長殿」
「やめて下さいよ!エルメス様!執務室とはいえ、今は、"私達二人だけ"。いつも通り、名前で呼んで下さい。」
「ほっほっほ、すまんすまん!おぬしを見てると、つい。真面目で堅物。だが、その心は、軟。落ち込む事があれば、直ぐ凹む。」
「エルメス様!!こっちは、真面目な話をしているのです!」
執務中の顔に一切表情を出さない冷たい仮面を被ったアルゲルトからは想像出来ないくらいに表に表情が出ているため、年甲斐もなくアルゲルトをエルメスは弄る。
―――術のエルメス、武のアルゲルト。
二人の名は、そう揶揄されるくらいこの国では有名である。
「さて、本題に戻ろう。……そうじゃのう、前衛戦闘系、支援系を"中心"へと送り、遠距離攻撃系、または精神攻撃系をこちらで育むのは、いかがか?」
「それはよろしいのですが………何故、遠距離攻撃系を残すのでしょうか?ミレドグラル様に全員預けてもよろしいと思いますが……」
「魔法については、儂でも行える。一々、聖龍様の手を煩わせるわけにもいかんからな。」
「なるほど………建前は、その辺にして本音を……」
考え込んだ表情をしたアルゲルトが急に目つきが鋭く尖った。獅子を思わせる威風堂々とした、雰囲気を醸し出す。
「さすが……本音は、『牽制』だ。」
「牽制………他国か……」
「おお、さすが。耳が速い。大国2国に動きがあるとの事。」
「大国………帝国と聖国か」
『大国』と呼ばれる国は四つ。ここ、王国を除けば、帝国・聖国・そして、獣人達の連合国。帝国と密接する北は、既に最大警戒を行っている。聖国が動くというのは、予想外である。何か、裏がある気がしてならないが。
「聖国が対戦を仕掛けるとは、思えないが。………念の為だな。」
「………なるほど」
前衛職を聖域に送ってミレドグラル様に力を付けて貰いつつ、聖域との線を越えて来た際の時間稼ぎといった感じなのだろう。支援職も、攻撃職の援護。
支援職は、ミレドグラル様でなければ、育てる事が難しいといった側面もあるため一石二鳥。いや、一石何鳥も。なのだろう。
「了解しました。エルメス様、この話は、その方向で進めておきます。」
「うむ、任せたからな。………茶が旨いのう」
エルメスに吊られてアルゲルトも紅茶を飲む。こんな、穏やかな日々がいつまでも続いてくれば、良いのにと心の奥底で思ってしまう。
―――戦争なんてものは、しないに越したことないのだから。




