富樫パーティー
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き……ま………すか…………ん……………さん………ななく……さん
――――七草さん!!!
誰かの声で沈んでいた意識が呼び戻される。
聞き馴染みの無い女性の声だ。
「うっ。………頭が……」
目覚めた途端、酷い鈍痛が頭を駆け巡る。仰向けに寝転がった体勢である事は、理解できる。既に夕暮れ時に差し掛かっている。
「良かった!意識が戻って……!」
白いローブに杖。それは、真理亜と同じ《回復魔法士》を意味する装備。
ショートの黒髪に優しげな目元をしている女性。
―――真理亜では無い別のミディウス。
「あなたは……」
「隣のクラスの『愛川 梓』です。あ、富樫君。七草さん意識戻ったよ!!」
「おおっ!良かった!
七草、お前だけでも意識が戻ってくれて!!」
愛川が自分を挟んだ向かいにいる人物に話し掛ける。振り返ると体躯の大きな男性がいた。全身武装の重装備に大きな盾を持っている。確か、柔道部の富樫 鉄平。
この人も、愛川さんと同じく私達の隣のクラス。
私達(三人)が2-cで隣の2-bである。
「それで……なんだが。意識が戻ったばかりで悪いんだが、お前ら、意識を失う前、何と戦ってたのか説明してくれないか?」
富樫が申し訳なさそうな表情をする。額に巻かれた包帯からして、この人達が助けてくれたのであろう。
恵は意識を失くす前の記憶を手繰り寄せる。
「えっ、と………魔物を……私達のパーティー。孝希君、好太郎君、真理亜ちゃんに小夜ちゃん、……そして私の五人で狩っていたら……空からワイバーンが………」
「ワイバーン、だと……!?」
富樫が驚きの余り、声を荒げる。
「ええ……私達のパーティーでなんとか、倒せたのたけど、……油断した隙に吐息をくらってしまって……そうだ、小夜ちゃん達は?」
「全員無事ですよ。皆さん気を失っていますが、それほど大きな怪我もなく良かったです。」
愛川が恵にそう告げた。その報告に恵は心の底から安心を覚える。―――全員無事。
だけど、何故。本当に油断した。あんな高火力の一撃を受ければ、無事である筈が無いのだけど。
「お前ら、ワイバーンの吐息をくらって、よく無事だったな。俺でも流石にワイバーンの吐息を近距離から受けて無事でいられる自身はねえぞ。お前らの中に、《鉄壁》でもいたのか?」
その問い掛けに恵は、首を傾げる。
「私達の中に《鉄壁》はいませんよ?」
「なら、『防御魔法』を使える奴か、精霊の加護を行使出来る奴とか」
「《魔法士》はいませんが、《精霊使い》なら、好太郎君が……」
「好太郎………ああ、鷹野か。あいつ、すげぇな。
ブレスを相殺させたのか。よほど、精霊に愛されてるだな。」
「えっ?」
あの時、好太郎は孝希を地面で受け止める事で精一杯の上、疲労困憊でそれどころではなかった。
「あの、一つよろしいですか?」
「ん?なんだ?」
「なんで、そう思ったのですか?」
「なんでも何も。あの跡見りゃ誰だってそう思うだろ」
「跡?」
「七草さん。ほら、あれです。」
愛川に補助されながら、体を起こす。それほど痛くは無いが、彼女の優しさに今は甘えておこう。
「えっ??」
起き上がった先の光景に恵は驚愕してを
焼け焦げた跡。それは、吐息の物であるのは理解できる。だが、その跡も、途中から綺麗に左右へと流れた跡となっている。精霊が防いだのであろうか。
精霊なら、人間五人を守る事は容易い筈だ。なのしろ、自然が姿を変え、『具現化』したといわれる存在なのだから。
「あっ!隊長!今戻りやした。この辺一帯の魔物駆除。完了!!」
「滝川……。その呼び方やめろ。」
「ええ……いいじゃないか!今は、《隊長》。俺達、パーティーの隊長なんだから!」
近くの茂みから人影。一人は、軽装備に二つの剣を腰に下げた《双剣士》。もう一人は、ローブに杖。装備は、《回復魔法士》と似ているが、恐らく《魔法士》だろう。片手に持つ大きな本。―――魔法書。
《魔法士》が持つ装備品の特徴である。
「ツンツン頭の方が『滝川 虎之助です。眼鏡の彼女の方が『氷川 涙』さんです。私達のパーティーメンバーなので安心してください。」
愛川が恵に二人について教えた後、柔らかい笑顔を向ける。
「お!七草!良かったぜ!意識が戻って!!
で、やっぱりあれ。ワイバーンか!すげぇなお前ら!!」
「………滝川君、落ち着いて下さい。彼女、怪我人ですよ。」
「いいじゃねぇか氷川!ああいうワイバーンを狩るとか。男としては、憧れなんだよ」
「―――いい加減にしなさい。虎。」
「おまっ、その呼び方すんじゃねぇ!!」
がるると氷川と滝川がにらみ合う。二人の相性は、火と水。もしくは、『虎と竜』なのだろう、文字通り。
「あの、良いのですか?止めなくて………」
「良いんです。いつもの事なので……」
言い合いを始めた二人を、恵が愛川に止めないのかと聞くが、彼女はにっこりしたままである。
「それに、―――そろそろ『雷』が落ちますから」
愛川の言う通り直ぐに雷が落ちた。
「お・ま・え・ら。静かにしろー!!!」
大声で叫びあっていた二人に富樫の鉄槌が落ちた。
「いっっってえ!!何すんだよ、隊長!!」
「何で、私まで……」
「―――両成敗だ。
ここはまだ、森のど真ん中。
お前らがここらの魔物どもを狩ってこようが関係ない。
………奴らは、動くのだからな。植物系はともかく、動物系は予測不可。またいつ出てくるか誰もわからん。
今は、怪我人が多い。
こんな状況で今さっき、お前らが怒鳴りあってみろ。
魔物どもがすっ飛んで来るぞ。」
「………すまん。頭に血が上ってた。」
「………ごめんなさい。気を付けます。」
二人もゲンコツで頭が冷えて冷静になったらしく、しゅんとしている。
「分かればいい。先に森を出るぞ。事情聴取は後だ、後!滝川、斥候任せた。俺は、男二人運ぶ。」
「―――!!。分かった、リーダー!!」
「氷川と愛川は、その女の子二人を頼む。すまんが、七草は……」
「私は、大丈夫です。一人でも歩けます。」
近くに転がっている自分の槍を杖代わりにして立ち上がる。足取りもしっかりして、支えなく歩ける。
「なら、急ぐぞ。まあ、ここは、森の外に比較的近い歩けばすぐだ。日の入り前には抜けられるさ。」
富樫が気を失っている孝希と好太郎を軽々と持ち上げる。流石は、柔道部だけあって、大きな盾を片手で背負ったまま、背中に孝希。前に好太郎を抱えている。
孝希は、おんぶして常備しているのだろう紐で落とさないに固定しているのだが、好太郎は
………何故かお姫様抱っこされている。
いつもは、する側に回ろうとする(一度も成功した事ないが)のが、逆にされる側に回ると、中々シュールである。それも、男に………。
「七草さん!!行きますよ!!」
愛川に呼ばれて歩き出す。謎は、残るが、今は後だ。
夕陽が沈めば、それこそ、魔物達の領域になってしまうのだから。急いでその場を後にする。
縦に両断されたワイバーンをその場に残す。その斬り方は、まるでレーザーにでも切り裂かれたかのようにスパッと斬られている。




