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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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とある畑仕事での会話

更新します。今回は、場所を変えて、その頃のネスクの話です。


 がっ がっ がっ!!


 クワを大きく振りかぶって、畑を耕す。

 冬の間。全く使っていなかった事もあり、雑草も沢山生え、何より、―――地面が固い。

 昨年は、米茸(マイタケ)に少なくない畑の養分を与えたため、半年間寝かせていた。当然といえば、当然である。 

 ―――無機質、有機質。

 ありとあらゆる物に『魔素』は混ざっている。

そして、こちらの世界の土にも、『魔素』が含まれている。魔素は全ての物に含まれている。

 魔素が植物を育てる養分へと変換される。

 正に不思議原子である。


『………マスター。左後方から[影]、正面・左後方から[羽]です。』


「はあ、………またか。了解。」



 クワを魔力で梱包する。特に持ち手部分に念入りに……。

こうする事で、以前のように道具を壊さずに扱える。


 こんな感じに……魔力を込めたクワを地面に叩き付ける。


「よっ!!」


 


        どんっ!!!


 思いっきり地面を叩きつけた事で、普通の人では苦労する固い地面が飛び上がる。

 飛び上がった土が飛んで来る羽を弾く。


『[影]のスキャン完了しました。いつでも発(・)動(・)可能です。』


(サンキューソフィ♪)


 黒い影が伸びる。土壁も"影"には物理的攻撃が効かないため関係ない。せり上がった土の壁(バリア)を潜り抜けると、ネスクを取り囲み、鋭く尖ってネスクへと迫る。

 ネスクは、振り下ろしたクワで攻撃する訳では無く静かに目を閉じる。


「………【無効の眼(キャンセリング・アイ)】」


 ネスクが静かにそう告げた。黒い瞳が開かれると、光る眼球が全てを見据えた。


 見開いたその一瞬。

…………音が消え、ネスクの見ている景色の色が消えた。






 ドバっ!!と土が落ちて終わる。砂煙が舞うが、それ以外は何も無い。完全な静かな空気だけがその場を包む。

 迫っていた影も消え去っている。


「よし、続けるか!」


 ほ(・)ん(・)の(・)少(・)し(・)の力で高さ2メートルもある壁を作り出した。それを何事もなかったようにネスクが再開する。それもそうだろう。

 もう何回になるかわからない奇襲である。

  そう何回も襲われていれば、慣れるという物。


『攻撃の奇襲なし。大丈夫ですよ、マスター』


(そりゃ良かった。)


 遠距離からの操作なのだろうけど、攻めて来ないのであれば良い。こちらも、ソフィアとコンビネーションの良い特訓になるし、あの少女の訓練にもなるのだから。



『あ!ネス〜!』『いた〜!!』


 頭上から声が降ってきた。

 声の元は、小さな小さな女の子二人。ネモとペーレである。


「お前ら、どうかしたのか?いきなり……何かあったか?」


 いつもはハニワ部隊に付いていて、隊長として指示している二人が珍しくここにいるのは、何かあったのだろう。


『んーん。何も〜』 『特にないよ〜』



「お前ら………仕事し、ろっ!」


 指で小さなおでこにデコピンしようとするも、避けられた挙げ句、おでこを二人が押さえて警戒している。まるで、毛を逆立てる猫である。

――――今まで何度かデコピンしたせいか、そういう所が鋭くなってしまった。


『してるよ〜もう!ねぇ〜♪』『ねぇ〜☆』


「…………」


 顔を見合わせて呑気に言う二人に静かに攻撃(指鉄砲)を放とうかとネスクは、思ってしまった。


『けど〜、気になる〜お知らせがあるの〜』


『そうそう〜♪』





『『人間がいっぱい〜森に来てるの〜』』


「やっぱり何かあったんじゃないか!」


『別に人間が森に入るのは〜良いの〜』


「良いのかよ………」『『良いの、良いの〜♪』』


 合いの手を打つ二人。とても緩い。本当に気にしてないようだ。精霊は、『自然』の一部であり、守り人でもある。

 森を荒らす者には容赦しない傾向が多い。それ以前に、二人の話からして他の精霊。特に『上級精霊』は、人間を好いてはいないようだ。

 場所によっては、人が立ち入ろうとすると、自然現象を起こして追い払ってしまう。二人は、そうでも無いようだが。


「二人が気にしてないようだから良いが……で。

それが知らせか?」


『ん〜ん、違う〜』『ワイバーンが出たの〜』


 さらっと、とんでもない事を言った。


「……本物か?」


 ワイバーンは、危険度『C』にあたる魔物。

場合によっては、『B』以上にもなり得る危険な魔物である。只の人間では手に余る魔物が森の中に現れ、もしも、人と遭遇でもしたとあっては、只事ではない。


『本物、本物〜』『10の9は、狩ったよ〜』


「………残りの一匹は?」


『逃した〜』


…………………………………………………。


 しばらくの間、ネスクの頭が停止した。


「ダメじゃねぇかー!!!」


『だ〜いじょ〜ぶ!』

『一人。追っかけさせてるから〜。て、言っても…人がもう狩っちゃたんだよね〜。爪が甘いけど〜』


 背中がゾクリとした。

 一瞬、ほんの一瞬だけ。いつものペーレの表情が恐くなった気がした。気のせいだろうか。


 まあ、いいや。それよりも……


「大丈夫なのか?その、人間……。」


 ワイバーンを相手したという事は、パーティーなのだろうけど、手足の一、二本………。


 考えるだけで恐ろしい。


『ん〜、大丈夫じゃな〜い?黒髪だし〜』

『例の転移者だよ〜。多分〜。』


「適当だな。お前ら………まぁ、良い。転移者か……。」


 遂に行動を始めたという事だ。森に来たということは、聖域の中心地(ここ)にもその内、来る。以前のソフィアの助言が実現しようとしている。


「正直俺もどうでもいいけど、何だろうな。

この、………胸(・)騒(・)ぎ(・)………」


『『???』』


 二人が首を傾げている。本当に仲良いなこの二人。

動作も発言口調も。顔は似ていないがまるで双子みたいである。




「お前らって、双子なのか?」


『ん〜?ある意味、双子〜?』

『同じくらいに〜生まれて〜同じくらいに〜"上級精霊"に格が上がったの〜』


「それ、双子じゃ……」


『精霊は、複雑なんだよ〜』『そうそう〜』


 複雑なら聞かないでおこう。面倒事は御免だ。

 クワを振り上げて下ろす。そろそろ再開しないと日が暮れてしまう。今日中にこの広すぎる畑を耕さないと行けないのだから。………頑張ろう。

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