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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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木漏れ日日和の初実戦 結末

明けましておめでとうございます。

今年で(書き始めてから)二年目の正月を越しました。

まだまだ終わらす予定は、ありませんが、

今年もよろしくお願いします(_ _)


「こっちだ!羽トカゲ!!!よっと!」


 【火球の球(ファイアーボール)】をワイバーン目掛けて投げる。ボールはワイバーンの体に触れた瞬間に爆発を起こして、破裂する。もちろん、ワイバーンは無傷であるが、気をこちらに向けるのには最適である。


 ギロリッ(睨)


 鬱陶しそうにしているワイバーンがお返しに火球を吐き出す。


「よっ。あぶなっ!!」


 孝希がぎりぎりで後方へ退いた。その足元で飛んで来た火球が破裂した。破裂した箇所の地面が抉れ、焼け焦げた地面から黒い煙が上がる。


「『爽やかな君(フレッシュレディー) 力を貸しておくれ』」


 孝希が後方へ2ステップ下がったタイミングで好太郎が

持っている短剣2本を投げる。孝希を避けて飛んでいく短剣が一直線に飛んでいく。


 火球を吐いて、短剣諸とも燃やし尽くそうとするが、短剣が空中で不自然に回転をする。

 切り裂かれた火球が小さく爆発する。短剣の勢いはそのまま衰えず、回転していた短剣が刃先をワイバーンに向けて飛んでいく。短剣には、精霊による『風の魔法』が掛けられている。


「孝希、合わせる!!さっきのをやれ!!」

「おう!」


 ワイバーンが短剣が当たる寸前に飛び上がった。

 好太郎が右の指をくいっと、上へ振り上げると、その指示通りに飛んでいる短剣が垂直に飛ぶ。


 追尾する短剣と高速で動くワイバーンが上空で絡まり合う。


「行くぞっ!!」


 好太郎が中指と人差し指で複雑な指示を飛ばす。まるで指揮者のように振る好太郎の周りをふわっ、と風がなびく。


 同じ方向に飛んでいた短剣が別々の方向からワイバーンを追い駆ける。火球を口から吐き出すが風を纏った短剣には無意味である。


 ぐいっと、もっと高い上空へ登った太陽に照らされて上手く直視出来ない。

 ぐぐぐぐぐぐっ、と何かの呼吸するような音がする。



――――不気味な音が止まる。


 太陽がキラッと光る。空から炎が降って来る。


「おいおいおい!!マジかっ!!」


 好太郎が焦る。それも、その筈だ。

 魔物の竜種が使う吐息(ブレス)を使ってきたからだ。


「くぅ!!」


 指揮していた両手を合わせる。

 吐息(ブレス)の攻撃とぶつかり合う盾のようにクルクル上空で回転する。


「うおおおおお!!!!」


 『風の盾』となった短剣が吐息(ブレス)を完全に防ぎ切った。だが、それと同時に短剣2本は、攻撃としての効力を失った。


「あとは、……任せたぜっ。孝(・)希(・)」


 攻撃の威力までは削ぎきれなかったため、吐息(ブレス)が短剣と共に爆発を起こした。






 爆発の煙でワイバーンの視界が奪われた状況で好太郎が今度は、下(・)へと指を振り下ろした。


「俺に―――――任せろや!!」



!!!!!!!!?


 ワイバーンが状況が分からず、混乱している。それもその筈だ。――――下へ、落ちているのだから。

 

 ワイバーンは、排除の優先対象を上空へと上がった時点で攻撃してくる対象を好太郎へと移していた。吐息(ブレス)を使ったのも、好太郎を排除する手段に選んだからであり、他はそれほどの脅威ではないと、火球の球(ファイアーボール)を浴びて既に決めていた。


 だが、それは誤算であり、過ちである。


「落ちろ!トカゲ!!」


 ワイバーンの背後に、高(・)貴(・)がいる。それは、2本の短剣を操りながら、こっそりと好太郎が彼を上空へと打ち上げたからだ。

  そして、彼が持つ剣は、炎を纏った剣になっている。【炎剣(ソード・フレア)】は、火力を3段階に分ける事が出来る魔法。【火花(リトルフラワー)】【業火(ファイアー)】【煉獄(フェーゲ)】と呼ばれる段階に分けるこの魔法を高貴は、まだ【火花(リトルフラワー)】までしかコントロール出来ない。

―――だが、コントロールは出来ないが、発動は可能。という段階が【業火《ファイアー》】。


 胴体や他の部位の鱗は斬れない。しかし、最も体の部位の中で防御が薄い翼膜を無理矢理引き出した【業火《ファイアー》】クラスで引き裂いたのだ。


 上空から竜から只のトカゲになったワイバーンが降って来る。かなりの高さから落ちているため、無傷とは行かずとも、かなりのダメージは、与えられる筈だ。


「出番だ!真理亜ちゃん!!!」



*****


 上空の黒煙の中から二つの影が地面を目指して落ちてくる。いつの間にかいなくなった孝希。息を切らして座り込む好太郎。

 それで何となく想像が付く。二つの影の内、一つは孝希の物だろう。そして、もう一つが先程、地上にいたワイバーン。シルエットから判断出来る。


「『我 光の柱 天を駆ける 矢


  源は 大地を照らす太陽 灼熱の炎を宿す鳥


   真を知る光なり


―――明朝を照らす陽の如く 闇を"貫け"』」



 一際輝く聖なる"光"が真理亜の体から溢れる。


「行けます!!」


 集中するために閉じていた真理亜の目が恵へと向けられる。茶色の瞳が七色に輝いている。

 魔法の影響なのかは分からないが、自身に満ちたその眼がいつでも発動させる事が出来る事を告げている。


「孝希は、はあ……はあ………任………せろ」


 好太郎が息を切らしてそう言う。額から大粒の汗を拭くと、両手を上空の孝希に向けられる。


「『愛しき子達(マイレディー達)、もう一度だけ。

その力を貸しておくれ……、俺の、友を……助けるために……』」


 好太郎がそう呟く。すると、再び優しい風が好太郎の周りに展開される。


『――――もちろん! いつでも使ってね♪』


 聞こえない筈の、精霊の声が他の二人にも聞こえた。

 それは、精霊の気まぐれなのかもしれないが、子どもっぽさを含んだその声が風に紛れて聞こえた。


「よっ!!」


 好太郎の両手の指揮で風のクッションが展開される。

 どんどんと、孝希の体の落下速度が緩和され、空中で停止した。その代わりに、ワイバーンのみが落ちて来る。


「マリアちゃん!お願い!!」


 それを見届けてから恵が真理亜へと施す。


「狙いを、ワイバーンに固定します。


…………発動します。『浄化の槍(パージング・ランス)』!!!!」




 魔法呼称名を真理亜が発した瞬間狙い(ワイバーン)に向けて光が伸び、刺し貫いた。孝希の【火球の球(ファイアーボール)】では、傷一つ付けられなかったワイバーンの胴体の鱗を太陽の熱に近い温度の

――――『光の槍』が、まるで裁縫針で布生地を縫う時のように容易く貫いて行った。


 胴体を貫かれたワイバーンの体が地面へと落下。灼熱の槍に貫かれた胴体は、まるまる抉れ、完全に焼かれている。


「はあ、………はあ……はあ―――――疲れた」

「紐無しバンジーは、………もう、これっきりにしたい………うぷっ。」


 再び地に足を着けた孝希が青い顔で吐きそうにしている。その横では大の字になって好太郎が倒れる。


「マリアちゃん!凄いよ!!今の!初めて使ったのでしょ?」


「あ、ありがとうございます。……実は、エルメスさんから教えて頂いた攻撃魔法なんです。何でも、昔の勇者の一人が使っていた『聖魔法』みたいで……。」


 真理亜が発動させた魔法に感動する恵が真理亜に飛び付き抱き締める。


「適性は、始めからあると、仰っていたのですが、何物あの威力ですので、……中々、軽々と扱えませんでしたので、今までは、話せなかったのです。エルメスさんからも口止めされていましたから。」


「そうなんだ。けど、良かった!皆、無事で………」


 男二人は、疲弊仕切って倒れている。そこで、恵と真理亜は、はっとする。


「「小夜ちゃん!!!」」


 空から急襲され、咄嗟に真理亜を押し倒して自分だけで反撃、そして、派手に尻尾の打撃を受けて吹き飛ばされてしまった小夜を思い出す。


 木に背を預けた体勢の小夜へと駆け寄る。

 打撃の際に頭を強く打ったせいか、頭部から血が出ている。


「『癒やしの光よ 我が手に集いて 癒し給え』


【治癒の光(フォトン・ヒーリング)】」


 癒しの光が小夜へと掛けられる。瞬時に血が止まり、傷口が塞がり、元通りへと復元される。

 【治癒(ヒール)】の一つ上の、『中級魔法』にあたる【治癒の光(フォトン・ヒーリング)】は、真理亜が今使える魔法で最上位にあたる。中級魔法の上には、上級魔法、その上には、今は使える人が限られる極(きわみ)魔法と呼ばれる魔法があるらしい。


「孝希先輩、好太郎先輩にも今、魔法を掛けますから、少々お待ち下さい。」


「………おう、ありがとうマリアちゃん」

「天使様〜!」


 好太郎だけ疲れ過ぎて訳の分からない事を言っているが、取り敢えずは、全員無事である。

 小夜の事は、まだ少々心配ではあるが、命には、別状無くて良かったと思う。


 胸を撫で下ろし倒したワイバーンへと視線を送る。


「………!危ない!!」


 二人の背後でワイバーンが首だけを持ち上げて、口を開いている。――――吐息(ブレス)である。

 それは、魔物の最後の一撃。魔物は、最後の命尽きるその時まで、敵に背を向けず、攻撃を与える。

 それは、同種を思ってのことか。または、最後の悪あがきか、はたまた本能による物かは分からない。

 だが、副団長が今回の実戦で最後まで油断しないようにと言っていた理由は、そこにある。


 瀕死の魔物が一番何をするか分からないのだ。


(間に合わない!!)


 四人を守りきれるだけの(魔法を発動させる)時間がない。目の前には、広範囲・高威力の吐息(ブレス)がすぐそこまで迫っている。


(せめて、マリアちゃんだけでも……!!)


 近くにいたマリアに覆い被さる。

 ワイバーンを倒しただけで、喜んだ自分をこれ程恨んだ事は、無い。


―――引き分け、いや。完全に自分達の敗北だ。


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