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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
223/347

木漏れ日日和の初実戦 始まり

更新します。


「ここから先は、魔物達、モンスターの領域だ。各自気を決して抜くことはしないように!

――――『魔物に手心を加えることなかれ』。

 諸君ら。勇者にはその事を肝に命じて今日の実践を己の力へ変えて頂きたい!!!」


 騎士団の副団長のありがた〜い演説を聞き終えて、各チームが徐々に森の中へと入っていく。


「小夜ちゃん本当に良かったの?今日はもう休んでも良かったと思うけど……」


 恵の優しい心配性が小夜へと注がれる。

そんな小夜は、「大丈夫!大丈夫!ほら、この通り!!」と言って力こぶを作ろうと右腕にぎゅっと力を入れるがその元気さアピールも服に隠れて見えない。


「何かあったら直ぐに言ってね!私、こう見えて『回復魔法使い』なんだからね!」


 大きな杖に長い白のローブを身に纏った真理亜が小夜に言う。見た目からして『回復魔法使い』である。


「分かってるって!

何かあったらちゃんと言うから、……ね!

―――さあ、レッツゴー!!」


 いつになく元気な小夜。それもその筈、初の『冒険』なのだ。小夜の中では新しい事にワクワクが止まらなくなっている。

  その上、午前中の休みもあり、

元気が100%どころか200%まで引き上げられていた。


「今日はあくまで『実践』だ。騎士の人達にも、危ない"奥"へは行かないよう言われてるから。浅い所で直ぐに引き返すから」


「森は、視界が悪いからね〜。慎重に、だ〜よ♪

さ〜よちゃん♪」


 剣を携えた孝希に、短剣を持つチャラい好太郎。そして、背丈よりも大きい槍を持つ恵。それぞれ、戦闘スタイルにあった装備を付けている。当の自分も、長刃(ロングソード)を持っている。


「ほら!皆早く!置いてちゃうよ!」


 ルンルンとスキップしそうな勢いの小夜が森の中へと入っていく。その後を他の四人が付いて行く。

 日差しが木漏れ日となって、木の合間から差し込む。

ぽかぽかな正午過ぎ。森に日光浴へと赴くような気分でいる小夜の前にそれを邪魔するヤツがいる。


 蹄を地面に叩き付けて今にも突進してきそうなイノシシ型の魔物。―――『ワイルドボア』である。

 魔物の中でも比較的低級であるその魔物は、初心者冒険者が初めて遭遇する魔物でもある。


 グルブギィィ!!!


 一声雄叫びを上げて小夜へと一直線である。


「おっと!へえ、これが魔物…。普通のイノシシの何が違うのかな?」


 純粋に疑問が浮かぶ。

 副団長が言ったように決して、侮ってはいない。

ワイルドボアが小夜の避けた後方にある木に向かって衝突した。木が根元から折れた。


「へぇ、なるほど。地の強さから違うのか………」


「何してるのさよちゃん!危ないよ!!」


「『我が手元に集いで 燃えさかれ!』」


 恵が怒る横で教義で習った魔法の呪文を孝希が唱える。孝希の手の中が熱く、そして燃え盛る炎が現れる。


「【火球の球(ファイアーボール)】!!!」


 炎を孝希がワイルドボアへと投げた。炎が野球のボールのように小さく圧縮し、その炎の球がワイルドボアにぶつかると弾けた。


 ワイルドボアが一瞬で黒焦げの炭と化した。

 転移者は、皆。魔法の強さがこちらで過ごす並みの人より強い。それは、下級魔法の【火球の球(ファイアーボール)】がこちらの人間でいう、『中級魔法』並みの強さになってしまう程である。


「こーら!」

「あいた!」


 小夜の頭に、孝希がゲンコツを落とす。


「魔物を舐め過ぎだ!今の魔物が最初から『特殊能力』を使ってこなかったから良かったけど、場合によっては、大怪我だったんだぞ!!

―――習った事、忘れたのか!!」


 魔物は、置かれた環境によっては、『特殊能力』と呼ばれる力を使うらしい。例えば、サル型の魔物が炎や水の魔法を使ったり、オオカミ型の魔物が雷の魔法を使ったり、鳥型の魔物が特殊な音波を発したり、と"必ず"何かしらの優れた能力を有している。


「小夜ちゃん、危ない行動はやめてくれ。さっきも、冷や汗が止まらなかったんだ……。」


 いつもは、手を上げることなんて決してしない孝希。そして、心配している恵と真理亜の顔が目に入る。


「そうだよ〜さよちゃん。新しい所に来て浮かれるのは分かるけど〜それでケガしたらどうしようもないよ」


 さっきまで飄々としていた好太郎の雰囲気が変わった。真剣な目。これは、真面目に怒っている。


「………ごめんなさい」


 深々と頭を下げる。

 確かにさっきのは、軽率過ぎた。何も起こらずに済んだのは良かったが起こってからでは遅い。さっきの軽率な行動は、自らの命を沼の中に投げ捨てるような行いであった。


「分かってくれたなら、いいんだ。………顔上げて。

 俺も急にゲンコツを落として悪かったな。ちょっとキツくし過ぎた。ごめんな。」


「………さよ。私は、ケガなら治す事が出来る。」

「………うん。」


 今まで黙っていた真理亜が口を開く。

「でも"失くした物"までは、治す事が出来ないの……」


「マリア………ごめん。」


――マリアの魔法は、傷を治す事は可能。

 だけど、失った物、―――命、欠陥した手足などは治す事が出来ないと本人が言っていた。

 ここ数日、たまに真理亜がいなくなる事がたまにあった。本人が言うには、『回復魔法使い』として、どこまでが自分で思うように可能なのかを試しているそうだ。


「分かったなら、いいよサヨ。……そろそろ、進もう!

まだ、始まったばかり、失敗は誰でもする物だから。失敗を自覚できているのなら、"大丈夫"でしょ?」


「マリア……。ありがとう」


「さあ、進もう!皆の連携も確認したいから、ね!」


  恵が元気いっぱいに小夜を引っ張る。

 誰かの失敗を指摘し、それを自覚して全員がカバーし合う。―――それこそが仲間であり、パーティーだ。

 先走った自分を叱ってくれて何故かありがたい気持ちになってしまった。


「………みんな、……ありがとう」

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