魔力の流れ
更新します。
魔法で生み出した『泥人形』を数十体、魔力の糸で操り人形をしながら、二人の相手をする。
俺自身の力が変異したことで手加減をしても強過ぎるというのもあるが、二人の戦い方を見ながらアドバイスができるメリットがある為、である。
………決して、幼子を痛めつける性癖は持ち合わせていない。断固否定!
「魔力の纏いが始めより雑になってるぞ!フルール!ネラは、もっと手数を増やせ!押し切られるぞ。」
「はい!」「……。」
元気の良いフルールの声に対して、ネラは無言。というより、―――鋭い目つきで睨まれた。
二人の顔は、泥人形の泥で泥まみれ。二人はそれぞれ違う戦闘スタイルをする。
フルールは、電気を纏って素手での戦い方。
ミレドのように重い拳は振れないため。どちらかというと、クーシェのように素早い機動を活かして手数を増やして拳を振るう。
まあ、そこは得意な『雷』が上手いこと作用している。スタイルは、そのままの"超"近距離戦闘である。
対してネラは拳を振るわず、翼の"羽根"を使う戦い方。中距離攻撃を得意とする戦い方。
翼の羽根は、通常の羽根より何倍も鋭いようで人形に飛ばした羽根は、泥を貫き貫通している。
―――そして、時には羽根で引き裂いている。
けど、その反面。手数が少ない。
懐へと入られた泥人形の攻撃を受けて、軽く吹っ飛ばされている。
「よっと、」
風魔法を微少ながら動かして、ネラを優しく地面へと下ろした。
粗方の二人の戦い方を観察して分かった。
フルールは、小さな体を活かした戦いをする反面、魔力のコントロールがまだ拙い。所々、上手く纏えていない所が目立っていた。
ネラは、中距離からの強撃は凄い。近距離からの強撃はよくある。だが、距離が開けばその分威力が落ちる。
―――それは、中距離でも同じことである。
だけどやはり手数が少ない。恐らく、羽根のコントロールに力を入れているため、そちらに気を取られて手数が少なくなっているのだろうな。
「二人とも!!」
二人を集める。問題点は、
……まあ、色々あるが。二人とも筋が良い。これからによっては、クーシェやポーアにも匹敵する強さになる事は間違いない。
「一旦休憩しよう。根を詰めてもしょうがない。
二人とも焦らず、ゆっくり練って行こう。」
彼女達をそれぞれの里へと戻す時期は、まだ決まっていない。決まっていないという事はまだ時間が十分あるという事だ。焦って体を壊してもメリットは無い。
むしろデメリットの方が多い。
「はい!」「………」
元気なフルールの声。だが、ネラはそっぽを向く。
凄い嫌われよう。仕方がないとも思うが、今はそれでも良い。二人、いや全員。とはゆっくりと仲を深めて行きたい。
「好きに使ってくれ。置いておくから。」
魔法の袋から、水に濡らしたタオルと水の入った容器を地面に置いてから他のグループを見る。
他の子達にもそれぞれ教え役が付いて教えている。
クーシェとカレンさんがキツネ人族のマロン。
ポーアが同じ種族のフィアール。
ミレドが人魚族のパルメルス。
そして、ルリが後から合流したネモとペーレ。
三人で何やら話し込んでいる。ルリの口元は、キュっと引き絞って真面目である。
「あの、ネスクさん」
「ん?」
視線を戻すとフルールがいた。
下から急に上目遣いで見つめられるとキュンと来るものがある。
「あの、お願いしたい、のですが、私に魔力操作を、教えてくだちゃい!うう〜。」
「ははは!フルールはかわいいなぁ〜。」
舌を噛んだフルールの頭を優しく撫でる。
魔物との一件の後、フルールもよく話し掛けてくるようになった。あの時一緒にいたパルメも……。
「さて、"魔力操作"だったな。教えるといっても、別段特別な事はしてないんだ……。」
フルールから手を離して、体に流れる魔力を意識する。血の循環によって魔力の運搬が行われ、古い魔力が心臓へ、新しい魔力が手足へと流れて行くイメージ。
その流れを意識したまま、フルールのの両手を取る。
魔力は、不思議な物で、こうして、他人と手を握り合う事で手から手へと繋がりが生まれる。
「っ!」
その流れを感じてフルールがびっくりしている。
普段から慣れ親しんでいれば、魔力の流れなんて物は無意識下で行われる。
「……分かるか。これが、魔力の流れだ。魔法を"纏う"コツは、この流れにイメージを流し込むんだ。緊張せず、体の力を抜いて自然に。魔力は、常に体の中を循環しているんだ。
――――【雷】」
重ねたフルールの手からとても小さなスパークが起こる。そのスパークの色は赤、黄、白、と様々に着色される。小さな花火のように咲いた雷は、しばらくすると消えていった。
「……綺麗、でした。」
「こんな感じ。もっと制御が上手く出来るようになったら、もっと派手な魔法も自然に出来るようになるよ。こんな風に!
――【雷電】【暗闇】」
片手ずつに雷魔法と闇魔法を作り出す。二つの魔法を両手で合わせてコネコネとこねた後に誰もいない頭上へと、放り投げる。
ズドンッ!!!
こねた球は空気の魔力を吸い上げて大きな雲を生み出す。そして、空から雷が地面へと落下した。木一本を丸々焦がした雷は、綺麗に二つに引き裂いた。
【雷雲】
空気中の魔力を吸い上げて大きな雲へと肥大化する。そして、混ぜ合わさった雷へと蓄積された魔力を一発の大きな雷に昇華させて繰り出す合成魔法。
「毎日、小さくてもいいから全身の魔力の流れを意識して雷の発現。―――これが、地道かつ、着実に魔力操作を覚えるコツだな。」
フルールが口をポカンと開けたまま、威力と音が凄まじい物であったため仕方がない。ネラも、見ていたようで固まってしまっている。
やり過ぎだった、かな。
「あー、えーと。始めは難しいかもしれないけど慣れれば、簡単だから。……頑張って。」
「……す」
「す?」
「凄いです!ネスクさん!!五つの魔法属性の中でかなり制御が難しいと言われる『雷』をあんな風に!!」
フルールの迫力に負けて堪らず後ろへ身を引いてしまう。眼が羨望に満ちた眼をしてキラキラと輝いている。
「そんなに、凄いのか?今の……。」
俺としては、普通だと思う。
あれ位は誰でも出来筈だ。だって、初級魔法である【雷】とそれ程、大したことのない魔力しか使っていないのだから。
「『雷』への適正が最も高い私達『ユニコーン族』の大人の人でも、ここまでの魔法出来ません。族長は分かりませんが、代々、私達『ユニコーン族』は、雷を纏う事しか出来ないんです。はぁっ。」
深いため息をフルールがこぼした。今回の子ども達への最初の課題である『テウメッソ討伐』を話した時、そこまで乗り気では無かったのは、その事が原因なのだろうか。
「魔力操作が上手く出来るようになったら息をするみたいに雷が扱えるさ。―――"千里の道も一歩から"だ。」
「どういう意味、ですか?」
「最初から諦めず、始めの一歩を踏み出すことが肝心、というどこぞの偉い人の言葉だ。フルールは、拙いながらも"雷"を纏えていたんだ。十分魔法への素質はあると俺は思うぞ」
「……ありがとうございます。少し、元気が出ました。今日からやってみます」




