謁見
久々に更新します。
着替え終えた後、大広間『王の間』と呼ばれる場所へと通された私達は、玉座に背を預ける人の前に通されていた。沢山の人達が頭を垂れている。
エルメスの後を付いていく私達は、最前列の玉座の前へと回された。
何が何だか分からないまま、召喚者であるエルメスと同じように膝を付いて頭を垂れる。
"面を挙げよ"という声で顔を上げる。
穏やかな表情を浮かべるこの国の王様?と思われるその人物が自分逹を見ていた。
「おお!!そなた等が異界からの『勇者』方であるか!急な呼び掛けに応じて頂き、誠に感謝。
我が国、ヤグラシア共和国へようこそ。」
王冠を被った白髭のその優しげなその王様がそう言った。
「儂の名は、ヤグラシア共和国、第118代目『オルゴ・ラス・フォー・ルーレンス』。
この国を取り仕切りまとめる者である。」
「もったいなきお言葉。陛下、報せの通りに。『勇者様方』を見事、お呼び致しました。」
先頭のエルメスさんが『国王』に報告をする。
「誠に大義であった。エルメスよ。歴史上に於いても、このような人数を呼び寄せたのは、
―――そなたが"初"であろう。セリザスに、ヘレンティスも、この一年―――大義であった。」
「「はっ!!」」
左に控えている男二人に声を掛ける。
「さて、『勇者様方』。異界から急に呼び掛けて、こちらの都合に巻き込んでしまい、誠にすまなく思っておる。エルメスが説明したと思うが、そなたらの生活については、こちらで責任を持って面倒をみよう。」
頭を下げる王様に後ろに控えている他の人達がざわつき出した。それを左手を上げて王様が制する。
するとぴたりと、ざわつきが止まった。
「………お話の途中で失礼します。少し、宜しいですか?」
小夜の体がびくっとした。
(お母さん!?)
突如、母である『碧海』が立ち上がったからだ。
「無礼者!陛下の前でそのような!!例え異界の者であれ、そのような態度は万死に値するぞ!!」
控えていた重鎮の一人が声を荒げる。
そして、控えていた甲冑姿の人達が腰にある剣の柄に手を掛ける。
「っ!」
堪らず小夜は、碧海を見てしまう。
こんな一触即発の状況で肝が冷える処の状況じゃない。碧海の瞳は、王様を真っ直ぐ見据えていた。
周りの様子などに全く揺るがないその瞳は、強い母、その者であった。
「良い良い」
王様は、穏やかな声でそう言う。
「し、しかし。陛下………」
「儂らの都合で"喚んだ"んじゃ。
……無礼も何も無いじゃろう。普通の生活を送っていた所を急に右も左も分からぬ所へと突如、呼ばれた。
たとえ儂が偉い立場であろうと、彼等からすれば、自身を『誘拐した者』。その事実は覆りはせん。
………警戒を解け。」
王様が剣の柄に手を掛け抜刀寸前までなっていた所を収めた。
「我が国の者が失礼した。そちの名はなんと申す」
「アオイ・アラシヤマと言います。」
肝の据わった堂々と名乗る母は、とても格好良く見える。頭の中に"母は強し"という言葉が過る。
「おお、良い名じゃ。アオイ嬢。」
「『孃』は、止めて下さい。これでも、二人の子が……いましたので。」
「では、アオイ婦人殿。聞きたい事とは、何かな?」
「先程、そこのエルメスという者から粗方の内容は伺いました。その中で、"魔王を倒すまで"と、ありました。それは、つまり、
子ども達に"命を奪わせる"ということでしょうか?」
確かにエルメスは、先程"魔王を倒すまで"と言っていた。
「っ。」
想像してしまい堪らず体が震えてしまった。
ラノベなんかの物語の中では、魔王軍が率いる魔物やそれに組する魔人なんかをバッタバッタと倒していく話がよくある。だけど、現実世界で考えるとつまり、敵対する勢力を"殺す"という事だ。……自分の手で。
「儂らも率先して、命を奪うような真似はさせとうない。見るからに、まだ若い者達に。じゃが、魔王が率いる軍はそんな思いなど踏みにじって攻めてくる。
――忘れもせん。
千年ほど前、
魔王軍によって、我らは全滅寸前まで追い込まれた。街は崩壊し、愛する民は大切な者達を大勢、失った。
そんな状況下、当時の『賢者』数十名が命を掛けて『勇者の召喚』を行った。
異界から呼ばれる『勇者』は、次元を越える過程で人並みを外れた『力』を授かるとされておる。
それは、戦力において圧倒していた『魔王軍』を跳ね除ける事が可能な程、強力な力を……。そう、召喚された今のそなたらも同じじゃ。
どうか、儂らにその力を貸して頂きたい。」
再び、国王陛下が頭を下げる。
王様と母との間に長い沈黙が流れる。
「……分かりました。どの道、その『魔王』を倒さないと『帰れない』ということですね。
こちらこそ、話に割り込む形で大変すいませんてした。」
「おお、ありがとう。……ありがとう。」
優しげな王様の瞳から一筋の涙が溢れた。
後ろの人達からも歓喜に似た声が溢れて来る。
「今日はもう、遅い。個室を準備させる故、心身を休めて下され。エルメス、頼んだぞ。」
「御意」
その一言だけ呟いてエルメスが立ち上がりこちらへと振り返る。
「皆様、ご案内いたしましょう」
そして、そのまま入って来た扉へと向かう。
色々と整理が付かないまま、そのままたらい回しのように次の部屋(自室となる所)へと向かう。
ぎゅっと母さんが手を握って来た。
不安で気持ちが一杯だが、知り合いが多い分挙動不審には陥らないで済む。つくづく、幸運だったと思いながら、長い廊下を歩いていくのであった。




