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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
203/347

十の集い

更新します。

「報告します!!

前、内乱者主犯格・ナザラ・ツェリア・ペルメス、ヒートグリス両二名の死亡を確認!!」


 会議中だというのに、慌ただしい足取りで入って来た兵士の報告でその場。

 種族会議の定例会に赴いていた代表達の輪に動揺が走る。


『静まれーい!!!」』


 会議の一番奥に座るフクロウの姿をした

議長≪ヘーガス・ガルト・ガングイル≫の声でざわついた声が落ち着いた。


「詳しい情報を。」


 ヘーガスが報告に来た兵士に詳しい情報を要求する。


「はっ。詳しい情報はこちらに!」


 持ってきた書類をヘーガスの元に置くと、

そそくさと部屋を出て行った。

 眼鏡を翼の手で持ち上げて、書類の内容に目を通して行くヘーガスが一際鋭くなった。


「……流石は、マグルドの部下だけあるのう。

簡潔で分かりやすい。ふぉっほっほ!!」


 物騒な案件が転がり込んで来たというのに、呑気に笑う議長。


「お褒め預り、ありがとうございます。」


 ヘーガスとは、向かい合わせになるように席に座るカラス人族の代表、マグルドが右手(翼)を前に頭を下げた。

―――序列九位の諜報専門のカラス人族。


 彼等は、敵の諜報を専門にしており本国に持ち帰る情報も簡潔且つ、分かりやすい。

 その上、暗号化を常にしているため、

伝えるべき情報だけを報告書に記していて、

老眼のヘーガスにはありがたい。


 報告書には、見るも無惨な内容が書かれていた。

―――全身の血を抜かれたように、干からびたような遺体で発見されたという事だ。

 苦し気な表情はしておらず、安心したような表情をしていたと報告書にある。


 彼等は、奴隷に落とした後、強制労働を強いりつつ、厳重な監視を行っていた。

 彼等が同胞にしたことを思えば、拷問して聞き出すこともしたのだが、敢えて強制労働を強いるだけで泳がせていたのだ。


「しかし、……まいったのう。

これで完全に尻尾を切られた。

……ディルよ、そちらはどうなっておる?」


 厳重な監視網を潜っての暗殺。

 相手は相当のやり手。時を見誤ったとヘーガスは反省するのであった。

 次にマグルドの隣に座るドルイド族代表、ディルへと視線を写す。


―――内乱の折りに転落してしまったドルイド族は現在、序列十位。


 十位以下になることもあり得たが、

彼の能力・実績で十位に留まったのだ。


「叔父の、ナザラの足取りを辿りましたが、

叔父が行っていた闇取引の市場は、同志

マグルド様のおかげでたどり着けたのですが、

どこで魔物の生成までこぎ着けたのかは分かりませんでした。」


 落胆したような声がディルから見て左前から溢れた。

「こんな若造に任せたのが運のつきでしたね、議長。ここは私に任せていただければ、

この『眼』で、反逆者を自白させた物を………。」


 序列三位、エルフの代表――ゲルナンドがそう呟いた。


「まあ、そういうでない。ディルはよくやった。

 ナザラ(あやつ)が口を割らず、情報ゼロの状態で闇市場まで漕ぎ着けたのだ。――その上、拐われ闇取引されかけていた我らが同胞を救い返したのだ。それだけでも、彼の活躍は十分に称賛すべきじゃ。ふぉっほっほ!」


 愉快に笑う議長の言葉でその先の言葉を言わせない。理由は、救い出した者達の中には少なからず、エルフ族の者達もいたという事実があるからだ。


「そうだぜゲルナンド!!爺さんの言う通り小僧には、恩が出来た。例え身内が仕出かした内乱があったとしても、だ。それを納めたのも、小(・)僧(・)の(・)手(・)でだ。」


「……言葉を慎みなさい、ハッド。」


 ゲルナンドが睨むように、議長とは反対側に座る小柄な半裸のような格好の男。外見だけならば、人族と大差ないが彼は紛れも無い、


―――序列四位のドワーフ族だ。


「お前らはいつまで昔の事を覚えているつもりだ?ここが小さいんじゃないかここが!」


 ハッドがゴーグルを付けた頭をトントンと叩く。


「ザッハ、あなた方土竜と違って私は忙しいのですよ。あなたこそ外に出て少しは、頭を磨いてはいかがですか?」


「んだと!やるか!!」


 怒ったザッハが、バンッ!!と机を叩くと、

机の板が音を立てた後、机に穴が空いた。


「そちらがどうしても、というのであれば、受けて立ちましょう。もちろん、本気でね。」


「ああやってやるよ。ここじゃなんだぁ表に出ろ!!」


 売り言葉に買い言葉。

一触即発の二人が会議場の外に出て行こうとする。そこをヘーガスが宥めて止めた。

 二人は、ムスッとした表情でそっぽを向く。


 そのまま、今回の定例会の議題に入る。


「さて、報告を聞こう。前回、報告を受けたエルフ族、ドワーフ族、冰魔の狼(グラキエ・ウルフ)族の他(・)に(・)女神様から授かった種の≪誇り≫、神器を使える者は現れたかのう?」


 その場に集った十種族の代表に問い掛ける。

十の席の内、三つ。


―――五位のマーメイド族。八位のユニコーン族。


そして、


――この国の最大戦力。一位の竜族。


 その三つの席が空いていた。


 マーメイド族は、会議場まで来る距離が離れ過ぎているため来れない。彼女達は、海に住みかを持つため距離の都合でたまにしか、姿を見せられない。

 ユニコーン族は、特定の場所を住みかにしていないため現在居場所が不明。

 そして、彼ら竜族は、名こそはこの国に置いているが、ある程度の譲歩として、国同士の戦争となりうる火種は、彼らが消しているが、

―――基本的に主であるミレドグラルの命令しかきかない。

 今もどこかで戦争の火種を潰しているのだろう。そして、邪龍の監視という名目も持っている。

 彼らに無理強いは出来ない。



「内から一名追加です。はい!」


 小麦色の毛並みに尻尾を四つ持つ序列七位のキツネ人族の代表、≪ハク≫が手を挙げた。


「‥‥‥‥。」


 ディルは、この報告だけは信頼しているヘーガスであってもしていない。

 誰が国を裏切った者なのかもわからないこの状況下でみすみす妹、ポーアが神器使いになったという情報(えさ)を与えるわけにはいかないからだ。


「おおっ、これで十の内、五か。やっと半分、まだまだじゃが、来るべき時に備える準備が整いつつあるか。」


「爺さん……それも、『予知』か?」


 へそを曲げていたザッハが機嫌を直してヘーガスに聞く。


「ああ、そうじゃ。

――神器『夢(プログノーシス)』。

いずれ、破滅の時が来ると、彼(・)女(・)が告げておる。

 ワシも老いた。………そろそろ後継者を探す必要がある、のう。」


―――議長、ヘーガス・ガルト・ガングイル。

 彼は議長であり、序列六位フクロウ族の種族代表(リーダー)でもある。

 彼の年齢は、御年、168歳。



「私も、その方が良いと思います。

神器は、種を守るため、女神様からの贈り物。その後継者は、神器自身が選びますが、候補の目処は置いておくべきです。」


「クルムの助言は心に止めておこう。同じ神(・)器(・)使(・)い(・)の同士として……。」


 ヘーガスの横に座る淡い青の少(・)女(・)がヘーガスに助言した。その助言を皆が思う外、深く受け止めて、ヘーガスは真剣に後継者を考える。

 『灼熱の狼(カプシモ・ウルフ)族』と双璧を成していた片割れ『冰魔の狼(グラキエ・ウルフ)族』


―――現在、序列二位種族の少女。


 ヘーガスの歳からすれば、孫や曾孫と呼ばれても遜色無いくらい歳が離れている。

 ディルも含めてこの場の誰よりも幼い少女がにこやかに微笑む。

 この国で歴代最年少で種族代表(リーダー)の座に着いた少女、≪クルム・ベルシュタリア≫。御歳14歳。

 にこやかな微笑みと共に冷気が出る。

 神器との同調が強すぎて、彼女を介して勝手に神器の能力が漏れ出ているのだ。


―――神器<凍結(アブソリュート・ゼロ)>


 神器を発動させた彼女が触れた物(者)は、

瞬時に、彼女が解除しなければ、溶けない氷の中に閉じ込められる。


 彼女の種族は、『灼熱の狼(カプシモ・ウルフ)』の事実上の消滅後、国の国境を一種族のみで守り続ける猛者達である。

ペルメス国内の内情を取り入れました。

国として動き出す。それは、魔王復活への序章であり、動乱の開始でもあります。

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