十の集い
更新します。
「報告します!!
前、内乱者主犯格・ナザラ・ツェリア・ペルメス、ヒートグリス両二名の死亡を確認!!」
会議中だというのに、慌ただしい足取りで入って来た兵士の報告でその場。
種族会議の定例会に赴いていた代表達の輪に動揺が走る。
『静まれーい!!!」』
会議の一番奥に座るフクロウの姿をした
議長≪ヘーガス・ガルト・ガングイル≫の声でざわついた声が落ち着いた。
「詳しい情報を。」
ヘーガスが報告に来た兵士に詳しい情報を要求する。
「はっ。詳しい情報はこちらに!」
持ってきた書類をヘーガスの元に置くと、
そそくさと部屋を出て行った。
眼鏡を翼の手で持ち上げて、書類の内容に目を通して行くヘーガスが一際鋭くなった。
「……流石は、マグルドの部下だけあるのう。
簡潔で分かりやすい。ふぉっほっほ!!」
物騒な案件が転がり込んで来たというのに、呑気に笑う議長。
「お褒め預り、ありがとうございます。」
ヘーガスとは、向かい合わせになるように席に座るカラス人族の代表、マグルドが右手(翼)を前に頭を下げた。
―――序列九位の諜報専門のカラス人族。
彼等は、敵の諜報を専門にしており本国に持ち帰る情報も簡潔且つ、分かりやすい。
その上、暗号化を常にしているため、
伝えるべき情報だけを報告書に記していて、
老眼のヘーガスにはありがたい。
報告書には、見るも無惨な内容が書かれていた。
―――全身の血を抜かれたように、干からびたような遺体で発見されたという事だ。
苦し気な表情はしておらず、安心したような表情をしていたと報告書にある。
彼等は、奴隷に落とした後、強制労働を強いりつつ、厳重な監視を行っていた。
彼等が同胞にしたことを思えば、拷問して聞き出すこともしたのだが、敢えて強制労働を強いるだけで泳がせていたのだ。
「しかし、……まいったのう。
これで完全に尻尾を切られた。
……ディルよ、そちらはどうなっておる?」
厳重な監視網を潜っての暗殺。
相手は相当のやり手。時を見誤ったとヘーガスは反省するのであった。
次にマグルドの隣に座るドルイド族代表、ディルへと視線を写す。
―――内乱の折りに転落してしまったドルイド族は現在、序列十位。
十位以下になることもあり得たが、
彼の能力・実績で十位に留まったのだ。
「叔父の、ナザラの足取りを辿りましたが、
叔父が行っていた闇取引の市場は、同志
マグルド様のおかげでたどり着けたのですが、
どこで魔物の生成までこぎ着けたのかは分かりませんでした。」
落胆したような声がディルから見て左前から溢れた。
「こんな若造に任せたのが運のつきでしたね、議長。ここは私に任せていただければ、
この『眼』で、反逆者を自白させた物を………。」
序列三位、エルフの代表――ゲルナンドがそう呟いた。
「まあ、そういうでない。ディルはよくやった。
ナザラが口を割らず、情報ゼロの状態で闇市場まで漕ぎ着けたのだ。――その上、拐われ闇取引されかけていた我らが同胞を救い返したのだ。それだけでも、彼の活躍は十分に称賛すべきじゃ。ふぉっほっほ!」
愉快に笑う議長の言葉でその先の言葉を言わせない。理由は、救い出した者達の中には少なからず、エルフ族の者達もいたという事実があるからだ。
「そうだぜゲルナンド!!爺さんの言う通り小僧には、恩が出来た。例え身内が仕出かした内乱があったとしても、だ。それを納めたのも、小僧の手でだ。」
「……言葉を慎みなさい、ハッド。」
ゲルナンドが睨むように、議長とは反対側に座る小柄な半裸のような格好の男。外見だけならば、人族と大差ないが彼は紛れも無い、
―――序列四位のドワーフ族だ。
「お前らはいつまで昔の事を覚えているつもりだ?ここが小さいんじゃないかここが!」
ハッドがゴーグルを付けた頭をトントンと叩く。
「ザッハ、あなた方土竜と違って私は忙しいのですよ。あなたこそ外に出て少しは、頭を磨いてはいかがですか?」
「んだと!やるか!!」
怒ったザッハが、バンッ!!と机を叩くと、
机の板が音を立てた後、机に穴が空いた。
「そちらがどうしても、というのであれば、受けて立ちましょう。もちろん、本気でね。」
「ああやってやるよ。ここじゃなんだぁ表に出ろ!!」
売り言葉に買い言葉。
一触即発の二人が会議場の外に出て行こうとする。そこをヘーガスが宥めて止めた。
二人は、ムスッとした表情でそっぽを向く。
そのまま、今回の定例会の議題に入る。
「さて、報告を聞こう。前回、報告を受けたエルフ族、ドワーフ族、冰魔の狼族の他に女神様から授かった種の≪誇り≫、神器を使える者は現れたかのう?」
その場に集った十種族の代表に問い掛ける。
十の席の内、三つ。
―――五位のマーメイド族。八位のユニコーン族。
そして、
――この国の最大戦力。一位の竜族。
その三つの席が空いていた。
マーメイド族は、会議場まで来る距離が離れ過ぎているため来れない。彼女達は、海に住みかを持つため距離の都合でたまにしか、姿を見せられない。
ユニコーン族は、特定の場所を住みかにしていないため現在居場所が不明。
そして、彼ら竜族は、名こそはこの国に置いているが、ある程度の譲歩として、国同士の戦争となりうる火種は、彼らが消しているが、
―――基本的に主であるミレドグラルの命令しかきかない。
今もどこかで戦争の火種を潰しているのだろう。そして、邪龍の監視という名目も持っている。
彼らに無理強いは出来ない。
「内から一名追加です。はい!」
小麦色の毛並みに尻尾を四つ持つ序列七位のキツネ人族の代表、≪ハク≫が手を挙げた。
「‥‥‥‥。」
ディルは、この報告だけは信頼しているヘーガスであってもしていない。
誰が国を裏切った者なのかもわからないこの状況下でみすみす妹、ポーアが神器使いになったという情報を与えるわけにはいかないからだ。
「おおっ、これで十の内、五か。やっと半分、まだまだじゃが、来るべき時に備える準備が整いつつあるか。」
「爺さん……それも、『予知』か?」
へそを曲げていたザッハが機嫌を直してヘーガスに聞く。
「ああ、そうじゃ。
――神器『夢』。
いずれ、破滅の時が来ると、彼女が告げておる。
ワシも老いた。………そろそろ後継者を探す必要がある、のう。」
―――議長、ヘーガス・ガルト・ガングイル。
彼は議長であり、序列六位フクロウ族の種族代表でもある。
彼の年齢は、御年、168歳。
「私も、その方が良いと思います。
神器は、種を守るため、女神様からの贈り物。その後継者は、神器自身が選びますが、候補の目処は置いておくべきです。」
「クルムの助言は心に止めておこう。同じ神器使いの同士として……。」
ヘーガスの横に座る淡い青の少女がヘーガスに助言した。その助言を皆が思う外、深く受け止めて、ヘーガスは真剣に後継者を考える。
『灼熱の狼族』と双璧を成していた片割れ『冰魔の狼族』
―――現在、序列二位種族の少女。
ヘーガスの歳からすれば、孫や曾孫と呼ばれても遜色無いくらい歳が離れている。
ディルも含めてこの場の誰よりも幼い少女がにこやかに微笑む。
この国で歴代最年少で種族代表の座に着いた少女、≪クルム・ベルシュタリア≫。御歳14歳。
にこやかな微笑みと共に冷気が出る。
神器との同調が強すぎて、彼女を介して勝手に神器の能力が漏れ出ているのだ。
―――神器<凍結>
神器を発動させた彼女が触れた物(者)は、
瞬時に、彼女が解除しなければ、溶けない氷の中に閉じ込められる。
彼女の種族は、『灼熱の狼』の事実上の消滅後、国の国境を一種族のみで守り続ける猛者達である。
ペルメス国内の内情を取り入れました。
国として動き出す。それは、魔王復活への序章であり、動乱の開始でもあります。




