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守護者が織り成す幻叡郷  作者: 和兎
3章 勇者召喚編
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花見に行こう

遅くなりましたが、更新します。


 眼前にまだ蕾の花達が咲き並ぶ。ミレド達

いわく、――今年は花の開花が遅れているようだ。

 そのため、綺麗な花弁を開かせる花が少ない。それでも、花弁を開かせた花は、色とりどりに咲いている。

 正に花畑。といった感じに花の絨毯が出来ている。


「ポーアここでよいかのう?」


 魔物の皮から作った防水性を伴った敷物。

その敷物を広げながら、ミレドがポーアに設置場所を聞く。


「はいそこでお願いします。」


 ポーアの了承が出ると、広げたその上に持ってきた荷物もとい、昼食を置いていく。

 ポーアのお兄さんから送られてきた物の中には、パンや香辛料といった食べ物が盛りだくさんに送られてくる。食料が戴くのはとてもありがたい。

――特に、ドルイドの街で食べた串肉のタレ。


 これがあるだけで世界が変わる。

 甘辛なタレを、焼いた肉に付けてパンに挟んだサンドイッチ。今からでも昼食が楽しみだ。


「子ども達は……おお、そこか。」


 子ども達はクーシェ、カレンと一緒に遊んでいる。クーシェと追いかけっこをしたり、カレンさんと花冠をこしらえたりと……。

 カレンは手先が器用で花冠以外にも、ブーケや指輪などを作っている様子が遠目で見える。

 出来た物を手にしながら、パルメとフルールに笑い掛ける彼女は、いつものクールで華麗なカレンではなく、女性らしい美しさという物を感じた。

 子ども達は、当初より大分良くなっている。

 以前の彼女達であれば、元気に走る姿は見られなかった。また遠くへ行ってしまうのではという心配はある。だが、今回は人手が多いため大丈夫だろう。


 早朝は肌寒く感じた風も、今は太陽で暖められ心地よい春らしい風が吹く。


―――良いピクニック日和だ。


 危険な魔物の心配をしていたが、ペーレとネモ率いる警ら隊のおかげか危険な反応は感じない。

 ここは東の森の(ポーアが以前秘密にしていた)花畑。皆でピクニックも良いかと思いこの場所へと赴いたのだ。


『いらっしゃ~い!』『っらしゃい~!』


 ふわふわと小さな人型の姿をした精霊、ネモとペーレが飛んで来た。

 先駆けてこちらに来てもらっていたのだ。


「おう!二人ともお疲れ。あとサンキューな!」


『なんてことなかったよ~♪』

『朝飯前~♪』


 二人に労いの言葉を掛ける。

 二人のいつも通りの様子から何もなかったことがうかがえる。

何も無い事に越した事は無いのだが。

 ネモとペーレは、ふわふわと飛んでクーシェ達の方へと飛んで行った。気の赴くまま、空中を謳歌するような動きはまるで、風に乗って飛んで行くタンポポの綿のようである。



「よい……しょっと」


 ルリが持ってきた荷物の最後のバスケットを敷物の上に置いた。

 置き終わるとネスクの側にちょこんと座った。


「ルリもお疲れ。疲れただろ」


 家を出てからここに到着するまで一時間。森の中は足場も悪く、魔物にも警戒をしないといけないため肉体的にも精神的にも疲弊する。

 ルリは他の子達と違い体力があまり無い。

 魔法の袋(アイテム・ポーチ)から手拭いを取り出してルリの汗を吹いてやる。


「大丈夫……平気」


 短くそう返事して拭かれるままにする。

 じっと他の子達が遊ぶ姿を見つめる。暖かい日差しのせいか、少しうとうとしている。

 そして、数分も立たない内にそのままネスクの肩に体重を預けて眠ってしまった。


――春眠暁を覚えず


 そんな言葉があったっけ。

 心地よい風に乗って花の良い香りが漂って来る。


「ルリは寝てしまったのか。

小さな体に無理させてしもうたのう。」


「ルリちゃん大丈夫でしょうか?」


 準備を終えたポーアとミレドがルリの様子を見に、寄ってきた。


「大丈夫だろう、朝早くから起きてたんだ。

寝たら元気も戻るだろう。子どもは疲れやすいからな。」


 傍ですやすや眠るルリの寝顔を拝見していたが、ふとした拍子に花畑へと視線を向ける。


「満開、だったら良かったんだかな……。」


 頭上の木の枝にも花は咲いていない。そして、周りの木々にも蕾は付いているがやはり咲いている花は少ない。

春先の花見とはいかなそうだ。


「なら、咲かせましょうか?少しお待ち下さい。」


 ポーアがそう言うと、呟き程度に「螺旋状の盾《スクートゥム・スピラセンス》」と呟く。

 ポーアの髪が根元から若葉色から深緑色に変化して、右手にペンダントが錫杖化した神器が握られている。

 前回とは異なり、衣装の変化は見られないが蔓の羽衣に花の蕾を宿している。


 コン コン


 ポーアが二回杖を打つ。打った瞬間、地面に魔法陣が構成された。

 独特な文字列が円上に綴られた魔法陣がポーアを中心に展開。


『άνθηση(アンシシ)』


 そう呟くとポーアが杖を打つ。淡い緑の光を放って魔法陣が消え去っていく。

 魔法が失われていくのと、反比例するかのように周辺の花全(・)て(・)の蕾が開花していく。


「………ふぅ。いかがですか?」


「上手く使いこなしておるのう。さすがじゃポーア!」


 魔法が終わった事で元の髪色になったポーアがミレドとネスクに聞いてくる。魔力暴走が起きない見事な魔力制御を行ったポーアをミレドが誉める。

 大魔法を扱ったというのに、

それぐらい魔法に振り回されず制御された魔法行使であったのだ。


「うん良かったぞ!ヒサカとのコンビネーションが良いんだな!!」


「はい!ありがとうございます……。」


 ポーアをネスクが誉めると、照れたような控えめな笑顔を浮かべる。

 それと同時に二(・)人(・)との違いを実感させられた。


 同じ神器使いだと言うのに、俺はソフィアを上手く使いこなせていない。もっと、上手く使えば、戦闘でも優位に使える力だ。

 これは、一度、ソフィアと真剣に話し合う必要がありそうだ。


「ん……?」


「悪い……ルリ。起こしちゃったな。」


「ん――。」


 まだ眠たそうなルリが目を擦りながら、短く返答する。しばらく擦っていた目が目の前の出来事で大きく見開いた。


 花が満開に咲いた花畑。風に乗って花びらが舞う。そして、先ほどまで見えなかった蝶々が花の蜜を吸いにちらほらとひらひら飛んでいるのであった。

補足になりますが、ポーアの使った魔法は、植物の成長を促進させる魔法です。

自然の力を強引に引き出すことは、

世界の『理』に触れてしまうので、あくまで、その植物の成長を促すだけの魔法となっています。

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