精霊眼
昨日に引き続き更新します。
前方に三人いる。
息を切らしてあお向けに倒れ伏しているクーシェと、カレン。それに対して余裕の表情を浮かべて欠伸までしているミレド。相変わらずのその強さで二人はへとへとになるまで鍛えられているようだ。
以前の自分も二人と同じであった。
まだ、数ヶ月しか経っていないのに妙に懐かしい。
「はあ~あ…。うむ?ネスクか。それに、ルリも。――おはよう。」
ネスクに気付いたミレドが木刀を片手に挨拶する。
「ミレドおはよう。」
「おはよう……ミレド様」
ネスクとルリが挨拶を返す。
「あ…ネス、ク様にルリちゃん。おはよう、ございます」
「ネスク、殿、おは、ようござ、います。」
へとへとで倒れるどころか死にかけている二人が顔を持ち上げる。
額に大粒の汗をいっぱい掻いている。
「二人とも、おはよう。ああ無理に起こさなくていい。しばらく休んでろ。ミレドに用があるだけだから。」
「はい」「無様な姿で申し訳ありません。」
二人はそう言うと空を見上げたまま倒れた。
一体どうやれば、こんなふうに二人が倒れるまで修行できるのやら。……想像は出来るが。
「だらしないのう。して、どうしたんじゃ?おぬしら」
「ミレドと久しぶりに打ち合いたいと思ってな。ルリは、見学だ。」
ネスクがそう言うと、ルリがコクリと頷く。
「おお!そうかそうか!おぬしがそう言うのであればやろう。」
嬉々としたミレドが近くに転がるクーシェかカレンの使っていたであろう木刀をネスクに投げ渡す。それを片手で受け取り、ルリと手を繫いでいた手を離す。
名残り惜しいようにルリが繫いでいた手を伸ばそうとするが、ネスクの側から十分な距離をとる。
「それじゃ!やるかのう!」
ミレドがそう言うと構える。
****
目の前で模擬戦が繰り広げている。
白い少女の姿をした龍―――ミレド様とミレド様とは対称的な黒い髪をした少年が見事な剣撃の攻防を繰り広げている。
「やるのう!なら、これはどうじゃ?」
ミレド様が少年、ネスクの剣戟を躱すと数歩後ろに引いた。追撃を加えようと空いた距離を詰めて上から打ちかかる。
少年が打ち込むと、ミレド様の姿が消えた。
「そこっ!」
少年が打ち込んだばかりの姿勢から背後に向かって持っていた木刀を投げた。
「ぬぅっ!?」
背後の頭上にいたミレド様がその木刀を防ぐと、木刀が弾かれた後不自然な軌道をしてから少年の手元に戻った。
「やるのう。魔力の糸をそのように使うとは、扱いがまた上達しておるのう。」
地面に降り立ったミレド様がそう言う。本人は気づいていないのかもしれないが、その表情は爛々としている。ネスクとの模擬戦を楽しんでいるのだ。
「ミレドは相変わらず魔法の扱いが絶妙だな。さっきのあれ、光魔法の応用だろ?」
「気づいておったのか。」
「当たり前だろ。前にくらってるからな。」
「なら、別の手で行こう。【凍てつく槍】」
ミレド様の周りに氷の欠片が空中に出来上がる。数にして数十個。槍のように先端へ向かうほど細く鋭く尖る氷の槍。
槍が一個だけネスクに向かって飛来した。
辛くも避けるが地面が抉れ凍り付いた。
「おいおい。俺を殺す気か!!」
「大丈夫じゃ威力は落としてある。
当たっても死なぬよ。
ちょっと凍傷になるやもしれぬがの。」
「なお悪いわ!!たくっ、【聖雷】」
ネスクの体が白く光った。その後バチッと空気に電流が流れる。
二ヶ月前に一度目にした姿。
パルメと私とフルールを魔物から助けるためにほんの一時だけ見せたその姿。
私の目は、魔力の流れが見える。
それは生まれつきの物で皆からは『精霊眼』と呼ばれている。
精霊は、魔力から生まれる。
精霊は人見知りで、気に入った相手の前には現れない。私の目にはその隠れた精霊を見ることが出来る。
清流の如く精錬されたネスクの魔法には、無駄が少ない。そのため、彼の纏う魔力の流れは今までに見た誰よりも綺麗に見える。
精霊が好みそうな魔力。彼の周りに隠れた精霊が群がっている。
「【鳴雷・白竜】」
氷の槍と竜のように空気中を自在に移動する雷の矢が激しくぶつかり合う。
雷で小さく砕かれた氷が朝日を浴びてキラキラと宝石のように煌めく。
時期外れのダイヤモンドダストが舞う。
「……綺麗」
ルリは見学しながらその光景を目に焼き付けるのであった。
「くたばるのじゃ!!」
「くたばってたまるか!てか、やっぱり殺しに掛かってんじゃねえか――――!!」
ルリが感動している所に水を差したように物騒な言葉が飛び交う。
「皆さ―――ん!ご飯出来ましたよ!!」
ネスクとミレドの魔法の行使は、ポーアが朝ご飯を呼びにくるまでずっと続くのであった。
ルリが感動している横で水を差す二人。
その場にもしポーアがいれば、子どもの教育に悪いと言う事で二人とも説教をくらうところでした(笑)




