季節は巡りて‥‥‥
かなり日が空いてしまいました。
申し訳ありません。
三章スタートです!!
三章 プロローグ
ネスクは思わず、目の前の光景を疑ってしまった。
空には小型の翼膜を広げるトカゲのような生物。その鱗は、色鮮やかに彩られた色。
赤、青、緑、黄、紫
ミレドが龍化した姿をとても小さく。そして色鮮やかに塗ったような姿をしている。
―――紛れも無い『竜族』と呼ばれる彼ら。
ミレドがその血と力を分け生み出した種だ。
上空を巨大な影で覆うくらいの数が翼を羽ばたかせる。
だが、それだけではない。
西側、東側から人族の軍隊。
全身フルプートにそれぞれの武器が隊列を組む。完全武装を整えた彼らの色は、西は青を基調にした鎧。東が赤を基調にした鎧。
そして、彼らの掲げる旗、
―――双方≪共和国≫と≪聖王国≫の旗だ。
目の前の視界がぐらっと歪む。
現実を否定したくなる思いに駆られる。
「なん、で……」
次に溢れた言葉がそれだった。
「ネスク?大丈夫か?」
一緒に対峙したミレドがそう言葉を掛けるがその返答を返すことが出来ないくらいネスクの中に動揺が広がる。
(なんで小夜がここにいるんだ!)
声が出ないくらい動揺しているが心の中ではきちんとした言葉が発せられる。
≪共和国≫側の兵士の中に、他とは背丈が違う者達がいる。
周りがフルプートに対して、守る所だけの装備をしているだけ。
そして、全員が黒か、茶色の髪色である。
この世界に『黒髪』という者は少ない。
ブロンドか、白。は銀といった者達の方が人族の中には多い。
もし、黒髪の者だとするならば、
―――それはネスクのように代償のせいか、
もしくは異界の者。
はたまたその血が混ざった者を指す。
◇◆◇◆◇◆◇◆
肌寒い空気で目が冷めた。
体を起こして上に来ていた毛布を払いのけてベッド脇の窓を開けた。
「ううっ。……寒い」
季節は巡って再び春が訪れたというのに冬の寒さは健在で。仄暗い早朝、
遠くで木刀のぶつかり合う音が聞こえる。
どうやら冬の間は休止していた修行を再開したようだ。
「俺も久しぶりに体を動かすか……」
冬の間は家の中で過ごす事が多かったため体が訛っている。体を軽く解す。
ささっと着換えを済ませて部屋を出る。
一階に降りると、暖炉に火が灯り、その近くにポーアとルリがいた。
「おはようございますネスク様!今日はお早いのですね」
「ん……おは、よう。ほああ…」
元気なポーアの挨拶に対してルリは眠そう。
かわいい大きな欠伸の後目を擦っている。
「おはよう二人とも。………他の子達は?」
暖炉の周りにはルリとポーアしかいない。
「他の子達はまだ眠っています。」
「ん……」
うつらうつらするルリが短く返事をする。
「ルリも部屋に戻って寝ててもいいんだぞ。
別に時間の強制は無いからな。ここには」
決まった時間に起きなければいけない。
―――という決まりは決めていない。
なぜか自然と全員揃う時間にはなってしまうが時間の予定は一切取り仕切っていない。
寝ようと思えば一日中寝ることだって出来る。
「んん……いい。部屋……狭いから」
ルリがまだ眠たげな目を頑張って開けながら首を横に振ってそう言う。
確かにルリの言うとおり、三人一部屋にしているため狭いだろうな。
改築の際、全員に一部屋ずつ出来るようにはしているのだが、
―――子ども達は、一部屋ずつ使おうとしない。
一人でいると嫌な事を思い出すのであろう。
「なら、外に出るか?
今からミレド達に合流しようかと思うんだが。」
「ん……出る」
そう言うと、上着を取りに部屋へとトコトコ歩いて行った。足取りは快調なのだが、ふらふらしてどこか危なっかしい。
「確か、……アイツもあんな感じだったな。」
二階へと、上がって行ったルリの姿を見て、かつての妹―――小夜の後ろ姿と重なって見えた。
小夜も朝に弱く、朝はよくルリのようにふらふらした足取りであった。
「あいつ?ネスク様誰の事でしょうか?」
かなり一人ごとに近い呟きであったが、横にいたポーアに聞こえていたようだ。
「何でもない。と、……そうだ。」
懐に入れていた小さな袋。魔法の袋からミレド特性の包帯を取り出す。
最近は、三日に一回くらいの換えで効いているため忘れそうになる。
「ネスク様わたくしがやります!」
「なら、……頼もうかな」
「はい!」
袋から取り出した包帯をポーアに渡して自身は両手の包帯を解いていく。
シュルシュルと包帯が解けて床に落ちる。
包帯の下から肌の手が姿を見せる。人の肌をした両手。包帯のおかげかドルイドの森以降、代償による呪いで腕が変異した事は無い。
解いた傍からポーアが新しい包帯を巻いて行く。ふと、ポーアが巻いていた手を止めた。
「………ネスク様の腕は、もう治る事はないのでしょうか?」
「代償、だからな。人として、外れた力を使ったんだ。これだけで済んだだけでもマシだろう。」
今になって思う。
体の一部が使えなくなるよりは、まだこの呪いで済んだ事は奇跡と言っても過言ではない。
「ネスク様お約束します。」
ポーアが決意を込めた面持ちでネスクを見上げる。
「この命尽きるその時まで、
ネスク様から受けたご恩は忘れません。
いつかネスク様がお困りになった時はわたくしをお頼り下さい。」
「……ポーア」
涙をこぼすのかと思わず身構えたのだが、杞憂に終わったようだ。
数カ月前の彼女であれば……。
彼女も日々成長しているのだ。それは、肉体面も精神面も。
「そうだな。困った時は相談する。その時は頼んだ!」
「はい!」
止まっていた手を動かして両手の包帯を変え終わった頃に上着を着たルリが戻ってきた。
緑色の腰回りを絞ったようなワンピースの上にモコモコした上着を来ている。
「ネス……おまたせ」
「おう、そんじゃ行くか!ポーア、包帯ありがとう。」
お礼だけ伝えて駆け足気味に外履きに変えて外に出る。
さすがに雪は溶けてしまっている。
―――だが、寒い。
自然とルリが俺の手を握って来た。
この寒さで眠気も吹っ飛んだのか、眠気を含んだ目から通常運転時の目に切り替わっていた。
ルリを引き連れて木刀の鳴り響く方へと足を進ませる。
二章と違いバトルシーンからの入りではなく、
色々と含みのあるプロローグとして書きました。




