女子トークは止まらない
これにて小夜回終了です。
楽しんで読んでいただければ幸いです。
「ねえ!恋ばなしようよ!こ・い・ば・な!!」
いつになく興奮気味な小夜がベッドに
寝っ転がった体勢で床に敷いた二人分の布団に体を落ち着かせた真理亜と恵に話しかける。
「小夜ちゃん好きな人、出来たの?」
不思議そうに布団を掛けてあお向けに転がる恵が小夜に問う。
「出来るわけないじゃん。
ナナミンも知っての通り。私って、めんどくさがりだから。そういうナナミンは?」
「私も‥‥かな。」
「二人とはどうなの?」
二人とは、孝希先輩と好太郎先輩のこと。
孝希先輩はお風呂で聞いたけど、好太郎先輩は………。
無い、とは……。
思うが、もしもと言う可能性もある。
「幼馴染の友達、かな。それ以上は考えたことないよ。」
うん、なかった。
でも、
ここまで異性として思われてないとなると、
少し孝希先輩が可愛そうになってくる。
―――けど、昔のことを思えば『友達』と言われているだけでもいい方だと思う。
昔の孝希先輩は、ナナミンに対してまあ、悪いことばかりしていた。
虫を嫌がるナナミンに、孝希先輩が虫を持って追いかけ回したり、スカートめくりをしたり、鬼ごっこをすると真っ先にナナミンを捕まえに行ったりと……
それを思えば妥協点だと思う。
「まりちゃんは好きな人とかいるの?」
恵が蚊帳の外にいた真理亜に話を振る。
「私、ですか?うーん、………いない、かな。」
少し考え込んだ真理亜がそう結論付ける。
「まりちゃんは昔からの友達とか、は?」
「私、中学は他所の県でしたので、
ナナミン先輩みたいに幼馴染も傍にいません。」
親元を離れて、今は一人暮らしをしていると、学校で真理亜本人から聞いた事を小夜は思い出す。
「そうなんだ。一人暮らしで大変じゃない?」
恵が心配そうな表情をする。
「大変な事もありますが……サヨがいますので。」
「え、私っ!?」
急に自身の話題が出てきたため眠気が襲い掛かっていた思考が一気に覚醒した。
「サヨって頭はそれなりなのに、面倒臭がりなんですよね。」
自身で"面倒臭がり"と言うより、他の人からそう言われると何だか違和感のようなむず痒さを感じる。
「サヨって教室では、普段はナマケモノみたいに机からあまり動かないんですよ……。
一年の時。
授業が移動教室の科目が合ったのですが、
移動が面倒だからって理由でサボろうとした事が合ったんですよ。」
おおう、そんな事も合ったな。
確か、……科学の授業だったっけ。
普段は教室で授業をするのだが、その日だけ。科学担当の先生が学校を休んだ。
お年を召したお爺さん教師で。
何でもぎっくり腰をヤッたとか……。
なら、私も授業を休んでも文句言われないかとその時、教室で寝ようとした。
代わりの先生が科学室で自習にすると、
言ってたから居なくても別に大丈夫だと思った。
「私、その移動授業の時、教室に忘れ物をしてしまって教室に戻ったのですが、鍵が閉まっててどうしようかと思ってました。休み時間も終わる手前でしたので、職員室まで鍵を取りに行こうにも時間がなくて困ってました。
すると、サヨが中から鍵を開けてくれました。」
出たよ。
これぞ、自分私情もっとも、
不可解な『小夜、教室に閉じ込められ事件』
何がどうなったら自分だけが閉じ込められる事になったのか、全く分からない事件。
メガネの坊やか、名探偵の孫を連れてきて欲しい事件だ。
「ええ!?サヨちゃん閉じ込められてたの?何で?」
「最後に鍵を閉めた子が中に人がいるのを確認せずに閉めたとかで……」
"真実はいつも一つ"というセリフの前に事件が解決してしまった。
「私、ビックリしてしまいました。誰もいない筈の教室の鍵が一人でに空きましたから。」
別に白い服を着た長髪の女性は出てこない。
出てきたら真っ先に私が逃げ出す。
その後の結末は至って簡単。
鍵をガチャガチャする音が気になって私が開けた。マリアが恐る恐る入ってきてびっくりした顔をして「何しているの?」と聞いてきた。
確かその時の回答は、「移動が面倒だから寝る」と言ったっけ。
その時、丁度チャイムが鳴ってしまった。
慌てるマリアが取りに来た忘れ物を机から出した後、私の手を取って科学室へ急行した。
授業には無事間に合ったが、私はその時間夢の中へとぐっすりだった。
「へぇ、サヨちゃんとそんな事が……」
「はい、それがきっかけで友達になりました。といっても、私の一方的でしたね初めは。」
真理亜が苦笑いしたようや笑い方をする。
それもそうだ。本当にマリアの方からばっかり私に話し掛けてきたのだから。
その日(事件)以降、休憩時間毎にマリアが話し掛けて来た。それとない当たり障りのない会話をしている内に自然と仲良くなった。
人間とは不思議なもんだ。
何度も言葉を交わすと自然に親密になって行くのだから。
「サヨが引っ越してから初めて出来た友達です。サヨがいれば、私は大変な事でも乗り越えるて行っちゃいます。
何かあれば、サヨが助けてくれますから。」
「マリ……。」
私はマリがわざわざ他所の県の高校に入った理由を聞いていない。他人の事情にズケズケと入って行けるほど私は出来た人間じゃない。
でも、そんな些細な物は別にどうでも良い。
マリが選んだ事がこうして私達を繋ぐ縁になったのだから。
「あ、ナナミン先輩もですよ?私、初めて話した人にここまで会話出来たことないんです。
できれば、……これからもこうしてお話したいです。」
「ふふっ!ありがとう、まりちゃん!私も
もっとまりちゃんと話したいな。もちろんサヨちゃんもだよ?」
「〜っ、ナナミーン!!マーリー!!」
我慢出来ずにサヨがベッドからダイブした。
「きゃっ!もう、サヨ!!」
「うっ。サヨちゃんったら。」
幸いベッドの高さもそれほどなく並んで並べた敷布団がクッションになったためケガはしていないが、サヨが二人を下にして二人の頬に頬擦りをする。
真理亜が怒る一方で、恵は嬉しそうにそのハグ?を受け止めた。
恋バナから始まった会話は、それぞれの持つ話題に移り変わり夜が更けて行く。
大朏に貰った紫色の蝶のペンダントが窓際のネックレス掛けに飾られてある。
仲良くする三人の様子を見守るように光が優しく揺らめいていた。
次回から第三部開始です。
お楽しみに。