第20話 桜さんの推理
あてがわれた客間に入り、一人になった桜は、あぐらをかいて腕を組んだ。
(玄蔵さんたちの言う通りの状況が本当ならば、
あの一件がおひいさまを狙った『暗殺計画』と考えられるわね……)
冷や汗が背筋を伝う。
そう仮定するならば、下手に生きていることが割れてすぐに都へ戻るのは、自ら敵の懐へ飛び込むようなものだ。
(だけど、一体『誰』が……?中天尊…、帝に次ぐ絶大な権威を持つ五大貴族の姫を害するなど、
並の勢力にできるはずがない。……やるとすれば、同じ五大貴族か?)
頭の中で、中天州を統べる血脈を指折り数える。
木の『青柳』、火の『焔宮』、土の『磐座』、
金の『鏡宮』、そして水の『霞条』。
(何のためにそんな嶮を侵すのか、理由はわからない。
けれど力的に見れば、霞条以外の四大貴族のいずれかが関与していると見るのが自然か……?)
思考が深みにはまるにつれ、桜は深いため息をついた。
(……やっぱり、都を出る前に『景にいさま』と話をしておくべきだったかしら……)
龍胆院清顕検非違使尉。
正義感と優れた洞察力を持つ彼がいれば、何か手掛かりを掴めていたかもしれない。
八雲へ赴いているという彼が、この暗殺計画の臭いを嗅ぎ取って動いていることを願うばかりだった。
そこまで考えて、ふと桜は思考を中断し、自分が座っている部屋を見回した。
畳は青々として清々しく、柱も太く立派で、防音もしっかりしている。
申し分のない快適な個室だ。
(……っていうか、何なのこのお屋敷? 辺境の村の武術道場って言ってたけど、
敷地も道場もやけにデカいし、客人にこんな立派な個室を用意できるなんて……)
緊迫した推理から急に思考が脱線し、桜は首をひねる。
(『開拓失敗地』だったはずの澄波自体も街みたいに発展してるし……
玄蔵さんたちって、本当にただの『道場主』なのかしら……?)
辺境らしからぬ謎の状況に、桜は暗殺計画とはまた別の意味で首をかしげるのだった。




