第17話 多分…不審者
「蒼太……ちょっとやり過ぎなんじゃないの? 今、ガツンってすごい鈍い音がしたけど?」
倒れている女性のぐったりとした姿を見下ろしながら、鈴がジト目で脇腹をツンツン突く。
蒼太気まずそうに目線を泳がせ、慌てて両手をぶんぶんと振った。
「えぇッ!? ちゃんと手加減したよ! トンッて! トンッて首筋を叩いたんだってば!」
「あんたの『トンッ』は一般人の感覚からしたら『ガツンッ』だからねぇ……。
ねえ、生きてる? この人。……はぁ、やっぱりあたしがやれば良かったかしら」
「ちゃんと……手加減はしたよ……したんだよ…」
シュンとする蒼太を横目に、鈴はかがみ込んで倒れた女性の口元に手をかざした。
微かに温かい息が指先にかかる。
「ふぅ、良かった。生きてるわね」
「まぁ、声掛けてから腕が剣に伸びる反応が意外に速かったからね、このお姉さん。
それで焦っちゃったんでしょ?」
「ギクッ!」
「はーい、まだまだ修業が足りませーん」
胸を撫で下ろした鈴は、女性の腰元に差されていた刀に目を留めた。
「とりあえず、物騒だから武器は預かっておきましょっ。
どれどれ~、おぉ? 直刀だ。めっずらしい~」
スッと抜身にしてみる鈴。鈍く光る刃を検分するよう細部まで眺め、うーんと首をひねった。
「うーん、でもなまくらね。禍つと戦ったような刃こぼれの跡もあるけど、
こんな刀で禍つと戦うのは大変そうだわね~。やっぱり女は黙って『澄波刀』ね!」
「てか、ここって『澄波刀』しかないじゃん…」
「じゃあ、道場まで連れていきましょ。蒼太くん?今度は優しく抱えてね」
「むぅ、結局、俺が運ぶのね……」
溜息をつきながら女性を抱え上げようとする蒼太に、鈴がズビシッと指を突きつける。
「変なところ触っちゃダメだからね!?」
「なっ――!?」
「う、うるさいなぁ、もぉ……わかってる……わかってるよ……!」
変な言いがかりに顔を赤くしながら、蒼太は慎重に女性を抱え上げた。
「ふふ、顔が真っ赤よ、うぶねぇ」
◇
蒼武館へたどり着くと、居間でくつろいでいた玄蔵が目を丸くして立ち上がった。
「おいおい!蒼くんに、鈴ちゃん、その女の人どうしたの!?」
蒼太は抱えた女性を落とさないよう気をつけながら、少し首をかしげて答えた。
「んー、わかんないけど……多分…不審者……かな?」




