第13話 調査報告
中天京の絢爛さとはかけ離れた、静まり返った街道の果て。
五大貴族・霞条家承柱の儀一行から、八雲出立後の定期連絡が途絶えたとの報を受け、
検非違使から依頼された八雲の祓い屋、通称、八雲衆の調査隊が現地へと派遣されていた。
「まったく、検非違使の奴らめ。
自分たちは街でぬくぬくお高くとまっておいて、厄介事は全部こっちに丸投げかよ」
「文句を言うな。仕事は仕事だ」
不満を漏らしながら現場に踏み込んだ八雲衆の男たちは、目の前に広がる光景に息を飲んだ。
そこはまさに惨劇の跡だった。
荒れ果てた街道には、凄惨に破壊された遺体があちこちに転がっている。
禍つ(まがつ)によって喰い荒らされた傷痕は生々しく、鼻をつく血の匂いが漂っていた。
「ひでぇ有様だな……。運悪く『ワタリ』の直撃でも喰らったか?」
「規模はそう大きくなさそうだが…時期外れだから…か?」
「時期外れ…異常現象ってやつか?チッ、最近は『禍つ憑き』と言い異常な事ばっかり起きやがる…」
現場の凄まじさに舌を巻くなか、隊の一人が少し離れた藪の奥へ足を進めた。
「おい、童楽。そっちはどうだ?」
「うるせえ、童楽って呼ぶんじゃねぇって言ってるだろうが……!」
「へいへい……黄雅さんよ。そちらには何かありましたかぁ?」
舌打ちをしながら振り返った童楽と呼ばれた青年、黄雅は泥と血に塗れた茂みの中で、
無残に大破した車体を見つけ出していた。
木枠には、はっきりと霞条家の家紋が刻まれている。
「……霞条の紋だ。馬車は完全に潰れてるな」
黄雅は車内の残骸や周囲の草むらを注意深く調べたが、目指す人物の姿はどこにもなかった。
「お姫様の遺体は見当たらねぇな。
だが……この有様じゃ、まず助かっちゃいねぇだろうよ。
可哀想にな、聞けばまだ十五の子供だってのに……
ガキは笑っててなんぼだろうがよ……」
ぽつりと呟き、黄雅は哀悼を込めて静かに目を伏せた。
これだけの禍つに襲われ、馬車ごと破壊されて逃げ切れるはずがない。
遺体がないのも、禍つに跡形もなく呑み込まれたからだと考えるのが当然だった。
八雲衆の面々は、散らばっていた護衛たちの遺体を静かに弔うと、重い足取りで現地をあとにした。
後日、八雲衆から検非違使へと提出された調査報告書には、短い事実だけが淡々と記されていた。
——『霞条家承柱の儀一行は時期外れの小規模ワタリの直撃により壊滅したと推測される。
霞条紫苑を含む生存者は、なし』




