第三十八話「四年後」
あれから、四年の月日が流れた。
四年前のことは、今でも覚えている。
灰喰らい。
灰の壁。
そして――父さんが何かを知っていたこと。
あの日から、俺は何度も父さんに聞いた。
灰喰らいは何なのか。
灰魔法とは何なのか。
どうして俺は灰魔法を使えるのか。
でも、父さんはほとんど何も教えてくれなかった。
「いつか話す」
いつも、そう言うだけだった。
だから俺は、自分で調べることにした。
本を読んだ。
魔法を練習した。
そしてもう一つ。
剣術も習い始めた。
「もっと腰を落とせ」
「こう?」
「そうだ。だが、腕に力を入れすぎるな」
父さんの声が飛んでくる。
俺は両手で木剣を握り直した。
目の前には、父さんがいる。
同じく木剣を構えている。
「次は俺からいくぞ」
「うん」
一歩。
父さんが踏み込んだ。
「っ!」
木剣が振り下ろされる。
俺は横へ避ける。
地面を蹴って距離を取った。
「悪くない」
「本当?」
「だが、避けた後が遅い」
「……分かった」
父さんが木剣を構え直す。
「もう一度」
「うん」
今度は俺から踏み込む。
右。
左。
そして、斜めから振り下ろす。
カンッ!
父さんの木剣に受け止められた。
「まだだ」
押し返される。
俺は一歩下がる。
「焦るな。相手の動きを見ろ」
「分かった」
もう一度、構える。
四年前とは違う。
俺はもう、木の棒を振り回して遊んでいた頃の子供じゃない。
剣術も、魔法も。
少しずつだけど、できることが増えている。
「レイ!」
聞き慣れた声がした。
振り返ると、セナがこちらへ歩いてきていた。
「また剣の練習?」
「うん」
「私もやる」
「セナ、今日は魔法の練習じゃなかった?」
「それが終わったから来たの」
セナが笑う。
四年前より背も伸びた。
俺たちは今でも、一緒にいる。
遊ぶこともある。
魔法の練習をすることもある。
そして最近は、こうして剣術の練習もするようになった。
「じゃあ、次はセナだ」
父さんが言う。
「はい!」
セナが木剣を握る。
俺は少し離れたところから二人を見る。
そんな毎日が続いていた。
けれど、俺の中には四年前からずっと消えない疑問がある。
灰喰らい。
あいつは、あの日以来一度も姿を現していない。
父さんも、何も話してくれない。
だから俺は、灰魔法について調べ続けている。
灰を出す。
集める。
形を変える。
固める。
そして、あの日のように壁を作る。
ただ――まだ分からない。
どうして俺だけが灰魔法を使えるのか。
どうして灰喰らいは俺の灰に反応したのか。
そして、父さんは何を知っているのか。
俺は手のひらを開いた。
小さな灰が集まる。
四年前よりも、ずっと簡単に。
「……いつか分かる」
そう呟いて、俺は灰を消した。
今はまだ、何も分からない。
俺は木剣を握り直した。
「レイ、次はお前だ」
父さんが呼ぶ。
「分かった」
俺は再び構えた。
そして、父さんに向かって踏み込んだ。




