↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
灰の魔法使い  作者: みつ
第一章「灰と森」
PR
32/39

三十二話「森の異変」

次の日。

朝食を食べ終えた俺は、窓の外を眺めていた。

昨日の夜、灰魔法を使ったときのことが頭から離れない。

風がないのに、灰が森の方へ動いた。

しかも、一度だけじゃない。

……やっぱり、何かある。

「レイ、どうしたの?」

母さんが声をかけてきた。

「森、見てた」

「森?」

「うん。あそこ、何かあるのかなって」

母さんは窓の外を見た。

「さあ……。森には昔から不思議なことがあるって聞くけれど」

「不思議なこと?」

「ええ。でも、詳しいことは知らないわ」

……昔から、か。

ますます気になる。

「どうして?」

「森の奥はあまり人が入らないの。危ない場所もあるからね」

「父さんも?」

「エドは仕事で近くまで行くことはあるけれど、奥までは入らないわ」

なるほど。

父さんでも森の奥には入らないのか。

それなら、子供の俺が簡単に行ける場所じゃない。

……分かってる。

分かってるけど、気になるものは気になる。

「レイ、今日はセナちゃんと遊ぶの?」

「うん!」

「それなら、帰りが遅くならないようにね」

「はーい!」

俺は家を出た。

村の広場では、すでにセナが待っていた。

「レイ、遅い!」

「ごめんごめん!」

「今日は何して遊ぶ?」

「うーん……」

いつもなら、すぐに遊びを決めるところだ。

でも今日は、どうしても森のことが気になっていた。

「……森の近くに行かない?」

「森?」

セナは首を傾げた。

「どうして?」

「ちょっと気になることがあって」

「危なくない?」

「森の中には入らないよ。入口の近くまで」

セナは少し考えたあと、頷いた。

「じゃあ、入口までね! 奥には行かないよ!」

「分かってるって」

俺たちは並んで森へ向かった。

近づくにつれて、村の声が少しずつ遠くなっていく。

木々の間を風が通り抜け、葉がかすかに揺れた。

見た目はいつもと変わらない。

けれど、森の入口に着いた瞬間――。

指先が、じんわりと熱くなった。

「……来た」

「何が?」

「いや、なんでもない」

俺は手のひらを見た。

灰魔法が反応している。

まだ灰は出していないのに、森に近づいただけで魔力が動いているような感覚があった。

そのとき、森の奥から音が聞こえた。

パキッ。

小枝が折れるような音。

俺とセナは同時に顔を上げた。

「……今の音、何?」

セナが小さな声で尋ねる。

「分からない」

俺は森を見つめた。

木々の向こうに、何かがいる。

そんな気がした。

だが、姿は見えない。

「レイ、帰ろう?」

セナが俺の服の裾をつかんだ。

確かに、ここにいるのは少し怖い。

俺は頷いた。

「うん。今日は帰ろう」

二人で振り返ろうとした、その瞬間。

森の奥から、灰色の小さな粒が一つだけ飛んできた。

それは俺たちの目の前を通り過ぎ、地面に落ちた。

「……灰?」

俺は思わず足を止めた。

ただの灰に見える。

けれど、普通の灰とは違う気がした。

指先の熱が、さらに強くなる。

そして、頭の中に声が響いた。

『……見つけた』

「……え?」

俺は森を振り返った。

誰もいない。

セナが不安そうに俺を見上げている。

「レイ? どうしたの?」

「……いや」

俺は地面に落ちた灰を見つめた。

もう、そこには何も残っていなかった。

けれど、確かに聞こえた。

あの声は――。

一体、誰のものだったんだ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。