三十話「反応」
「……灰魔法?」
父さんの声が聞こえた。
俺は振り返る。
「うん。灰魔法だけど……」
父さんは俺の手を見つめていた。さっきまで浮かんでいた灰は、もう消えている。
「レイ、それは誰に教わったんだ?」
「え?」
誰に教わった?
いや、そもそも教わってない。
「誰にも。最初から使えたんだ」
正確には、転生するときに少女からもらった魔法だけど、それを説明するわけにもいかない。
父さんは少し黙っていた。
「……そうか」
それだけ言うと、俺の頭を優しく撫でた。
「父さん、灰魔法って何なの?」
聞いてみる。
父さんはすぐには答えなかった。
「……俺も、詳しく知っているわけじゃない」
「そうなの?」
「ああ。ただ、普通の魔法とは違うらしい」
……普通の魔法とは違う、か。
あの少女も言っていた。
灰魔法は、この世界で最も恐れられている魔法だと。
最初は大げさだと思っていた。
何しろ、今の俺にできるのは小さな灰を出すことくらいだ。
でも、父さんの反応を見る限り、ただ珍しいだけの魔法ではないのかもしれない。
もしかして、灰魔法って禁忌に近いものなのか?
だとしたら、むやみに人前で使わないほうがいいのかもしれない。
俺は自分の手のひらを見つめた。
小さな灰が、ふわりと浮かぶ。
……こいつ、いったい何なんだ?
「じゃあ、どうやったら上手く使える?」
俺は気になったことを聞いてみた。
父さんは少し考えてから答えた。
「まずは、自分の魔力を感じることだ。どんな魔法でも、そこは変わらないと思う」
「分かった」
父さんは俺の頭を優しく撫でた。
「無理はするなよ。魔法は便利だが、使い方を間違えれば危ないこともある」
「うん」
……使い方を間違えれば、か。
普通の魔法にも言えることなのかもしれない。
それでも、父さんの言葉が妙に引っかかった。
灰魔法は、本当にただの魔法なのだろうか。
「レイー!」
遠くからセナの声がした。
「遊ぼう!」
俺は声のした方へ走り出した。
灰魔法のことは、まだ分からない。
でも、いつか必ず知ってやる。
この魔法がなぜ恐れられているのか。
そして――なぜ、俺に与えられたのか。




