二十九話「魔法の練習」
次の日。
俺は父さんに魔法を教えてもらうことにした。
「父さん」
「ん?」
「魔法、教えて」
父さんは少し驚いた顔をした。
「魔法を?」
「うん。もっと使えるようになりたい」
「分かった。じゃあ、基本から教えるか」
俺たちは家の外に出た。
少し開けた場所に立つ。
父さんが俺の前に手を出した。
「魔法を使うには、まず魔力を集める」
「魔力を?」
「そうだ。そして、使いたい魔法を思い浮かべる」
父さんの手に、小さな光が集まっていく。
「火なら、火を思い浮かべる」
光が少しずつ形を変えていく。
そして――。
ポッ。
小さな炎が生まれた。
「こういうことだ」
「なるほど」
思ったより単純だ。
魔力を集めて、使いたい魔法を思い浮かべる。
「じゃあ、やってみろ」
俺は手を前に出した。
「魔力を集めて……」
目を閉じる。
「火を思い浮かべる」
頭の中に炎を思い浮かべる。
すると、手のひらが少し温かくなった。
「……」
もう少し魔力を集める。
そして――。
「火」
ボッ。
小さな炎が指先に現れた。
「……出た」
「おお」
父さんが笑う。
「初めてにしては上出来だ」
「やった!」
俺は思わず笑った。
魔法が使えた。
しかも、ちゃんと自分の意思で。
「もう一回やってみる」
「いいぞ」
何度か練習する。
まだ小さな火しか出せないが、少しずつ感覚が分かってきた。
魔力を集める。
使いたい魔法を思い浮かべる。
そして、魔法を使う。
……あれ?
俺はふと手を止めた。
このやり方。
どこかでやったことがある。
「……」
灰魔法だ。
最初に灰が出たとき。
俺は何をしていた?
魔力を集めようとしたわけじゃない。
灰を出そうと思ったわけでもない。
ただ――。
ずっと灰魔法について考えていた。
灰はどうやって使うんだ。
どうやったら出るんだ。
一体どんな魔法なんだ。
そんなことをずっと考えていた。
「……もしかして」
俺は手を見る。
「灰魔法が出たとき、俺は無意識に灰のことを思ってたんじゃないか?」
だから、出た。
意識して魔力を集めたわけでもない。
ただ、頭の中で灰を思い浮かべていた。
それに魔力が反応したんだ。
「……なるほど」
少しだけ、灰魔法の使い方が分かった気がする。
俺はもう一度、手を前に出す。
今度は意識して灰を思い浮かべる。
灰。
灰。
灰魔法。
すると――。
指先に、小さな灰が浮かんだ。
「……出た」
やっぱりだ。
少なくとも、前よりは自分の意思で出せる。
けれど――。
灰はふわりと浮かんだあと、ゆっくりと森の方へ向かおうとした。
「……またか」
俺は森を見る。
すると、後ろから父さんの声がした。
「……灰魔法?」




