二十八話「繋がり」
あれから、北から来た商人のことが少し気になっていた。
魔力石が手に入りにくくなっている。
それは前に村へ来た女性も言っていたことだった。
もしかしたら北で何か起こっているのかもしれない。
……まあ、今の俺には分からないけど。
「レイ!」
「ん?」
振り返ると、セナが木の棒を持って立っていた。
「何ぼーっとしてるの?」
「ちょっと考え事」
「また森のこと?」
「……まあね」
セナは森を見る。
「森、気になるの?」
「うん。前に変なのを見たから」
「変なの?」
「灰みたいな……人?」
言いながら、自分でもよく分からなくなる。
あれは本当に人だったのか。
それとも、別の何かなのか。
「まあいいや。それより――」
セナが木の棒を構える。
「今日こそ勝つからね!」
「またそれ?」
「今度は本気!」
「俺も本気だけど?」
俺も木の棒を構える。
最近はセナとこうして遊ぶことが増えた。
最初はただ棒を振り回していただけだったが、今では相手の動きを見て避けたり、攻撃を受け止めたりするくらいにはなっている。
「いくよ!」
セナが走ってくる。
「よっ!」
俺は横に避ける。
そのまま後ろに回ろうとした。
「そこ!」
セナが振り返る。
「おっと」
木の棒がぶつかる。
カンッ。
「やるじゃん」
「レイもね!」
何度も棒をぶつけ合う。
カンッ。
カンッ。
「まだまだ!」
セナが大きく振りかぶる。
俺は一歩下がって避け、そのままセナの棒を軽く叩いた。
「はい、俺の勝ち」
「えー! 今のなし!」
「なんでだよ」
「もう一回!」
「また?」
「もう一回!」
……元気だな。
俺たちはまた木の棒を構えた。
しばらく遊んだあと、俺は手のひらを見る。
「そういえば……」
最近、灰魔法も少しだけ変わってきた。
前より灰を出せる回数が増えている。
ただ、まだ自分の思い通りにはならない。
出るときもあれば、出ないときもある。
「……」
俺は手を前に出す。
少しだけ意識を集中する。
すると――。
指先に、小さな灰が浮かんだ。
「おっ」
灰はゆっくりと宙を漂う。
前より少し安定している。
「レイ、また魔法?」
「うん」
「すごいね」
「まだ全然だけど」
灰を見つめる。
すると、その灰がほんの少しだけ動いた。
俺の意思とは関係なく――。
森の方へ。
「……え?」
灰はすぐに消えた。
「どうしたの?」
「いや……」
俺は森を見る。
前にも、灰が森の方へ反応したことがあった。
あのときは気のせいだと思っていた。
でも、今回も同じだ。
「……なんなんだろうな」
「何が?」
「灰魔法」
俺は手を見る。
この魔法は、まだ俺の知らないことばかりだ。
灰喰らい。
森。
そして、北の魔力石。
全部が関係しているのかもしれない。
でも、今はまだ何も分からない。
「レイ、帰ろう!」
セナが先に歩き出す。
「うん」
俺も後を追う。
そのとき――。
森の方から、風が吹いた。
「……ん?」
俺は足を止める。
なんだ?
今、何か匂った気がする。
「……灰?」
俺は首を傾げる。
なんだそれ。
灰の匂いなんて、分かるわけないだろ。
「気のせいか」
そう言って、俺はセナの後を追った。




