二十七話「北から来た商人」
それから、しばらくはいつも通りの日々が続いていた。
セナと遊んだり。
父さんの仕事を見たり。
母さんの魔法を見たり。
そんなある日のことだった。
村の入口に、何台かの馬車が止まっていた。
「誰か来たの?」
俺が聞くと、父さんが馬車の方を見ながら答えた。
「商人だろうな」
村には、たまに商人がやって来る。
食料や道具、それに村では手に入りにくい物を売りに来るのだ。
俺たちは少し離れたところから、商人たちの様子を見ていた。
「今回は北の方から来たんだ」
商人の一人が村人に話している。
「北?」
その言葉を聞いて、俺はふと思い出した。
そういえば――。
前にも、北から来た人がいた。
魔力石を持ってきた女性。
あの時、北では魔力石が手に入りにくくなっていると言っていた。
「……」
あれから、しばらく経っている。
まだ続いているのか?
「どうした、レイ?」
「ううん、なんでもない」
俺は商人たちの話に耳を傾ける。
「魔力石は持ってきたのか?」
父さんが尋ねた。
「それがな……」
商人は少し困ったような顔をした。
「今回は、ほとんど持ってこられなかったんだ」
「そうなのか?」
父さんが驚いたように聞き返す。
「ああ。北の方じゃ、最近かなり手に入りにくくなってるみたいでな」
「魔力石ってそんなに必要なの?」
俺が尋ねる。
「ああ。魔力石は色々なところで使われるからな」
「色々?」
「例えば、村の明かりだったり、魔道具を動かしたりするのにも使う。魔法を使うために使うこともあるな」
「そんなに?」
俺は少し驚いた。
「そうさ。特に魔力石が手に入りにくい場所じゃ、なくなるとかなり困るだろうな」
「へえ……」
俺は魔力石について考えた。
魔力石は、ただ魔法に使うだけのものだと思っていた。
でも、俺が思っていたよりも、ずっと身近なものなのかもしれない。




