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灰の魔法使い  作者: みつ
第一章「灰と森」
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三話「初めての魔法」

あれから、俺は毎日のように魔法の練習をしていた。

といっても、やっていることは単純だ。

「出ろ」

出ない。

次の日。

「出ろ」

出ない。

さらに次の日。

「……出ろ」

出ない。

これを繰り返してる。

「…………」

俺は思った。

おれ魔法の才能ないんじゃないか?

いや、もしくは詠唱とか魔法陣が必要とか?

いやでも父さんは無詠唱な上、魔法陣らしきものもなかった。

「んー」

わからん。

とりあえずもう一回やってみよう。

手を前に出す。

「……出ろ」

何も起きない。

「……出ろ」

やっぱり何も起きない。

指先に力を込める。

「出ろ!」

何も出ない。

「…今日も無理か」

俺は自分の手を見つめた。

おかしい。

父さんは簡単そうに魔法を使っていた。

なのに、俺は何度やっても成功しない。

そもそも魔法って、どうやって使うんだ?

父さんが使っているところを思い出す。

父さんは、火を出すときに迷っていなかった。

手を上げて、魔力を集めて、火を出す。

たったそれだけ。

なら、俺も同じようにやればいい。

もう一度、手を前に出す。

目を閉じる。

魔力を集める。

……魔力って、どこにあるんだ?

「…………」

分からない。

そもそも、魔力を感じたことすらない。

「これで本当に魔法が使えるのか?」

そう思った、その瞬間だった。

指先が――ほんの少しだけ、熱くなった。

「……ん?」

目を開ける。

何もない。

気のせいか?

俺はもう一度、指に意識を集中させた。

さっきまで何も感じなかったのに。

指先だけ、じんわりと熱い。

これは……もしかして。

魔力か?

すると――

指先から、小さな灰色の粒が一つだけ浮かび上がった。

出た!!

「あぅ!あー!」

指を近づける。

「よし、記念として取っておこう」

そう思って、

灰に触れた瞬間――

一瞬だけ知らない場所が頭に浮かぶ。

「…今の何?」

「あ、あう?」

なんだ今の?

いや誰だ。

あの少女か?

いや違う。

男性だった。

顔は見えなかった。

ただ、後ろ姿だけが見えた。

何かを見ている。

その先には――

赤い空が広がっていた。

「……あぅ?」

もう一度、灰を見る。

さっきの景色は、もうどこにもなかった。

もう一度見れるか?

また、さっきと同じようにする。

何も出ない。

「なんでだ?」

何度やっても、灰は出てこない。

さっきは確かに出た。

しかも、触れた瞬間、変な景色まで見えた。

「…もう一度」

全神経を指に集中させる。

「出ろー」

「あうー」

出ない。

なんでだ。

…今日はもう無理か。

そう思って手をおろした、その瞬間。

指先にほんの少しだけ灰が浮かんだ。

「…え?」

ほんの一瞬だった。

今回は、何の景色も見えなかった。

灰はすぐに消えた。

俺は自分の指を見る。

……絶対に出たよな。

もしかして。

灰魔法は自分の思うタイミングで出せないのか?

…だとしたら不便すぎる。

それから俺は何度も練習した。

それから俺は劇的に成長して、

自分のタイミングで出せるようになったーー

というわけではなかった。

結果はほとんど同じだった。

出たり。

出なかったり。

出る量も毎回違う。

それに、出たとしても、あの景色を見ることはできなかった。

魔法ってもっとこう……

「出ろ!」

って言ったら、

思い通り出るものじゃないの?

「うぅ……」

一体この魔法のどこが恐ろしいのだろうか。


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