二十五話「森の前で」
森の奥から聞こえた音。
俺は父さんの服を掴んだ。
「……なに……?」
「分からない。少し待ってろ」
父さんが森の中を見つめる。
俺もその方向を見る。
すると――
「エドー!」
突然、後ろから声が聞こえた。
「……ん?」
父さんが振り返る。
そこには、一人の男の人が立っていた。
父さんと同じくらいの年に見える。
「こんなところにいたのか」
「お前か。どうした?」
「ちょっと用事があってな。……ん?」
男の人が俺を見る。
「その子、レイか?」
「そうだ」
父さんが俺の頭に手を置く。
「もうこんなに大きくなったのか」
男の人が笑う。
すると、その後ろから――
「おとうさん、はやくー!」
小さな声が聞こえた。
「おっと、そうだった」
男の人が振り返る。
「こっちにおいで」
その人の後ろから、一人の女の子が出てきた。
俺と同じくらいの年に見える。
肩くらいまでの髪。
大きな目。
そして、少しだけ警戒したような顔。
「……」
女の子は俺を見る。
俺も女の子を見る。
……誰だ?
すると父さんが言った。
「この子は、俺の知り合いの娘だ」
「……?」
女の子が一歩近づいてくる。
「……レイ?」
「……う……ん」
「ほんとに?」
「う……ん」
女の子は俺の顔をじっと見る。
そして――
「ふふ」
笑った。
「ちっちゃい」
「……ち……い……」
俺は思わず言い返す。
すると女の子は少し驚いた顔をした。
「しゃべった!」
「レイ、最近少しずつ話せるようになってきたんだ」
父さんが笑う。
「へえー」
女の子が俺の前まで来る。
「わたし、セナ」
そう言って、女の子は自分の名前を名乗った。
「……せ……な……」
俺が名前を呼ぶと、セナは嬉しそうに笑った。
「そう!セナ!」




