二十四話「森の方へ」
次の日の朝。
俺は目を覚ました。
昨日の夜に見た灰のことを思い出す。
森の方へ動いていった灰。
あれは偶然だったのだろうか。
「……」
俺は窓の外を見る。
森は、昨日と変わらない。
木々が並んでいて、風で葉が揺れている。
……なのに、少し気になる。
「レイ、おはよう」
母さんが部屋に入ってくる。
「お……は……」
「ふふ、おはよう」
母さんが俺を抱き上げる。
「今日はどうする?」
「も……り」
「森?」
俺は窓の外を指差す。
「も……り、い……く」
「森に行きたいの?」
「う……ん」
母さんは少し困った顔をする。
「昨日も行ったばかりでしょう?」
……昨日というか、俺が気になっているのは灰のことなんだけどな。
でも、うまく説明できない。
「い……き……た……い」
「うーん……」
母さんが考える。
すると、父さんが部屋に入ってきた。
「どうした?」
「レイが森に行きたいんだって」
「森に?」
父さんが俺を見る。
「……うん」
「じゃあ、少しだけならいいぞ」
「ほ……ん……と?」
「ああ。でも、父さんから離れるなよ」
「う……ん!」
よし。
森に行ける。
俺たちは準備をして、家を出た。
村を抜けて、森へ向かう。
歩いている途中、俺は何度も指先を見る。
何も起きない。
灰も出ない。
……やっぱり昨日の夜のことは偶然だったのか?
森の入口が見えてきた。
「着いたぞ」
父さんが立ち止まる。
俺も森を見る。
その瞬間だった。
指先が――
少しだけ熱くなった。
「……!」
やっぱり。
灰魔法が反応している。
俺は森の奥を見る。
何かある。
でも、見えない。
「と……う……さん」
「ん?」
「も……り……」
「どうした?」
俺は森の奥を指差す。
「……あ……っち」
父さんが目を細める。
「何かいるのか?」
俺は答えられない。
ただ――
指先の熱が、少しずつ強くなっていく。
そして森の奥から。
「ザッ……」
小さな音が聞こえた。
父さんの表情が変わる。
「……レイ。こっちへ来い」
俺は父さんの隣へ移動する。
森の中。
木々の間で、何かが動いた。
「……」
また、あいつなのか?
そう思った瞬間。
一枚の灰色の葉が、木の陰からひらりと落ちてきた。




