二十一話「あの影」
家に帰ってからも、俺は森で見たものをずっと考えていた。
灰色の身体。
人間とは明らかに違う姿。
そして――頭の中に響いた声。
『……灰』
あれは何だったんだ?
そもそも、あいつは本当に俺に話しかけたのか?
それとも、灰魔法が何かを見せただけなのか。
「……うーん」
考えても分からない。
まだ情報が少なすぎる。
俺はベッドの上で手を眺める。
「……は……い」
小さく呟く。
すると、指先にほんの少しだけ灰が浮かんだ。
「お……」
出た。
最近は前より灰が出やすくなってきた。
でも――
「……」
灰を見つめる。
あの灰色の影を思い出す。
灰魔法が反応したのは、偶然じゃない気がする。
俺がそう考えていると。
「レイ?」
母さんの声が聞こえた。
「な……に?」
「どうしたの? 一人で何かしてたの?」
母さんが部屋に入ってくる。
「う……うん」
俺は慌てて灰を消す。
「今、何か言った?」
「な……なんでも……ない」
「そう?」
母さんは笑って、俺の頭を撫でる。
「変なの」
「へ……んじゃ……ない」
「ふふ、ごめんごめん」
母さんは楽しそうに笑った。
……危なかった。
灰魔法を使っていたところを見られるところだった。
いや。
別に隠す必要があるわけじゃない。
ただ、なんとなく。
この魔法については、自分でもまだよく分かっていない。
だから――
もう少しだけ、自分で調べてみたい。
俺はもう一度、自分の手を見る。
灰はもう消えている。
でも、あの影を見たときの感覚だけは残っていた。
灰魔法は、あいつを知っている。
……そんな気がする。
「……し……り……たい」
「何を?」
「……な……んでも……ない」
俺はそう言って、布団に潜った。
まだ分からないことだらけだ。
でも、いつか分かる。
たぶん――
その時が来れば。




