十八話「父さんの魔法」
次の日。
朝から父さんが家の外で何かをしていた。
気になって窓から覗いてみる。
「とう……さん?」
「ああ、レイ。起きたのか」
父さんの手には薪が何本かあった。
「今日は薪を割るんだ」
「ま……き?」
「そう。薪」
父さんが薪を地面に置く。
その隣には大きな斧があった。
「これを使う」
父さんが斧を持ち上げる。
……でかい。
俺だったら持つことすら無理そうだ。
父さんが薪の前に立つ。
そして――。
「……」
斧を振り下ろした。
パカッ。
薪が綺麗に二つに割れた。
「……すご」
思わず声が出た。
「はは、そうか?」
父さんが笑う。
でも、俺が驚いたのは斧じゃない。
今、斧を振る直前。
父さんの手に、ほんの少しだけ光が集まっていた。
「とうさん」
「ん?」
「いま……まほう?」
父さんが少し驚く。
「よく見てたな」
「うん」
「ちょっとだけ使ったんだ」
父さんが手を見せてくれる。
「身体に魔力を集めると、力を少し強くできる」
「ちから……」
「そう」
俺は父さんの手を見る。
魔法って、火を出したり水を出したりするだけじゃないのか。
身体を強くすることもできる。
「や……って」
「やってみたいのか?」
「うん」
父さんが笑う。
「じゃあ、手を出してみろ」
俺は手を前に出す。
父さんが俺の手を包む。
「まずは魔力を感じてみるんだ」
……魔力。
灰魔法を使ったときに感じた、あの感覚。
俺は目を閉じる。
集中する。
すると――。
ほんの少しだけ。
手の中が温かくなった。
「……あ」
「感じたか?」
「う……ん」
「すごいな」
父さんが笑う。
「もう魔力を感じられるのか」
……やっぱり少し早いらしい。
でも、これは嬉しい。
魔法をもっと知ることができる。
「もう一回」
「おう」
父さんがもう一度、俺の手を握る。
今度はさっきよりも分かる。
身体の中を何かが流れているような感じがする。
これが魔力。
灰魔法を使ったときとは少し違う。
普通の魔法にも、ちゃんと魔力があるんだ。
「どうだ?」
「……あったかい」
「そうか」
父さんは嬉しそうに笑った。
「レイは魔法が好きなんだな」
「うん」
俺は父さんの手を見る。
そして、自分の手を見る。
もっと知りたい。
もっと使ってみたい。
でも――。
俺には、灰魔法がある。
あの灰が何なのか。
森にいたものとどう関係しているのか。
まだ何も分からない。
「とうさん」
「ん?」
「まほう……いっぱい、ある?」
父さんが少し考える。
「いっぱいあるぞ」
「どんなの?」
「火、水、風、土。それ以外にも色々ある」
「すごい……」
「大きくなったら教えてやる」
「うん!」
俺は笑った。
魔法のことを知れば知るほど、この世界が面白くなっていく。
そしていつか――。
自分の灰魔法についても、ちゃんと知りたい。
父さんが薪を拾い上げる。
「さて、もう一仕事するか」
「がんばれ」
「お?」
父さんが笑った。
「今の言葉、ちゃんと言えたな」
「……えへへ」
俺も笑った。
少しずつだけど。
俺の世界は広がっている。




