316 「白猫はこれでよかったんだ」と自分に言い聞かせる
白猫を保護したのは、(大きな声で鳴いている子猫がいるなあ)と私が気づいたのがきっかけでした。
交通量の多い住宅街の、向かいの家の床下で子猫がずっと鳴いていて。
そのうち親猫が来るだろうと待っていたけど来ない。
翌日になって、(これはまずいのでは)と思ってお向かいの敷地の外から声をかけるけど出てこない。
三日目になって、何も手が付かないくらい心配になりました。
今助けずに子猫が衰弱死したり車に轢かれたりしたら、私一生後悔するわと思いました。
猫の保護活動をしている私のお店のお客さんに「すみませんが捕獲カゴを貸してもらえませんか」と電話をして、餌を入れて白猫が床下に入り込んでいる家の人に「カゴを置かせてください」とお願いしました。
その当時住んでいた住宅街は私の親世代ばかりで、声をかけた人全員が「猫は自由に歩き回る生き物なんだから、ほおっておけばいいのよ」と言われました。
あの時のもどかしい感じ、今も忘れません、
「今は猫を自由に外に出す時代ではないんです」と言っても「はあ?」みたいな感じでした。
結果、白猫はカゴに入り、病院で診察してもらい、うちの猫になりました。
ある日、当時の家の台所の掃き出し窓に、白猫そっくりな大人猫がはりついてうちの白猫を見ていました。白猫も窓に駆け寄ってにゃあにゃあ鳴いて。
(あ、これ、母親だ)と思いました。どうする? 親に返す? と二、三分悩みましたが、カーテンを閉めて白猫を抱き上げて別の部屋に移動しました。
ずーっとそれが忘れられませんでした。
今、十一歳になって健やかに暮らしている白猫を見るたびに、あの時親に返していたら今まで生きていなかっただろうと思っています。
白猫は懐かず甘えず隙あらば外へ逃げ出そうとする猫で、何度も脱走されて必死に探し回ったことも片手じゃ足りません。
ただひたすら窓の外を眺めている猫でした。
この子は本当に外が好きなんだ、私は余計なことをしたのかも、と何百回も思いました。
長生きすることだけが尊いのか、この子が好きなように生きるのが尊いのか。ずっと迷って悩みました。
そんな白猫もここ数年、やっと私にすり寄り、私の顔や手を舐め、抱っこしてよとゴロゴロ喉を鳴らしながら抱きついてくるようになりました。
白猫を抱っこしながら、あの時保護してよかったんだよね? 親に返さなくてよかったんだよね? 家の中で育てると決めてよかったんだよね? と昔の自分に問いかけつつ、今日も白猫を可愛がっています。
ちなみに、茶猫は生まれてすぐ兄弟ごと捨てられて保健所に入っていたので、人間の怖さも知らず外の世界も知りません。最初から私に懐き、外に出たがることもありません。
保健所にたくさんいた子猫の中で、やたら私にすり寄ってきた子です。
茶猫は何も知らないがゆえに幸せな人生を生きている猫です。




