39.愛刀ができあがりました
お待ちかねの金の日。
なお、この世界も1週間は7日で構成されていて、曜日も月火水木金土日だ。これはリョー兄ちゃんが日本でビックリしていたネタなので、自分が実現する以前にも地球に行ったか地球から来た人がいるのだろうとリョー兄ちゃんが考察していた。カレンダーの仕組みからして太陽暦そのまま適用らしい。まぁ、星が違うから1年の日数は違うんだが。新しく覚えなくて良いところがありがたいね。
そんなわけで、金の日。
エイダとドイトに、高額のため学生に託すわけにはいかんと学院から厳命を受けて同行することになったロベルトさんも一緒にレイン教授の個人所有の車に乗せられて、鍛冶屋に向かった。
レイン教授にはすっかり気に入られてしまったようで、今日の用事には全く関係者でないのに移動手段まで出してくれるサポートっぷりである。Aランク冒険者と同行ということでエイダもドイトも興奮気味だし、レイン教授も楽しそうに話し相手をしてくれているから、道中の車内は賑やかだった。
「親父っさん、久しぶりッス!」
店に着いて開口一番挨拶の声を上げたのは、レイン教授だった。うん、レイン教授もここがご贔屓だったんだな。
元気すぎる声を聞いてウンザリした顔で出てきた店主は、相変わらず髭面でずんぐりしたドワーフっぽいおっさんだ。俺の顔を見て、ひとつ頷いて店の奥にとって返した。
「おう、坊主。出来てるぞ。こっち来て試し斬りしてみろ」
呼ばれていそいそと向かうのが俺以外の冒険者3人というところが、らしいというかなんというか。
ロベルトさんは俺の後ろをついてくるようで、俺が動くのを待っていた。
先週もお邪魔した裏庭には、巻き藁に似たわら人形が立っていた。
心材は細いとはいえ木材のようだ。これを斬れるという自信があるのだろう。
そして、待ちかねたように押し付けられたのが、見た目はサーベルっぽい、刀だ。多重構造のためサーベルよりは厚い鎬に、刃側に自然に刃文が浮いている。だいぶ日本刀に近い剣だった。
「その波模様は構造上勝手に浮き出してくるもんだ」
「いえ、キレイな刃文が出てるなぁって思って見てました。焼き入れしてくださったんですね」
「全体的に柔らかくできたからな。刃の部分くらいは硬さ重視で打ってみたらこうなった。一本の剣が部分ごとに硬かったり柔らかかったり、正直変な剣だと思うがな。要望に沿ってはいるはずだ。ほら、試して見ろ」
まぁ、柔らかいと言っても基本鋼だから手で曲がるほど柔らかくはないんだけどな。
ほら、と促されたけど、物を斬る前に素振りで確認するため、いったん鞘に戻す。軽い木製の鞘に切羽でピッタリ嵌まっている作りも、日本刀に似ている。洋刀でも押さえ方は同じなんだなぁ、なんて思ったり。
せっかくなので、カッコ良くいってみましょうか。
鞘を腰帯に、ってのがないのでベルトで挟んで、腰位置から抜いてみて、長さにも問題ないことを確認。
うちの道場の流派ではやらないんだけどな。居合いって。できなくはない。一応男の子なので、カッコいいことは真似したい年頃もちゃんと経過しているのだ。
巻き藁に向かって半身に構え、柄を半ばで握って、左手親指で鯉口を切り。
見守る人々が俺の行動が見慣れないようで不思議そうな中、そっと目を閉じて整息。瞼を上げて切っ先の通り道を確認すれば、後は動くのみ。
「やっ!」
逆袈裟に走った切っ先が、そのまま右上前方を向く。まぁ、天は向かないよね、手首捻らないし。
いや、しかし、落ちないなぁ。押してみるか?
刀を翻して、そのまま峰側でトンと押してやる。と、ようやくズルッと上半分が滑り落ちていった。
切れ味スゴいな、この刃。ちょっと怖いかも。扱いに気をつけよう。
あとは、手元の滑り止めだな。表面がザラついた何かの革が巻かれているようだけど、素手で扱うとなると長時間向きではない。木綿あたり探して柄巻きするか。
「目釘は革の内側ですか?」
「おう。メンテナンスの時は革の張り替えだ」
「革の外から打ってもらうことはできますか? 自分で分解して掃除したいんですが」
「あ? 手に引っかかるぞ?」
「上に滑り止めに紐巻くので大丈夫です」
「革じゃダメか」
「手汗で滑りそうで」
グローブ使いません宣言にもなるけどな。
それで納得してくれたようで、店主が刀を受け取って工房に戻っていったので、俺もそれについていく。
庭では、ずり落ちた巻き藁を囲んでみんながワイワイ騒いでいた。新品の剣なら俺の刀でなくても同じ様にできるだろうにね。




