楽しい女子会 in 露天風呂
前回も書いたけど、楽しい女子会 in 露天風呂の始まりですよ、ホホホ。
そういえば女子会って何歳までいいのかしらね? 女子はいくつまで論争、あったなあ。というか、女子会があるなら男子会があってもいいと思うの。おじ様たちが楽しく飲んで食べて、あれ?普通の飲み会だわ。
などと変なところに気が行くほど、楽しくお酒は進んでおります。
下戸だから飲んでないだろうとかそういうのは野暮よー。雰囲気で酔えるプロ下戸なめんな!
黒姉さんの愚痴は結婚していない女性アルアルでもうすごく共感できた。
「一人で温泉予約してさ、連休に行くんだって楽しみにしてたのよ。そしたら後ろで小雀たちが『彼氏と海外なの♪』とか『彼氏と海辺のコテージなの』とか言い出してさ。それはいいのよ。幸せにしてくれればいいじゃない? なのに奴らは『連休なのに一人とか、ないわー』とかさ『温泉とか旅行とかに一人で行くなんて女として枯れてる』とか言うのよ」
「うわあ、なにそれ? ありえねー」
「でしょー? まあ温泉に1人旅とか、そんなことはもちろん会社では言わなかったんだけどね。『連休の予定とかあるんですかあ?』とかのんびり聞いてきやがるから、にっこり笑って『秘密』って答えたらさ、勝手に不倫旅行に行くことになってたわよ……」
「マジデスカ?」
「失礼よねえ。彼氏とデートとかだったらともかくなぜ不倫……」
「姉さん、さりげなくマウント取られてるじゃん」
「せっかくだからありがたくネタにして言いふらしたわよ」
さすがです、黒姉さん!
「おひとりさま焼肉好きーとかさ、汚いラーメン屋でもおいしければ並ぶよって女ってさ、なんでいちいち「一人でもどこでも行きますよ」って言うんだろうねえ。普通に行くよ、私」
「ああ、それ、なんかの番組でやってたけど、「えー、見えなーい」とか「意外!」って言われるのを待ってるんだって」
「そっちなんだ。私は「おしゃれなカフェとかバーとかしか行かないように見える美人の私でも一人で焼き肉するんですよ」アピールだと思ってた」
「あーー、すごいわかる。それもあるかも!」
「そりゃあざとくてもいいし、それで幸せになる人もいるわけだから技術の一つなんだけどさ、それができないからって見下されるのはなんか癪なのよねえ」
「うんうんうんうん!」
やばい、すげい楽しい!
こないだ黒さんと飲んだ時は会社の愚痴みたいな感じだったけど、今回は独身アラサー女の心の叫びみたいな感じになってきたよ。
まあ、私が死んだときはアラフォーだったんだけどさ……。
こんな感じでしばらく『一人アルアル』で盛り上がった。ここほんと異世界?って思うくらいのアルアルに爆笑が止まらない。男湯の三人に聞こえてるんじゃないかと思うけど、気にしないことにした。だって楽しいんだもん。
話題が尽きてきたころ、三回目のお酒とお茶を出した私は冷たいアイスを温泉で食べる至福を味わいながら呟いた。
「なんかさ、最近『おひとりさま』って言葉に悪意を感じるんだけども、被害妄想なのかしらねえ」
「ああ、それわかるわ」
黒姉さん、粋な仕草でくいっと新しいお酒を空けつつため息ついてます。
「一人で何かするとすぐに『おひとりさま』ってつけられるとなんか腹立つのよ。ちょっと前は『一人旅』だったのが『おひとりさまツアー』とか言われてびっくりしたわ」
「へー」
「まあ一人参加でツアー中にお友達を作るみたいなのもあるみたいなんだけどね。なんていうかさ、そんな単語だけを気にしてる自分は一人でいることに対して変なプライドを持っちゃってるのかなって思ったらすごく凹んだのよ」
ああ、なんかすごいわかる……。
っていうか、もう黒姉さんってホントは私の分身とか言わないよね? 自分の黒い部分が瘴気になっててそれを浄化するとか、自作自演だよ、うう。
「私も男を知らないわけじゃないんだけどねえ」
「姉さん彼氏いたのね」
「いない歴2年くらいかなあ」
「ちっ。私なんて結局いないままこっち来ちゃったぜ」
「……、なんかごめん」
分身疑惑はなくなったけど複雑な気持ちである。どうせ知らないよ、けっっっ。
今の私は黒姉さんより黒いぜ、と思いつつ、自棄アイスを頬張る私。うう、涙出た。大丈夫、物理的な涙だから。
「まあそれはそれとして」
それとするのかい!
「あれよ。なんというか、自分は望んで一人でいるし、特に不自由していないはずなのに、一人でいたら寂しいでしょうって言われると悔しいとか苛つくとか、もやっとするような気持ちになるのよね。別に気にすることはないんだって思っても、心の底でじたばたしてるみたいな感じ?」
あー……。
なんだろう、すごくわかる気がする。
置いて行かれたように焦りとか、自分がダメなんだという劣等感とか、そんなことわざわざいうなよって苛つきとか、相手がいていいなと嫉妬する気持ちとか、意味のない怒りとか、そんないろんなものがもみくちゃになってもやっとする感じだ。
「私、ここに来る前は長いこと一人で暮らしてたのね」
前世のことが川のせせらぎに乗って頭の中を回りだす。
39歳まで生きてきて、くだらないことで死んじゃったけど、それなりにいい人生だったと思う。
両親はいなくて、姉は結婚して別世帯。小さなアパート住まいだったけど、別に不自由はないし、会社もブラック気味だったけど家族経営でやってたのが大きくなった感じの雰囲気の良いとこで、収入もそこそこあり、仕事は毎日大変でも充実してた。対人関係は悪くなかったな。
でも男女の関係はなかったのよね。興味がなかったわけじゃないんだけど、そういう雰囲気になるのが苦手で、気づいたらもうすぐ40歳とかで。30代前半までは合コンとかお見合いとかも誘われたんだけど、それ過ぎたら婚活するとか自分で動かないと出会いなんてないからまあいいかと思ってた。一人でいるのが苦にならない性格なのよ。
だけど世の中はそういう人を見ると『どこかに欠落があるから相手ができない』と思う。もちろん全員じゃないけど、早く結婚して子供出来たら勝組みたいな風潮はいまだにあると思う。その分離婚率が高いとかそういうのは別として、パートナーがいない人は信用できないとまでいう人もいた。
そんなことがあるから、にやにやと近づいてきた人に「おひとりさまだねー」と言われると、揶揄されているようにしか思えない。別に気にしてないと答えると、強がっていると笑われるか悟ってるねと溜息吐かれるかなので適当に流すんだけども。
「なんだかいろいろと世知辛い世の中ねえ」
「いろんな人がいるというけど、全部を受け入れるのは大変難しいよね」
うんうん、と頷きあう私達。
「おひとり様ツアーにしても、一人焼肉にしても、需要があるから商品として成り立つわけで、それに対してもやっとした気持ちになるのはどうなんだろうって思うけどさ、それは理性が勝ってる時のセリフで、感情論としては下に見てるって気持ちになるのは今までの人生でそういうこじらせた気持ちをずっと抱えてたからなのかな」
私は新しくグレープフルーツジュースを出し、飲みながら呟いた。
「育ってきた環境ね。なんかすとんと来たわ」
黒姉さんも新しく頼んだスクリュードライバーを飲みながら頷く。しかし姉さん、さっきから強めな酒をちゃんぽんで飲んでいるのによく平気だな!
「というか、いいお酒を飲みながらもやっとしていたのを吐き出して、しかもそれを全部共感してもらったら満足した。ありがとね、メイちゃん」
「いやいやいや、それは私のセリフっすよ」
頭を下げてくれる黒姉さん。いたたまれない。
「こっち来ていろいろと悩むこと多いんだけど、なかなかこういう話ができる人いなくて」
「そうなの?」
「うん。一応聖女だから気を遣われて敬語だし、そもそも領主様の使用人以外の女の人にまだ会えてないし、ここに一緒に来たの領主息子トリオだし。なんというか、そろそろ気疲れして寝込むかなと思ってた」
寝込むまではいかないか。鋼とまではいかないが私はそんなに弱くない。寝込むような儚いレディだったらそもそもここにいないよね。
「領主の息子トリオと温泉旅行って!? なにそれ、詳しく!」
うおう、そこに食いついたか!
まあ、前世の私でもきっと食いつく、自分の話でなかったらメシウマ?
相手に悪意があるなら適度にスルーするけれど、姉さんならいいかと、ここに来た経緯を説明した。
「あらやだ、私が原因なのね」
ごめーん、と手を合わせる姉さん。あざといです。でも許す。
「温泉が噴き出してるところで襲ったのは私じゃないけど、私がここにいることでこの辺りの瘴気が活発になって、いい男を襲ってしまったんだったら恥ずかしいわ」
いい男なのか?
ま、まあ、カッちゃんとタッちゃんはそれなりにいいか。マー君には襲い掛からなかったな。マー君、まあまあだけどまあまあってのはそこそこってことか。しかしまあまあとかそこそことか私の形容酷いな。すまん、マー君。
「まあ、メイちゃんがたくさん楽しませてくれたから気が済んだし、もういいわ。浄化してくれる?」
黒姉さんは笑みを含む声で告げた。
読んでいただいてありがとうございます。
もっと書こうと思ったのですが、書いているうちに「リア充爆発しろ!」みたいになってきたのでやめました……。
ランドのネズミたちがチューしている絵柄は絶対に選ばない私の独り言です。




