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24時間は働けません

遅くなりました。よろしくお願いします

 ガタゴトと揺れる馬車の中で夕暮れを楽しむ。初めて見る異世界の夕焼け、特別な色なのかと思ったけど、実際は前の世界と変わらない赤で、同じようにとてもきれいだった。

 今日は色々疲れたから、ご飯食べたら寝たいなあ。

 そう思っていると、カチョさんから「食後は報告会です」と言われた。この国の人は夜中まで働くのか、ブラックだなあと思っていたら、なんだか話が微妙に合わない。

 そこで詳しく聞いてみたところ、1日が36時間あることが判明した。

 それも地域で違いがあり、王都とその周辺は昼が約24時間で夜が12時間、辺境となるこの辺りは逆に昼が12時間で夜が24時間だそうな。


「縁から世界の中心までおひさま馬車が進んでいくのでそうなっています」


 うん、ちょっと言葉だけだと難しいかな……。

 それでもなんとか『この世界は50円玉みたいな真ん中に穴がある平面で、太陽(おひさま馬車)は縁から真ん中の穴に行き、穴から裏側を回ってまた縁まで来て1周する』ってことはわかった。端まで言ったら落ちるのかと思ったけれど、そうではなくて単に裏側に回るんだそうな。

 辺境は裏側、つまり魔界に近いので夜が長いとのこと。

 なるほど、この世界は球ではないのね。さすが異世界。そういえば元の世界にも地球平面説ってあったけど、こちらは実際平面なのか。世界の真ん中とか見に行ってみたいなあ。


 まあそんなことはおいておいて。

 つまり、日が暮れても残りは24時間ほどあるので、ご飯タイムも2回あって、会議とか夜会とかもしちゃうらしい。

 そういえば朝起きたとき「すごい寝たなあ」と思ってたんだけど、実際に10時間以上寝ていたそうだ。通りですっきりしてると思った。最近は睡眠4時間がデフォだったからね。


「これから報告かあ」


 これからは朝起きて寝るまで24時間以上あるのね。辛そうだなあ。一日100時間ほしいとか言ってたこともあったけど、あれは休む時間が欲しいって意味だったしな。

 できれば明日にしてほしかったけど仕方ない。

 昨日は話を聞いただけだったからこちらからもいろいろ言いたいこともあるし、帰るまでに頭の中を整理しておかなくちゃね。






「というわけで出来上がった魔法石がこちらです」

 どよめきと溜息が同時に上がった。


 食後の報告会には領主様を始め多くの重鎮っぽいおじさんたちが集まった。

 場所は昨日の会議室とは違う部屋で、普段はこっちを使っていると聞いた。がっしりとした石造りの部屋で、大きなテーブルを囲む30人ほどの人々が私を見ている。昨日は10人いなかった。まあ急だったしねえ。

 それにしてもこの部屋、年齢層が高いわ。どこも高齢化が進んでいるのかねえ。


 報告会はまずカチョさんが小屋の瘴気を払った話をした。カチョさんがすごく褒めてくれたのでかなり照れた。

 続けて私の報告。黒さんと飲み会したことは伏せたけど、説得して浄化したと言ったら驚かれた。

 聖女の記録には「瘴気を払った」としかないそうで、具体的な記録は存在しないそうだ。

 なんか困ったなあ。聖書の伝記はあるって聞いたから参考に読もうと思ってたんだけど。確かに他の人が書いたら聖女讃頌になるよね。この私ですら褒め殺されてるし。


「しかしとてつもない大きさの魔法石だな」


 領主様が喉を鳴らす。

 食事の時に聞いたのだけど、この大きさの魔法石はこのお城を快適に100年動かせるだけの力があるそうだ。

 そうそう、昨日は気が付かなかったけれど、領主様の住まいはとても大きなお城だった。なんでも魔界と接している東の森の端にあり、王都を守る砦らしい。領主様は辺境伯で、実はとても偉い人なのだそうだ。見た目優しそうなおじさんなんだけど、すごい実力のある将軍様なのだとか。お子さんも多いそうなので、会うのが楽しみだ。

 お子さんたちのことはともかく、このお城を100年とか。すごいなあ。そりゃカチョさんが預かりたがるわけだわ。落とさなくてよかった。


 人々の目が魔法石に向いている。近くの村や町から来ている代表者もいるとのことで、どうやったらこれを手に入れることができるのか、みたいな顔をしている。

 ここにもいるのね、ブツヨーク神。


「で、その石はもちろんわしに」

「あげませんよ」

「えっ?」


 領主様、当然のように魔法石は自分がもらえるものだと思っていたようなので、食い気味に否定する。


「これは私の石です」

「ちょ!」

「作ったの私なんだから私の石ですよ。原材料あっても皆さん加工できないでしょ? しかも初めて作った品ですから、記念に大事にしまいます。何か問題でも?」

「問題大有りだ!」


 顔を真っ赤にした大きなおじさんがこちらにやってきて、魔法石をひったくろうとする。触れた瞬間、石がぴかっと光り、部屋全体に衝撃が起こった。直撃して吹っ飛ばされたおじさんは壁にたたきつけられて気絶する。何人か巻き添えを食らったようだ。


「あ、そうそう。私が許可した人以外の人が触るとバチッてなるみたいです。触らないでくださいね」


 対策くらいしてるよ、味方いないんだから。




 その後、私はいくつかの提案をし、了承してくれないのならば国を出ていくと言った。

 脅しじゃないよ、権利だよ。

 それに提案って言ってもこの程度だし。


 1. むやみやたらに瘴気を浄化させようとしないこと

 2. 魔法石を奪わないこと

 3. 魔法石が欲しいときはそれなりの対価を払うこと

 4. 生活の保障 衣食住と関連する権利

 5. 行動を制限しないこと

 6. 知識を提供すること


 そちらの勝手で呼び出されたんだから、こちらも勝手に条件をつけさせてもらった。そんなに厳しくつけたつもりはないけれど、渋い顔をしていたので嫌なんだろうな。

 1.2.3.は保証してもらわないと、聖女、こき使われて死んでしまうよ。だいたい、そこにいるだけである程度の浄化はできてるって話だから、普通に生活しているだけどこの近辺はきれいになっていくんだしね。それに魔法石が欲しいから浄化してこいとか、腹立たしい。

 私は空気清浄機でも魔法石製造機でもないので、労働に対する対価は受ける。

 聖女は無償の愛でみんなを救うものだとか言い出したバカもいたけれど、誘拐犯とその仲間に無償の愛を送るのは無理と言ったら黙ってしまった。

 いいじゃない、対価を払ったら協力はするんだから。


「しばらく瘴気は出ないでしょ? 私はしばらくここにいさせてもらいたいから、できれば提案を受け入れてくれるとありがたいな。あ、もちろん誓約書書いてね。最重度のやつ」


 魔法石を回収して懐に入れると、おじさんたちが嫌な目を向けてきた。

 見た目少女だからイラっとするんだろうなあ。中身はおばちゃんだからそれなりに経験積んでいるのよ。甘く見ないでもらいたい。


「それじゃ、これ以上いても仕方ないので私は部屋に帰ります。朝になったらお返事聞かせてくださいね。検討中、でも怒らないけど、あんまり遅くなるようだったら私を召喚したという人に会いに王都にでも行こうかねえ」


 最後の一言は嫌がらせだよ、ふふん。

 何の準備もなく一人で森になんて行くわけないじゃない。

 それでも効果はあったようで、部屋の中は騒然となった。金の卵を産むガチョウは手放したくないんだよね。わかります。

 私はそっと会議室を抜け出し、外にいた護衛の一人に案内してもらって自分の部屋に戻った。







読んでいただいてありがとうございます。

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