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ファイブ・セコンド(Five Seconds)  作者: 中矢良一
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第19話「ヘルプ!」



東邦工業のテストコースは、アジア屈指の外周距離を誇っていた。


その距離は10kmの長さがあり、新型車の撮影用道路がコースの内側の数箇所へ直線的に敷かれていた。


真一はコース円周上の400mを決め、そのちょうど真ん中あたりの位置左脇に、空砲を発射する装置と、ウサギ2匹を入れたケージを設置した。その空砲は無線で発火させることができるが、コース内側の直線撮影道路の一部にその発火を、車の通過でストップさせる装置へつながる1本の針金を敷いた。


一樹に400mを走らせ、その撮影道路の直線を瞬時に引き返せるような半月状の簡易コースを作ったのだ。

先日の東名事故の再現をしようという試みであった。


真一は一樹の過去を見る能力に、ひとつの法則を見つけていた。それは、一樹の性格に大きく関係していた。


(助けて! ヘルプ・・・)


それが一樹の目の前に5秒前を浮かび上がらせる・・・



テストは始まった。


本コースは、事故当時と同じ時速80kmで走行する。空砲の発火が事故の時と同じように、目前で見えた瞬間に直線コースをミラクル・ローテリー軽、フル・スロットルで逆走し、針金を踏ませて空砲の発火を止めるというものであった。

もしも、空砲が不発になれば、一樹の5秒前を観る能力で、たとえば既に起こってしまった大きな事故などを未然に防ぐことができるかもしれない。


確かに夢のような話ではあると思ったが、先日の事故は一樹と真一の乗った軽が止まるまでに230mかかった。しかし実際の事故は341m後方で発生していた。そのおよそ111mの差は5秒の時間的ずれにあったことを真一は計算上割り出し、一樹も過去からの経験上、ほぼ真一の言うとおりであると信じていた。


タイミングを合わせるのに20回も30回もかかった。


空砲を発火させて瞬時に直線コースに迂回するタイミングは早すぎても遅すぎても、実験にはならない。ウサギたちは空砲が鳴り響くたび、ケージの中で大暴れをした。


(ヘルプ!!)


ウサギたちの叫びはそのつど、一樹には届いていた。


そしてある時、猛スピードで逆送する実験車がほんの一瞬妙な光を発した。


そして止まった実験車から一樹が飛び出し、真一の下へ一直線に走ってきた。空砲は接触不良か何かの理由で不発に終わった。


「やった!!・・・やったよ!!発火を食い止めた!!」


「何言ってるんだ。お前・・・勘違いしてる。不発だよ」



「違う・・・お前にはきっと見えなかったんだよ。消しゴムが見つからなかった時のお前と同じようにな・・・」


一樹はそんな風に言って真一の両肩を興奮気味に何度も揺すった。


(単なる錯覚だ・・・)


真一は一樹の為すがままに体を揺すり続けられているしかなかった。




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