五十四 しょうじvs死神
ゲームセンターに来たしょうじと死神は、クレーンゲームの密集した一階エリアから二階に上がった。そこは下の階よりも人が多く、様々な台からチカチカと青、緑、赤などの光が放たれている。鮮やかな画面、大きな土台、頑丈な椅子。これぞアーケードだ。
「ここが本当に楽しむところだからな。お前をぼっこぼこにするの楽しいだろうなぁ」
しょうじは死神に向かって指を鳴らし、一番近くのレーシングゲームに座った。レーシング用のバケツ椅子は彼の周りを囲み、腰が動かぬように固定した。
「これだよ、これこれ!」
しょうじはハンドルを握ると、死神へ隣に座るようジェスチャーした。
「なんだかすごいじゃんこれ!」
死神はピカピカの画面とテカテカのマシンに見とれていたが、しょうじに呼ばれて椅子に座った。今まで座った椅子とは違い、この椅子はとても固い。
「あんまり気持ちよくないねこの椅子」
死神のコメントに腹を立たせるしょうじだったが、できるだけ抑えてからお金を機械に投入した。
「それがロマンだろうがっ!ほらやるぞ」
「これどういうルール?」
「車を運転して一番早くゴールまで行った奴が勝ちだ。運転の仕方は分かるか?」
「うーん、ペダルを押して前に進むんでしょ?この丸っこいので右と左に……」
「間違ってはいないけど……」
しょうじは頭を横に振った。一旦立ち上がり、死神の後ろについて指を指しながら説明した。
「これがアクセル。前に行くやつ。これがブレーキ。止まるやつ。これがハンドル。曲がるやつ。これがパドルシフター……」
「シフトって何?バイト的な?」
「うっ……そこまで無知だったとは……まぁいい。オートマにしよう」
「おおとま?」
「気にすんな。始めるぞ」
しょうじはゲームモードを選択すると、自分の台に座った。
ゲームが画面でカウントダウンを始める。
3……2……1……GO!
上部にあるライトが緑に変わると同時にしょうじは勢いよくアクセルを踏んだ。しょうじの画面はすぐに前に進んだが、隣の死神は訳が分からずのろのろと進み始めた。
「楽勝だなこれは」
「なんで曲がんないの!」
しょうじがスイスイとコーナーを曲がる後で、死神はそのステージの壁に猛スピードで激突していた。
「ブレーキを押すんだよ!早すぎると曲がれないっ」
しょうじは自分でハンドルを切りながらアドバイスをするが、死神が最初の角を曲がる前に決着はついていた。
WINNER——SHOJI
画面が切り替わり、しょうじの車が映し出される。運転手のキャラクターが飛び跳ねて喜んでいた。
「えー、もっかいやりたい!」
大差で負けた死神だが、諦めていなかった。クレーンゲームの(自称)女帝はそう簡単に折れない。
「ウォームアップだからさ!ね?」
しょうじはすぐに金を入れた。もう一回圧倒的な差を見せつけてやればいいこと。そう思ったのだろう。
「よし、行くぞ?」
3……2……1……GO!
今度は死神の車も発射する。曲がり角は少し壁に当たってしまうが、ちゃんと曲がれるようになっていた。
だがしょうじには到底かなわない。死神はコースの半分も回り切っていなかった。
WINNER——SHOJI
「もういっかいお願い!」
隣に座ったまま死神はしょうじにまた頼んだ。
「コツを掴んできたところだからさ!」
「……いいよ」
3……2……1……GO!
WINNER——SHOJI
「もう一回!あと一回!」
「何回やるんだよ……」
「でも差が縮まったじゃん!」
「たったの十メートルな?まだ半分行ってないぞ」
3……2……1……GO!
WINNER——SHOJI
3……2……1……GO!
WINNER——SHOJI
3……2……1……GO!
WINNER——SHOJI
SHOJI SHOJI SHOJI……
「キーッ全然勝てないんですけど!」
「そりゃそうだわ。俺がこれを何年やって来たと思ってんだ」
「他にすることないからねーあんた。彼女いないし」
「お、お前負けたからって、人の弱い所をつきやがって……」
しょうじと死神はそれぞれの台から退き、アーケード内を彷徨う。
「これ何?」
死神が指さしたのは大きなスピーカーのついた台。
「音ゲーか。リズム系は俺極めてっからな」
「なにそれ」
「まぁいい。やろうじゃないか」
しょうじはまた少量の金額を投入した。
「まずは俺からな。見してやるよ、どんな風にやるのか」
しょうじは自信満々に始めた。
周りから音楽が流れ始め、画面にはタイミングを合わせるような音符とコンボ数、スコアが表示されていた。
「キタキター!三百コンボ、四百コンボ、五百コンボ……」
しょうじはリズムに乗りながら手足を動かし、スコアを上げていった。その彼を隣で死神がよく観察する。
「ほうほう……」
「良し、まあ三ミスかな?」
しょうじが終わると彼は台から離れ、死神に次やらせた。
「結構難しいからできなくても悔しく思わなくっていいぞー」
しょうじが今度死神を煽り返したが、次の瞬間、死神がサビの難関部分をノーミスでクリアしたのだ。
「う、うそだろ……?」
しょうじは口を開けて見ていた。死神が終わった時、画面が虹色に光っていてフルコンボのマークが出ていた。
「あれっ、ハイスコア取っちゃったっぽい」
死神は平然としていた。しょうじの得意とする曲を、一発で記録を塗り替えてしまったのだ。
「な、なんでそんな上手いん?!」
しょうじは驚いた顔でスコアに目をくぎ付けたままだった。
「死神だからねー。反応速度とか早いんだよね」
「クッソォ……」




