五十一 いつもの昼
新幹線が東京駅に滑り込む。しょうじはリュックを背負い、花火が内ポケットにあるのを感じながら車両を降りた。
「明日、実家にでも帰ってみるか」
新幹線で考えていた。自分が他の死神に狙われていて、家族にあったら危険に晒してしまうかもしれない。そう悩んでいたが、会わずに死ぬより最後に顔を見せておきたいと思った。ひとまず、今日の残りはこの花火でもあげようと河原を探す。
「死神、花火使いたいんだろ?」
「えっ、うん。そりゃ使いたいじゃん。結局使わなかったけどさ」
死神が駅の中、しょうじについていくと切符を渡され、改札を通った。
「俺のアパートなんてほぼ埼玉だからさ、埼玉で荒川の川辺行けば花火できると思うぞ」
「えっ、ほんと?!でもまだお昼じゃん。花火は夜にやらなくちゃダメっしょ」
「うーん、昼食ってその後どうすっかなぁ」
「あのさ、ショージ」
「ん?なんだ」
「今度こそ、本当にショージの行きたいところにしてよ。うち、ショージがどんな物好きなのか知りたいかも」
死神は彼の目を見ようとしない。照れているようだ。
「そ、そうか。なら……昼はまずあそこだな」
二人が向かった先はしょうじの家の近くにチェーン店がある、あの中華料理店。みんなが大好き、桃のマークのあそこである。
「やっぱりここだわ!クソ美味い」
しょうじは熱々の天津飯を口に運びながらどんどん食べる。
「えー、一昨日も中華だったじゃん」
死神はブーブー言いながらも、レタスチャーハンを美味しそうに食べ、左手で電子メニューのデザートを探している。
「今更文句言いやがって。いいんだよこの味が。慣れてる味が」
「そうなの?変わんないじゃん。ねぇデザート頼んで良い?」
「なんだよそんな許可取るように。好きに頼んで良いぞ」
「やったー!」
彼女はしょうじに言われた通り、なんの遠慮もなくメニューのデザートを全て頼んだ。ロボットによって運ばれてきた品々を二人がかりでテーブルに移す。
「こんなに頼んだのか?メニュー全部じゃねぇかよ」
「ふふーん。うちの恐ろしさを思い知ったか!」
「デザートで脅かすなんて可愛い死神だな」
「か、可愛い?!」
死神は顔を隠す。
しょうじも面白半分で口から滑らせたつもりだったが、よくよく考えたら恥ずかしかった。しょうじの中ではそのような意味よりも戯れのようなフレンドリーな意味で言ったつもりで、その後死神もそれに気づく。彼女は本当はきっと恋なんて意味じゃなくただの戯れだと思うと、自身のリアクションが逆に恥ずかしく思えた。
「……ねぇこれから何するの?」
死神は体を小さくしてしょうじを見上げる。コーヒーゼリーをスプーン一杯口に運んだ。
「これからって、今日と明日のことか?」
「そうじゃん。残り二日なんだからさ」
「そうだなぁ……たっぷり旅行したし、今夜花火しに行くまでは適当にゲーセンとかで遊ぼうかな」
「そう……」
「明日は実家に帰る予定なんだけど、お前もくるか?」
「えっ、良いの?」
「おう。彼女だと間違えられるかも知れないが、親が勘違いして俺が幸せに死んだとでも思ってくれれば……」
「それ残された彼女が可哀想じゃん」
死神は冗談げに言った。しょうじにはそう聞こえたが、冗談げながらも死神は本当にそう思っていた。
「ま、まぁ本当に彼女ってわけじゃないし、な?」
「う、うん。そうだね」
デザートを食べ終わった死神はただ床を見ながらしょうじが会計を終えるのを待った。




