四十四 どこにいるの?
「クソッ、クソッ、クソォォォーッ!ふざけるなぁぁぁ!」
しょうじは紛れもなく自分に怒っていた。彼女、死神を励ますつもりが、結果突き放してしまったのだ。しょうじ自身、真の感情に気づいていたかはあいまいだが、過去四日間を通して、一週間の最後、七日目まで生きたいと確信していた。だがそれはしょうじが生きたいという感情だったのが、次第に死神と最後まで過ごしたいという思いに進化していた。
「なんでお前は、どうして俺は……」
しょうじはこのとき、感情のコントロールが上手くできていなかった。あと三日。一週間を余裕に過ごしていたつもりが、死神に殺される恐怖ではなく、別の恐怖に埋め尽くされ、少し焦りを見せていた。その焦りに死神との関係を維持しようとして、ついに爆発。
人生で初めて怒ったような気がしていた。怒りの地震。その後の津波が、彼に襲いかかっている。
しかし、こうしてはいられない。死神を見つけなければ。
しょうじはきちんと謝ると心に決め、立ち上がった。今なら、周りの視線は痛くない。気持ちよくはないが、しょうじは自分のアプローチの仕方が間違っているのだと思った。
朝から、死神はあまり元気がなかった。そのたびにしょうじは声を掛けていた。彼女と関わろうとしていた。彼女に「大丈夫?」と聞いていたその言葉が、返って窮屈にしていたかもしれない。彼女には落ち着いて息をする場が必要なのだ。これまで彼女が完全に離れず、距離を取りながらもきちんとしょうじに着いて来ていた。その理由は……
「待ってろよ、死神。必ず元のお前に戻ってくれるように、そばに……」
しょうじにはあまり手掛かりがない。地面の石タイルに掘られた大仏の模様の上に、死神が落としたであろうこのキーホルダーのみ。
まず、しょうじが向いていた方向には行っていないだろう。彼女はしょうじの死神。殺される本人、つまりしょうじは彼女が透明になっても見ることができる。その代わり、死神たちは常にターゲットの死角に居続けるが、初めから一度もしょうじの死角にいなかった彼女が今更そんなことをするわけがない。
「どこに行ったんだ?」
近くのエリアマップに駆け寄る。台の上に張られた地図はプラスチックでコーティングされていて、沢山の指紋で汚れている。
「大仏の広場しか写ってないじゃんかよ……!」
あまりどころか全く手掛かりがないことに、しょうじは強く手のひらを台に叩きつけた。
「役立たずの地図が、地図が……地図?」
大仏の模様、鹿のキーホルダー、地図。大仏、鹿、スマホの地図。全てしょうじが死神に見せたものだ。
『しょうじの行くきたいところでいい』
彼女の言った言葉が頭の中で浮かび上がる。
「それだ!」
スマホを確認し、しょうじは急いで公園に戻った。
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まずは公園。それが昨日の夜考えた、五日目のスケジュールの最初だ。
「まずはここだ。ここで鹿と写真を撮ったな。撮れって最初言ってたのアイツなのに、俺がすっかりハマっちまったよ……」
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次がさっきまでいた大仏。
「俺は仏教とか宗教なんて信じてないけど、もともと死神も信じてなかったからな」
初めて死神に会った時のことを思い出す。
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次に来たのがミニ鉄道展示館。偶然見つけた、古い鉄道の博物館だ。
「電車毎回俺とアイツの分で倍払ってるからな。チケットも毎回買わなくちゃだし、ほんと、死んでるくせに、世話にお金の掛かる奴め。飛べる癖に」
しょうじは外に出て、空を見上げる。飛んでいる死神を見つけようとでもしているように。だが、もうどこにいるのかは検討がついているのだ。
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次にカフェ。昼ごはんの時間帯にここまでやってこれたら食べあるきなどを考慮して軽いランチとスイーツでも食べる予定だったのだ。
「お腹空かない死神なのに、食い意地だけは一丁前だからな。店のもいいが、一度くらい俺が作ったのも食べさせてやりたい気分だ……」
死神はここにもいない。ただ、しょうじの中には説明できないような感覚があった。磁石に長くくっ付いていた釘が磁力を持つように、この場に引っ張られている感じがする。
「アイツ、俺の予定表の場所全部行くつもりか……?意味わかんないときだけ記憶力が高くて。やっぱり死神だなっ」
しょうじはこの追う旅が少し楽しくなっていた。死神も、先に行ってリフレッシュできているだろうか。




