三十三 死神少年
「あんたね!人食獣をここに連れてきたのは」
どうやら死神は狂って空気に説教をしているようだ。しょうじには彼女が地面に向かって叫んでいるようにしか見えない。
「あれがなんだかそもそも知ってんの?あれチョー危険だかんね?カンケーない人死んだらどーすんのさ!」
トーンがとても適当で、地面が反省しているとはとても思えない。もっと言ってやれ、死神。地面に転んだ時痛いし。ちゃんと反省してもらわないと。
「うるさい!逃げようなんて思わないでよね」
地面はどうやって逃げるんだろうか。
「なぁ死神……」
しょうじが死神に自分の存在を伝えると、死神はハッとした。
「あっ、ショージ見えないんだったね。ほらあんた」
彼女が何かをビンタした直後に、若そうな男の子が現れた。この子も死神なのだろうか。中学生くらいの見た目だ。
「あんた死神なってからそんな経ってないでしょ。人食獣はどーゆーことなの?教えて!」
きっと彼もしょうじを殺しに来た死神たちのうちの一人なのだろう。中学生に命を狙われているような気がしてしょうじは少し落ち込んでいた。
「ち、違います!先輩方が無理やり連れて行けって……僕も何が何だか」
彼は自身がなさそうに答えた。
膝を曲げ、体育座りで地面の上に座った。
「君は?」
しょうじは怖がらせないためにできるだけ優しそうな声を意識して言った。
「ぼ、僕ですか?僕は死神ですけど……」
そういえば|こいつ≪死神ちゃん≫も名前覚えてないんだったな。藤さんとかいう奴は後から付けたあだ名らしいし。
「ようし僕ちゃん、この優しいおば……死神ちゃんに知ってること全部話すんだ」
「ショージ今殺すよ?」
「なんでだよ!」
「おばさんって言おうとしたでしょ。どこの誰がババアじゃ!」
「いやいやー、死神さん、とてもお若いですよ。高校生くらいかなぁ」
「合ったりまえだろぉ!」
死神はしょうじに一発拳骨をこの前の分返すと、少年の死神に体を向けた。
「本当に違うんです!」
「何が違うのよ、言ってみな」
ギャルのぎゃんかわ女子口調がなくなった死神は通常より怖かった。自分から逃げようとする|死神≪ハエ≫さえ逃さないような集中力と威圧。
「はい、僕死神になってから間もなくて、よく分からないんです死神のこととか。そしたら立派な死神にしてやるって、先輩方に引っ張られて地獄に連れていかれて、何か道具を使って人食獣を石にするところを見たんです」
「道具……続けて」
「その石を僕は持って行かされ、あなた方が来た時、道路の真ん中に置き、子供を想像しろと言われたんです」
「それで少女が……」
しょうじは後ろで落ち込んでいた。自分があんなにも命を懸けて救ったしょうじょは偽物で、自分を殺すために連れてこられた|人食獣≪バケモノ≫だということを。少女なんて存在しなかった。
「それにしても、あんたがやってたこと分かってんの?罪の重さを」
「ど、どのくらいなんですか?」
少年死神の質問に死神ちゃんは呆れた。
「はぁ……嵌められたんだね。本当なら人食獣を連れ出すなんて重罪。魂潰されちゃうんだよ」
「えっ?!」
「まじか!」
少年としょうじは同時に声を上げた。
「そうだよ。あんたを貶めた奴を見つけないと、偉い人に魂潰されちゃうよ」
「ぼ、僕はどうすれば……」
「静岡に行きな。その辺彷徨ってれば藤さんって死神に会うから。び……貧乏死神に送られてきたって言って要件伝えな」
「えっ、あなたが貧乏死神さんなんですか?!」
「うっ、なんでうちそんなその名前で有名なのよ。恥ずかしいじゃん……それより早く行ってきて!」
「はい!ありがとうございます!」
そう言って、少年は飛び立つとともにしょうじからは見えなくなってしまった。
「じゃあ、ショージもお腹空いただろうし、おいしいステーキでも食べに行きますかぁ~」
「あ……うん。そうだな」
状況に頭が追い付かないまま、しょうじは死神を引き連れて朝食メニューにステーキのあるレストランに連れて言ってやった。とりあえず、また彼を殺そうとした死神がいるってことでいいんだろうと思った。
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「やったぁー!おっきいねこのステーキ」
レストランで座り、頼んだステーキがテーブルに届く。
「良かったな、味わって食べろよ」
「もちろん!このなっがぁーくて大きくて、アツアツのステーキ……」
「おいやめろ。いいから食べろって」
「はぁーい」
「実は、お前にサプライズがあるんだよ」
「えっ?何々?うち自分の誕生日覚えてないけど」
「誕生日関係なくだよ」
「え、教えて教えて!」
「喜ぶかわかんないけど……」
「気持ちが大事なんだよ、気持ちが」
「なななんと、このあとUSJに行きまーす!」
しょうじが盛り上げようとして言ったものの、死神は動きを止めてしまった。彼女のフォークからステーキがポロっとさらに戻る。
「ごめん、嫌だったか?」
「……」
死神の目が赤くなり、涙を流し始める。食べていた手はナイフとフォークをテーブルに置き、膝に掌を付ける。震えた声と共に、乾いた息を吐く。
「どうして……」




