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二十三 大阪版

 死神としょうじは大阪城の堀と周辺を回った後、電車に乗って次の観光スポットに向かった。


「次はどこ行くの?」


「大阪と言えば食べ歩きだからな。食べ歩きができるところに行く」


 二人は大阪城の周りをぐるっと歩き、大阪へ来た時に降りた森ノ宮駅で環状線に乗ろうとする。


「環状線ってことは、大阪版の山手線だね!」


 死神が路線図を指差す。

 

「おっ、山手線知ってるんだ」


 冗談でしょうじが死神を弄る。


「ちょ、うち死神としてもそんなに年取ってないから!平成生まれだから!」


「あれ、豊臣秀吉と友達だったんじゃなかったっけ?」


「そんなこと言ってないし!」


「うし、外回りに乗るか」


「ちょっとー!」


 二人は新今宮駅行きの電車に乗り、しょうじのスマホの位置情報地図で徐々に目的地に近づいていくのを見る。


「あと何分くらい?」


 死神が途中で駅に止まっている間に聞く。


「あとちょっと」


 しょうじもドアが閉まるのを待っている。


「全然答えになってないって」


 だが、ふと車内を見回してみると、誰もいない。電車の中にいるのは二人だけ。


「おっかしいな……」


「ねぇショージ、あれ」


 死神がドアの上の電子画面を指差す。


「うちらが乗ったのって外回りだよね?」


「うん、そうだけど?」


 しょうじは彼女が一体何を言っているのか分からなかった。彼女の指の先を見るまでは。


「うわっ、内回りになってる!」


「でしょ?」


「えっ、さっきまで新今宮行くって書いてあったのに、スマホにもこの電車って書いてあるのに!」


「でしょ?」


「よし、仕方ない。降りるぞ」


 しょうじは死神をつれて下車する。


「おっかしいな……絶対さっきまで外回りだったのに」


「これじゃあ環状線じゃなくて三日月線だね!ブーメランの方がいい?戻ってくるし」


「お前大阪の人にそれ言ったら潰されるぞ」


「だってー」


「とりあえず外回りに乗るぞ。また……」


 二人はホームから上がり、歩道橋で線路の上を渡ると、反対側のホームで待っている電車に乗った。


「今度こそ、外回りだ」


「これで違ったら?」


「そしたらもう歩くわ」


「えー、その時はうちのことおんぶしてよ。もう疲れてきちゃった」


「我慢しろ。寝坊とかのせいで朝ごはん食べてないし、昼もまだだから不機嫌なのは分かったから!俺も食べてないんだ!急な旅行だし、余命一週間ないし、今日の朝寝坊しちゃったし、予定狂ってるし、電車のくだりで時間食っちゃったし、全然したいことやり切れてないし、お前も連れてこなきゃいけなかったし!」


「……」


 しょうじはすぐに強くあったってしまったことを後悔した。


「わ、悪い。そう言う事じゃないって……いや……うん……」


「う、うちももうちょっと我慢するよ……」


「……うん」


「あの……グミだけちょうだい。それで我慢するから」


「……うん」


 しょうじは電車が動き出すと同時に死神にグミを渡す。


 ▼▲▼▲▼▲


 電車の車内アナウンスが流れる。


「まもなく新今宮駅です。新世界へお越しの際はこちらでお降りください」


 それを聞いただけで死神が吹き出しそうになる。


「新世界だって!」


 もう笑ってしまいそうだ。グミの袋で口を押えている。


「おい死神お前大阪の人にぶっ潰されたいんか?」


「だっておもしろいんだもん!新世界?ププーッ。なに、ここだけ火星とか?新しい世界って変な名前でしょ!マジ受けるんですけど」


 大阪の皆さん、こいつのこと再度潰してあげてくださいな。


「で、何を食べ歩きするの?」


「串カツとかかな。小さな店がいっぱいあるんだよ」


「へぇ」


「あとで道頓堀にも行くからそんなに食べたいもの無かったらそれでも大丈夫」


「はーい」


 死神の元気な返事と共に電車が駅に滑り込む。


「新世界、うちが来たぞ!」


 死神が腕を伸ばしながら歩き、その後ろに着いて行くしょうじ。


「まぁ適当に歩くって感じだな」


「はーい」


 新世界に行った二人は真っ先に串カツなどの脂っこい食べ物の空気に包まれる。


「いい匂い!あと人が多いね。車も良くここ通ろうとするねぇ……あっ!」


 死神は服屋を見つけた。


「見て見てショージ!なんかすごい服あるよ?!」


「お、おう」


「なんだか大阪弁が書いてある!」


 死神がとある服を指差す。「黙れカス」と筆で書かれたような文字が載っている。


「関西弁なのか?これは」


「あ、ねぇショージ、おんなじのを二個買っておそろいの着ちゃわなぁーい?」


 しょうじはびくりとした。その言葉が来ることはなんとなく察していたが、実際に言われて動揺してしまった。


「あ、えーっと……」


「なに、うちとおそろいヤダ?」


「いやってわけじゃなくってだな、どうしよう。えっとー」


「いいよじゃあお金がきついんだったり、別に欲しくないならわかった」


 運良くここで死神が引いてくれた。だがしょうじは今度逆に問題を起こそうとしなかった死神を心配している。死神が文句を言わないなんて珍しい。


「お前頭打ったのか?」


「打ってないし!その代わり、串カツめっちゃ食べさせてもらうからね!」


「爆発するくらい食ってろ」


 死神は最後に少しだけ見てから店を後にした。

 

 なんだか「バカタレ」や「ぶっ飛ばすぞ」などと不吉なことが書いてある服ばかりだったが、案外死神にはぴったりの服なのかもしれない。これが大阪ヒューマーか……

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