二十二 城
しょうじはスマホで地図を見る。
「そろそろだな」
向かう先は大阪城。一時間と数回の乗り換えで次の目的地へ辿り着くのだった。
「もう昼過ぎかよ。九時までに大阪城着く予定だったんだけどな」
「どんまい」
「貴重な時間が……」
ジョークとして言っているような口調のしょうじだが、この時になってやっと時間の無さに気がついていた。あと五日を切っている。自分の死ぬ時が分かるのは嫌なものだ。どうしようもできないデッドライン。
「なぁ、妖怪になるっていう線はないのか?死んだら」
死神は昨日、妖怪は主に二種類いると言っていた。自然に生まれる方と、もうひとつ。元々神やら妖怪やら信じないしょうじだったが、彼女に出会ってから、当然気が変わっていた。
聞いてみる価値はあるだろう。
「えっとねー、ひとつ目が自然にできるって言ったよね。あれは人が強い思いを込めた物が主に妖怪になるんだよね。それでふたつ目なんだけど、確かに人が死んだときになる。でもそれはめちゃくちゃ未練が強く残ってる人じゃないといけないのね?まぁしょうじなら案外ありそうだけど。でも結論で行くと、何にもなる前に魂潰されてなくなっちゃうかなぁ」
「……やっぱり駄目か」
二人は大森ノ宮駅で降り、大阪の名物のひとつ、大阪城に着いたのだった。
「もうここから見えるね!」
「ああ、立派だな。よし、真っ先に天守閣へ向かうからな。醍醐五重塔みたいにしまっちゃうのはごめんだ」
電車を降りてしょうじは早歩きで改札を出る。
「大丈夫だってー。まだ明るいじゃん」
「東京の五時のチャイムだってめっちゃ明るいときになるんだから。マジで大変だったんだぞ、あれが鳴るまでに帰れって母に言われてたからな。帰らないと探しに来るんじゃなくって、なった瞬間後ろに現れるんだよ。恐ろしい」
「へー。ショージのお母さんどんな人なんだろ」
「また後でな。そうだな、七日目に最後かえって挨拶していくか」
「うちもちゃんと紹介してよね!」
「何ていえばいいんだよ。この人が俺を殺しまぁーす!ってか」
「どうせ紹介したことないだろうから、カ・ノ・ジョってことでも、いいけど?」
「殺しに来るサイコパスカノジョなんかいらんわ」
「えー?あんたなら別にいいって言ってるんだけどなぁ」
「ほら、早くいくぞ」
大阪城敷地内に入り、天守閣までのオンラインチケットを買って列の最後尾に並ぶ。
「ねぁー暑すぎない?」
死神がしょうじの陰に隠れながら手で風を仰ぐ。
「お前はまだいいだろ。でももう十月だってのになんでこんな暑いんだ……ほら、列が進むぞ」
しょうじは死神の腕を掴もうとする。
「やん、汗汚ぁーい」
「あー間違えてお前の分のチケット間違えて削除しちゃったー(棒)」
「えっ、マジ?!」
「嘘だわバカタレ。中はいるまで暑いの我慢しとけ」
十分後、二人は仲に入ることができた。
「ねぇー、この中なんだか寒ーい」
死神がしょうじの袖を引っ張る。
「へぇ、豊臣秀吉の作った大阪城を徳川家康が埋めさせたのかぁ……」
「ごめんってばショージー」
死神は手をしょうじの袖の中へと滑り込ませる。
「分かったってば!」
しょうじは彼女の手を振りほどき、鞄の中から上着を取り出して死神に着せてあげる。
「ショージやっさしーぃ!」
「ちゃんと静かにしてろよお前。金払ってやってんだからその辺の資料でも読んどけ」
「はーい」
二人はゆっくりと城の階層を上がっていく。
「へぇー」
「なるほど」
「ほう」
「ワァオ」
「すげー」
「やべー」
「そうだったのか」
「はじめてしった」
「しってた」
「はぇー」
「すげー」
「それもう言った。はい、アウトー!」
最上階まで登ると、そこには大阪の街の一周パノラマが広がっていた。
「ワァオ!」
「それもう言った。はい、アウトー!」
「お黙りショージ」
「へい」
ゆっくりと進む人の列と一緒に天守閣を一周回る。
「あっちが京都かな?こっちは海が見えそう!」
下を見れば何人かの人が手を振ってきている。
「やっほー!」
「死神、落ちるなよ」
「大丈夫だってー。ネットあるし」
ゆっくり降りるついでにギフトショップへ入る。
ハンカチ、クッキー、マグカップ、案外使えそうな日常品に加えてキーホルダーやシールなんかも売っていた。
「この大阪城折り紙は?」
死神が折り紙セットをしょうじに渡そうとする。
「いらんわ!戻しとけ」
その間にしょうじは他の物を見ていた。見上げた時、ふとおそろいの服を着たカップルが目に入る。
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