十九 高級
「やっぱり大通りは夜でも観光客が多いね」
死神としょうじは人のなだれをかき分けて駅から離れる。
「落ち着いた夜でもちょっと多いと思うけど、今ばかしは夜ごはんの時間だしな。みんな駅に集まっていてもおかしくはないんじゃないか?」
しょうじはチラチラと振り返り、死神がちゃんとついてきているかを確認する。彼女の身長ではすぐに埋もれてしまいそうだ。
「しょうじなんだかビーコンみたい。頭だけ突き出てる。意外と背高いじゃん」
周りに比べて多少高いしょうじの頭を頼りに着いて行く死神。
「靴履いた今なら180ちょっとじゃないかな?そこまで厚底じゃないが」
「その顔でその身長なら彼女くらいいてもいいんだけどねー」
「はははっ、いたらそりゃ嬉しいな」
二人はやっと京都駅付近から抜け出し、近くのコインパーキングに入った。人ごみを避けるためか、他にもやっている人がいるようだ。
「何食べたい?」
しょうじはスマホを取り出して検索する準備をしたが、死神は道の向かいを見ていた。
「いっそのこと、ファーストフードでもいいんだよね……」
彼女はボソッと呟いた。
「ファーストフードか」
しょうじはスマホを開いたままかがみこみ、死神を見上げる。
「懐かしいな。子供のころは健康に悪いからって言って絶対に食べさせてもらえなかったよ」
しょうじは自分の幼少期を思い出したが、それは何十年も前に死んだ死神とは違うものだった。でもやはり、どの時代でも体に悪いものがおいしいと感じるのは同じ。
「うちはそんなの全然なかったよ?月3000円のお小遣いで友達とバンバン買ってたっしょ」
「マジかよ。お小遣いもらえんのか」
「えっ、そっち?今どきの子はもらえないの?」
「今どきってか、俺ももう十年前になるけど、もらってなかったな。友達はみんなもらってたさ。みんなバカだったからすぐ使い果たしてたなぁ……」
「うちがバカだってこと?!」
「言われてみれば、バカの方がお小遣いを多く貰っているような傾向があるような?……」
「もういいっ!しょうじの財布に優しくしてあげようと思ったけど、辞め辞め」
死神はしょうじのスマホをサッと取り、何かを検索しようとする。
「これすごいよね。うちの時はスマホなんてなかったよ……どうやって使うんだこれ」
検索エンジンをなかなか使えず、しょうじの設定している十キーの使い方があまり分かっていなさそうだ。
「うちの時もキーボードは似たようなのあったんだけどなぁ……」
「手伝ってあげようか?」
しょうじが覗き込もうとしたところを、死神は画面を胸に押し当てて隠した。
「ダメダメッ!サプライズなんだから」
「いつからサプライズになったんだよ」
「たったさっきから。はいお黙り!やった!」
遂に行き先を打ち込めた死神。彼女のナビゲーションがあっているかをとても心配しながらしょうじは後をついていく。
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死神がしょうじを連れて行った先は高級焼き肉屋。
「げっ」
「ほら入りますわよショージさん」
高級と聞いてお上品なしゃべり方をまねしようとする死神。
二人は席に案内され、メニューを見る。
「さすが高級だな」
「全部おいしそー!コホン、どれも美味しそうですわねぇ」
「別に高いのを頼まなくてもいいんだぞ?安めのもあるんだからさ」
死神はしょうじの言う事を全く聞かずにバンバンタブレットで注文していった。
「このタブレットもうちの生きてた時はなかったわね。わたくしのほうがいいかな?」
「どうだっていいわ。ほら、頼んだの届いたぞ」
二人は早速ジュージューに肉を焼き上げる。牛、豚、タン、胸。できるだけ網に乗せて焼き上げる。
「おい野菜ちゃんと頼んだか?」
「頼んでないよ。死ぬ前の人が健康とか言ってても意味ないっしょ」
「それはそうだけど、俺は野菜好きだから良いの」
しょうじはニンジンや玉ねぎを頼み、肉と同じように焼き始める。
「あぁぁぁ!肉が汚れるーー!」
「黙れお前」
しょうじは周りの視線を気にしながら拳骨をあきらめた。
今の時代うるさいしな。
「どうせだったらもっと高そうなさ、フレンチコース料理のあるところにするかと思ったのに」
しょうじは肉をひっくり返しながら言う。
「だってー、コースって高いくせにめっちゃ量少ないないじゃん?」
「味が勝負なんじゃない?」
「そうらしいけどさ、うちが金持ちの友達に着いて行って一回だけ食べたことあんだけど、普通の料理よりちょっとおいしいかなー?くらいでそこまですごくはなかったんだよね。ぼったくりじゃないの?」
「おい言っちゃだめだぞ、それ。世の中にはな、不思議なことがたくさんあるんだ。だがそれを口にしてはいけないものが存在する」
「へー。結構厳しいんだね」
「まあ実際俺もそう感じるよ。みんながピリピリしてるって感じでさ。母親はマジで変わったって言ってるよ」
「ふーん。もうそろそろ肉焼けたんじゃない?」
「そうだな」
しょうじはトングで焼けた肉を持ち上げると、それぞれのご飯の上にのせる。
「やっぱり肉は米と食わなきゃな」
せーので箸を使ってパクッと口に肉を閉じ込める。
「おいしーい!」
「おいしーい!」
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「お会計、20000円になりまーす」
「ふぁっ?!」




