十八 手遅れ
二人は一時間ほど電車に乗ってようやく目的地にたどり着いたのだが……
「ここの先が醍醐の五重塔か」
駅から出た二人はあと数分を歩く。
「あれ、五重塔って奈良じゃなかった?」
死神が顎に指を当てる。
「何だお前、歴史ちょっとできたのか」
「うん三十九位」
「うん。俺も最近京都に行きたいと思って調べてた時に気づいたんだけど、五重塔って何本もあるらしい。で、一番有名なみっつのうち、ひとつが京都のこいつって訳さ。ほら、見えてきたぞ」
「へぇー」
死神が見上げると、そこには立派な五重塔が確かに建っていた。
「げっ、しまってる?!」
近寄った死神は看板を見て頭を抱える。
「本日の入場は終了しました?おい死神、あと何日と何時間だ」
きりっとした声でしょうじはメソメソしている死神に聞く。
「五日と六時間ちょっとです……」
「どういうことか分かるな?」
しょうじの質問に死神は心の中で答えた。彼女がもたもたしていたせいで、しょうじが起こっているから。
「もう六時近いからしまっちゃったのか。お前がもたもたしてるからだぞ、死神」
「その通りでございます……」
死神は一瞬肩を狭めるが、すぐに立てなおる。
「あーもう!あんなに電車賃高かったのにー!キィーッ!」
「俺が払ったんだけどな」
「大体、観光地って全部閉まるの早すぎじゃない?意味わかんないんだけど」
「お前のせいだけどな」
「もういいもん!うちホテルに戻ってリラックスするから!」
「俺が予約して払ったホテルでな」
「途中で夜景見るから!楽しんでやるから!」
「多分まだちょっと早いな」
「なによ……夢がないね」
「あと五日で死ぬ奴が夢持ってどうする。まぁなんだ、ちゃんと調べてなかった俺にも非がある」
最後の言葉だけ聞き捨てならぬと死神は拾って耳を傾けた。
「なになに?なんかくれるの?!」
「はぁ……夕飯、好きに決めていいよ」
なんか機能もそうだった気がするけど。俺ってこいつに甘すぎるな、全く……と思いながらホテル帰りの電車に乗るしょうじ。
車内でせっかくだから死神の見たいと言っていた夜景について調べる。
「無料で見れる、混雑を避けられるナイトスポットだってよ?!」
しょうじのスマホを覗いた死神がひとつにリンクを押す。
「結構よさそうだな。なかなかにオプションが豊富だ」
しょうじもサイトを見て下へ下へとリストを下りていく。
「あっ、カップルにぴったりの夜景スポットだってよー?」
死神がしょうじの肩を揺らす。
「ほらほら~」
「分かったって!じゃあ、夕飯食べてから行くか。どうせ京都駅まで戻ったら七時半だしな」
「うん。分かった!」
死神を納得させ、あとは囲んでくれる電車に身を任せる。
「なぁ死神」
「ん?」
「死んだら死神になるなら、妖怪はどうやって生まれるんだ?あんなに伝承があるんだったら本当に要るんだろう?きっと」
「想像の通りいるよ。例えばしょうじの頭の上とか」
「えっ?!」
しょうじは自分の頭を手で押さえる。
「プッ……害はないから大丈夫だよー」
「おい今笑っただろ」
「それより、妖怪は主に二種類いるの」
「ほうほう?」
「ほとんどの妖怪は自然と生まれる。しょうじの頭の上の奴もそう」
「まだいんのかよ、そいつ。ちなみにどんな見た目してるんだ?」
「うーん、さかさまの生首で、肌が白くて、耳から蜘蛛の足みたいなのが生えてる。眼球ちょー腫れてるよ。あと髪の毛がしょうじの顔に垂れてる」
「きっもいな、そいつ!今すぐ取ってくれよ!」
しょうじは頭の上を触ったり、空をはらったりした。
「やだよ。害はないんだから」
「おいコラさっきは山燃やすとか言ってたくせに」
「だって~おかしいと思わない?うち日ごろの行いいいはずなのに……」
「死神が良い行いとは思えんがな」
「あーっ!言ったなぁ?!」
「痛っ、痛いって!」
死神は向かいの席に座るしょうじを蹴り始めた。誰もいない電車で、二人だけ……
夕日に照らされる京都の中心へ戻っていく……
(乗り換えでいっぱい人が乗っていました)




