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三章 第十四話 長い夜1

用語説明w


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる


ケイト

茶髪の獣人女性。トウデン大学体育学部の先輩で柔道部。明るい性格、ふくよかな胸でキャンパス内でも人気が高い。したたかな性格のヤワラちゃん


「遅くなってごめんねー」


「ケイト先輩、お疲れ様です!」

「今、始めたところですよ」


俺達はビールを頼んで乾杯する



「二人共、頑張ってるね」


「そうですか?」


「ゴドーの稽古に加えて、柔道部でも練習してるでしょ。結構、きついと思うよ」


「最初は辛かったけど、だんだん慣れましたよ」


「ラーズ、喧嘩にも慣れてきたからな」


「言い方よ。慣れてねーから」


「ボディビルダーとフルコン空手にタイマンで勝っただろ。自信持てよ」


「どっちもロンが喧嘩を買ったんですけど。爆買いやめて欲しいんですけど」


「すぐ人のせいにしやがって」


「どっちがだぁ!」


「ほらほら、喧嘩しないの」


ケイト先輩がジョッキを突き出してきたので、俺達は再度乾杯する


ケイト先輩は、練習後で少し上気していて色っぽい


そういう俺達も、稽古の後でのどが渇いていて酒がすぐに回ってきた



「そんなに飲んでないのに、酔ってきた…」


「ケイト先輩が可愛いからですね」


「もー、ありがとう。それじゃあ、お姉さんが後輩くん達の悩みを聞いてあげる」


「悩みですか」


「そう。何かない? 空手部や柔道部、大学のことでもいいよ」


ケイト先輩が身を乗り出す


「うーん、俺は特に…。ラーズはないのかよ」

ロンがドギマギする


わかるぞ、今の仕草は可愛かった



「…聞いてもらってもいいですか」


「ラーズ、あるのか」

「もちろん。ドーンと言ってみて」


俺は、意を決して口を開く

酒の影響か、相談してみたくなったからだ



「…俺、喧嘩が怖いんです」


「え?」


「組み手でもそうですが、殴られたり蹴られたりするのが怖くて…」


「…」


「…自分でも情けないと思ってるんですけど。喧嘩のときなんて、足が震えるんです」


俺には才能がない

そう思える理由は、心の弱さだ


強くなりたい

ゴドー先輩のように、物怖じせずに理不尽に生きてみたい


そのために空手部に入った


それなのに、俺の根本は変わらない

人生をやり直して、もっと強く生まれ直したいくらいだ



「そんなこと考えてたんだね」


「ビビリな自分が嫌になるんです」

俺はケイト先輩に言う


情けない

でも、これが俺なんだ


「…」

ケイト先輩が俺をじっと見る


軽蔑したのだろうか

俺が、言ったことを少し後悔した時



「ラーズはビビりじゃねーよ」


「え?」


ロンの方が口を開いた



「俺が拳法を始めた理由はさ、いじめられてたからなんだ」


「ロンが?」


「そうだ。中学でいじめられてよ、あんな奴らに負けるもんかって思って道場に通ったんだ」


「そうだったのか…」


「高校三年生になって、いじめてきた奴を一発で倒して、いじめはなくなったんだけどな」


「ロンはスゲーな。自分で形意拳やって、いじめを跳ね除けてさ。俺なんて、すぐ逃げ出したくなるし…」


「でもよ、逃げてないじゃないか」


「え?」


「入学式の時に、俺がビルダー三兄弟にやれたときも、その後でブラックマンバに囲まれた時も」


「あれは…」


「無視してもよかったし、一人でも逃げられた。でも、おまえは逃げなかった。助けてくれたじゃねーか」


「…」


「初めてだったよ、助けてくれたのは。いじめられてた時は、誰も助けてくれなかったからな」


「ブラックマンバの時は、ケイト先輩がゴドー先輩を呼んでくれたから助かっただけだけど」


「警棒でやられた俺を庇って、ゴドー先輩が来るまで踏ん張ったのはラーズだ。お前はビビりじゃねぇよ」


「…恥ずかしいことを、よく真顔で言えるよな」


恥ずかしい

ロンって真面目だ


正しいと思ったことは、平然と言える

普通、照れるだろって思うんだけどな



「お姉さんの出る幕無かったね。二人で解決しちゃった」

ケイト先輩が笑う


「いや…」


「ラーズ君は、私も大丈夫だと思うよ」


「…そんなことないんですよ」



俺なんて、逃げ出してばっかりだ

騎士になる自信がなくて…


セフィ姉に、憧れの人に、がっかりされたくなくて


騎士になったヤマトやミィ、フィーナ

同じパーティを組んでた三人が、騎士として実力を上げているのに


俺は、その世界から逃げ出したんだから



「ラーズ君、そんなことあるよ」


「はい?」


「ラーズ君は大丈夫。だって、自分から変わりたいと思って行動してるんだから」


「行動って…」


「最初に会った時は、情けなくてかっこ悪かったよ。でも、自分から格闘技を始めて、強くなってる。もう変わり始めてるんだよ」


「…!」


「喧嘩や組手が怖いのは当たり前。場慣れして、練習したって、マシになる程度。その怖さと上手に付き合っていくしかないんだよ」


「…はい」


「ラーズ、オープントーナメント頑張ろうな」


「ああ」


「よし、勝利を記念して…」

ケイト先輩がジョッキを上げる


「「乾杯!」」


俺達は、残ったビールを一気に飲み干した




・・・・・・




上機嫌で歩くケイト先輩


その後ろを、俺とロンは歩いていく


「ケイト先輩、いいよなぁ。かわいいし、性格いいし、話を聞いてくれるし」


「おっぱいも大きいしな」


「変に隙もあるし、襲いたくなる男の気持ちもわかる」


「襲ったら柔道で返り討ちだけどな」


「確かに」



ブロロロ…


後ろから車が来たため、俺とロンは道の端へとよる



「ケイト先輩、車です…」


俺が声をかけようとすると、車のスライドドアが開いて男が三人、降りてきた



「…っ!?」


男達はケイト先輩に掴みかかる



そして、車へと引きずり込んだ



バン!


ドアが閉められる



「なっ、待て!」


この間、僅か数秒

俺達は慌てて追いかける



ガッ!


ロンが後ろのワイパー掴んでバンパーに足をかける



ギャギギィッ!


すると、車が急加速、角をすごい勢い曲がった



「ぐぁっ…!?」


ロンが勢いで振り落とされる


「ロン!」


「ラーズ、追え! この辺は道が細いからスピードは出せないはずだ!」


「…っ! 分かった!」


俺はロンを置いて車を追う



短距離ではなく持久走の走り


車は、確かにギリギリ追いつける速さだ



「きゃぁっ!」


通りかかったおばちゃんを避け、反対側の塀にこする



そんなことを繰り返しながら、車は進む


だが、運が味方した

曲がった先は行き止まり、駐車場に使われている空き地に出た



「はぁ…はぁ…」


俺はPITでロンにGPSの位置を送る

そして、車が逃げないように入口に立つ



すると観念したのか、車のドアが開き男達が降りてきた



「ど、どういうつもりだ、誘拐野郎!」


「お前に関わると、本当にうまくいかねーな」


「なっ、お前…、タオ…」



こいつはブラックマンバの一員、タオ

俺とロンが何度か喧嘩を売られ、返り討ちにしている



「この女を拉致って、お前にも落とし前をつけさせようと思っていたのによ。まぁ、いい。お前をここでボコって…」


「まさか、復讐のつもりなのか? それで拐ったってのか」


「俺はこれ以上舐められるわけにはいかねぇ…、お前らのせいだ…」


タオが目を見開く


その目に、俺は一瞬ゾッとする


人の恨みというものは、侮ってはいけない

タオの目には、追い詰められた狂気を感じた



ドタァッ!


「ぐはっ…」



地面に叩きつけられる音

タオがハッと振り返る



「…逆恨みしないで。勝手に襲ってきて、負けたら粘着?」

ケイト先輩が言う


ケイト先輩が、男の一人を地面に叩きつけていた

ピクピクしている所を見ると、思いっきり投げたらしい



「拉致監禁、こんな犯罪まで犯したんだから、あなた達は終わりよ!」


ケイト先輩がもう一人の襟を掴み、数度引き上げる


「くっ、この!」


男が体を後ろに反らして踏ん張る

その瞬間…



ゴガッ!


ケイト先輩の大外刈り

真後ろに倒された男が昏倒する



つ、強い…!

ケイト先輩、本気出したらここまで強かったのか


俺達とやる時って、いつも手加減してたんだな



「な、何だと…」


タオが動揺

仲間が一瞬でやられたんだ、そりゃそうか



ガチャッ…


車の運転席と助手席が開く



そうか、運転してた奴がまだ残っていた

助手席にも乗ってたか



「お前はタオの手伝え。俺は、この生意気な巨乳をやる」


運転手が言う



「ラーズ!」


ロンが到着



ケイト先輩が構える


運転手が無造作に近づいていく



あー、馬鹿だな

また綺麗に投げられて…



ゴゴッ!


「…っ!!」



次の瞬間、ケイト先輩が膝を付く


その鼻からは血が吹き出していた


オープントーナメント 三章 第十三話 夜の始まり

タオ 三章 第三話 部活動再開2

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