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三章 第十三話 夜の始まり

用語説明w


ペア:太陽系第三惑星であり、惑星ウルと惑星ギアが作る二連星


アルバロ

神族の男性で、ラーズの人文学部の同期。女好きで合コン好き。チャラく緩く大学生活を楽しんでいる


ロン

黒髪ノーマンの男性。トウデン大学体育学部でラーズの同期。形意拳をやっていたが、ゴドー先輩の強さに感化されて総合空手部に入部。熱い性格で、ラーズとよくつるんでいる


ゴドー

鬼のゴドーの異名を持つ獣人男性で空手部の先輩。ケイト先輩の一年先輩だったが、留年して同期になった。好戦的な性格で、体格とセンスにも優れる。その実力はプロの格闘家を並み


講義 世界古代史



理論魔導法学とは、惑星ウルで発展した魔導法学についての学問の一つである


魔導法学とは何か、と問われれば何と答えるか

その答えの一つに、霊質の定義が挙げられる



霊質とは霊的な質量を意味する

イメージとしては、物質と相反する存在であり、物質とは干渉しないものという感じか


人間の霊体と肉体は重なっており、魂を介して繋がっている


正確には、肉体は氣力によって魂と、霊体は霊力によって魂と繋がっており、結果として魂を介して相互に影響が伝わる

(厳密には、精神を介す影響もあるので正確な表現ではない)


人体の魔導法学上の構造は、肉体と霊力に加えて精力(じんりょく)が引き付ける精神を含めた三重構造である



…話を戻そう

霊体を形作る霊質とは何なのか


これは、厳密に言えば概念である


生物が生まれ、精神が生まれ、イメージが吹き出る

そんなイメージに対して、霊力と精力(じんりょく)が霊的質量を持った魔素、その魔素を作り出す霊子によって霊質ができている


つまり、物質と霊質の大きな違いは、マクロレベルでのエネルギーと質量の相互変換であり、そのきっかけが生物の精神構造から生まれるイメージなのだ


事実、精神構造が多数存在するペアの二つの惑星上と、生物が存在しない他の惑星では、霊質の存在規模に大きな差がある


多次元においては、肉体を持たない高次元生命体の存在によって、大質量の霊質が存在しており、物質よりも霊質の存在比が大きくなる場合もある



「理論物理学と理論魔導法学の発展によって、ペアの魔法科学文明は発展してきました。各時代のブレイク・スルーとなる発明を押さえておくように」


講師はそう言って講義を終えた




「ラーズ、ノート取ったか?」


「取ったけど、何でだよ。アルバロ」


「テスト前に見せてくれ」


「俺、字が汚いからやめたほうがいいぞ」


「大丈夫だよ。ラーズ以外にも借りるから」


「まぁ、そう言うなら」


「サンキュー。何人かのノートを集めて、完璧なノートを作るぜ」


「その熱意があるなら、自分でノートを取ればいいのに…」


俺の言葉を聞く前に、アルバロは走って行ってしまった




・・・・・・




旧道場



俺はロンと落ち合って部活へ


「こんにちはー」

「お願いします」


道場では、ゴドー先輩が畳に座っていた


「あれ、ゴドー先輩、汗だくじゃないですか」


「午前中、レスリング部練習に行ったからな」


え、この人、マジで授業取ってないの?



「それじゃあ、稽古を始めるぞ。アップで大学を三周走ってこい」


「はい」


俺達はいそいそと道着に着替えるのだった




「戻りましたー…」

「疲れたっす」


ランニングを終え旧道場に戻る


「よし、稽古を始めるぞ」


整列して、神前に礼、お互いに礼

うちの空手部の挨拶だ



「今日は何をしますか?」


「東玉流のオープントーナメントの対策だな」



オープントーナメント


誰でも出場できるトーナメント形式の大会のこと

東玉流は、初心者を含めて誰でも出られる大会を用意しており、ルールも安全を重視したものとなっている


頭部のヘッドギアを着用

片方が寝てからの打撃は禁止

投技もバスターなどの落とす技は禁止



「それに俺達が出るんですか?」


「そうだ。この大会でいい成績を残せば、東斗杯に出られるようになる」



東玉流総合空手 東斗杯


八箇所の地方選抜戦と本戦からなるトーナメント戦であり、東玉流総合空手の最大のイベント


本戦は地方選抜戦の優勝者同士でのトーナメントとなり、このトーナメントに出場することが、東玉流総合空手のプロフェッショナルイベント、「KAWANAKAJIMA」への出場資格となる


つまり、この本戦に出場できればプロになることができるのだ



「か、格闘技のプロに…」

「すげー」


「プロになればファイトマネーも出るようになるし、スポンサーもつく。だが、勝てなきゃ試合を組んでもらえなくなり、試合に出られなければプロ資格も剥奪になる」


「厳しい世界ですね」


「だからこそ、出場者は必死なんだ。オープントーナメントで結果を残し、本戦に向けて地方選抜選を必死で勝ち残る。プロまでの道だけでもかなりの難しさだ」


「うちの空手部、去年はどうだったんですか?」


「去年は俺以外がすぐ辞めちまったからな。俺が優勝しただけだ」


「ゆ、優勝!?」

「ゴドー先輩が!」


こ、この人、化物だと思ってたけど、やっぱ凄かったんだ!



「オープントーナメントくらい余裕だ。その後、俺は地方選抜戦と本戦を優勝した」


「さすが…」

「それじゃあ、ゴドー先輩ってプロなんですか?」


「なれるが、まだなってねーよ」


「えー、何でならないんですか? お金貰えるし、有名になれるし、もったいない」


「いろいろあるんだよ。やり残したことがあるからな」


「やり残したこと?」


「うるせーな、そんなことはどうでもいいんだよ。稽古始めるぞ」



俺達は、バンテージを巻いて構える


「よし、ワン・ツーからだ」


「はい」



シャドーをひたすら繰り返す

終わったら、次はサンドバッグだ


「今日から、首相撲を教える。ラーズ、来い」


「お願いします」


ゴドー先輩が俺と組み合う


「お互いに首を取り合う。目的は首を折って前に倒すことだ」


「うわっ」


首を前に倒されて崩される



「抵抗しろよ。崩されないために胸を張る。そして、相手の腕の内側から首を取るんだ」


「はい!」


俺はゴドー先輩の首に腕を伸ばし、前に倒す


「首だけじゃなく、肘を使って相手の腕を押さえることも大事だ」



ブンッ!


「うおっ!?」



ゴドー先輩が回るように体捌き

俺は前のめりに倒される


「これが首相撲の流れだ。スタンドでペースを握れるのはデカいし、レスリングや柔道にも対抗できるムエタイの技術だな」


そう言うと、ゴドー先輩が俺の首を横に倒す



ドスッ!


「ごはっ…!」



横っ腹に膝がめり込む


「崩せれば一方的に膝をぶち込める。あとは…」



ゴンッ!


「痛ー!」



組んだ腕を折りたたみながら、横に振るわれる

肘が俺の額にぶつけられた



「鬼…!」


「手加減しただろうが」


「全然足りないです、涙が出るほど痛いんですよ!?」


「耐えろ。そして、ロンとさっさと稽古を始めろ」


ゴドー先輩は、全然取り合わずに寝転がる


「ラーズ、やろうぜ」


納得はできないが、俺はロンと首相撲を始めた






………






……











「ありがとうございました!」


ゴドー先輩にお礼を言い、今日の稽古は終了

いい汗かいたぜ…


「腹減ったっすねー」


「ゴドー先輩、飲みに行きましょうよ」


俺とロンはシャワーを浴びて帰り支度


「俺は夜練だ」


「え、もう七時ですよ?」


「アホ、普通のジムや道場は夕方から夜十時とかくらいだぞ。会員も仕事終わってから来るからな」


「そ、そうなんですね」


「大学の部活って、練習にはいいんだなぁ」


「でも、ゴドー先輩、練習時間が長すぎませんか。俺らが来る前もレスリング部に行ったんですよね」


「お前らの稽古を見るくらいなら疲れねーよ。弱すぎて稽古になりゃしねー」


「うぅ…酷い」

「頑張ってるんだけどなぁ」


俺達はゴドー先輩を見送る


「ロン、どうする? 二人で行くか」


「よし、ケイト先輩を誘おう」


「…いいね、それ」


「電話してみるわ」


ロンがPITを耳に当てた



「…」


「何だって?」


「来てくれるってさ」


「やった!」


「でも、まだ着替えてないから先行っててくれって」


「よし、始めとこうよ」


俺とロンは、駅前の居酒屋「魚々」に向かった




「乾杯ー!」

「お疲れ」


カンッ!



俺とロンはジョッキをぶつける


「うめー!」

「運動した後だと、ビールの苦みがたまらないよな」


グビグビ

「めっちゃ同意」


ゴクゴク

「やべー、ジョッキを持つ手がプルプルする」


グイーッ

「首相撲、腕と背筋が疲れるよな」


プハッ

「首も熱いよ、後で痛くなりそう」


「お、ケイト先輩、バス降りたってさ」


「早いな。つまみ頼んどこうか」


「オッケ」


俺とロンはメニューを広げる

夜はこれからだ


人体の構造 序章 第四話 特技スキル

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