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ボクが見る幻想と現実

「凪くん、ボクはもうダメかもしれない」


「先輩! すいません。自分が無理を言ってしまったせいで……」


 ジェットコースターは心臓に悪い。恐怖のあまり、普段出さないような声を出してしまった。

 なんというか、ジェットコースターが怖いというより、そんな声を凪くんに聞かれてしまった事が恥ずかしくて、辛くて、今にも死んでしまいそうだよ。


「君は優しいな。気に病む必要はないよ。ボクが弱かった。それだけのことさ。……少しだけ、休ませておくれ」


「では、自分は冷たいものを買ってきます!」


 ボクの返事も待たずに、颯爽と走り去ってしまう。……できればそばにいて欲しかったよ、凪くん。


 ジェットコースターを終えてから少し時間が経っているせいか、空は赤みを帯び始めていた。

 遊園地の景色も、夕陽に染まるだけで違って見えるものだね。


「……ちょっと寒くなってきたね」


 日が落ち始めたせいか、肌寒さも覚える頃合いだ。そろそろ上着を出しておいた方がいいかな?


 あまりショルダーバッグというものを使い慣れてないせいか、少し肩が痛くなってしまったな。

 上着を出そうとバッグの中を漁る。お弁当も入れないといけなかったから、ちょっと大きめのバッグにしていたのだけど……。


「あれ……?」


 お弁当やリップ、お財布に小物入れ……うん。いくら漁ってみても、目的のものは見つからない。


 ちゃんと入れたつもりだったんだけど、忘れてしまったみたいだね。


「まあ、我慢できる寒さだよね」


 肌寒いといっても、春の陽気は残ってるし、凍えるほどじゃない。

 このまま暗くなったとして、そこまでは寒くはないだろうさ。……寒くならないでおくれよ?


 『彼の上着を借りるのも手』。昨日のカナメの言葉が頭をよぎる。

 凪くんの上着か……想像するだけで体が火照ってきちゃうじゃないか。肌に触れる風が、さらに冷たく感じてしまうよ。


「今日は楽しかったな」


 色々、恥ずかしくて上手くできなかったこともあった。

 凪くんの顔をまともに見れない事もあったし、恥ずかしい声まで聞かれてしまった。……ボクの羞恥心はすでに限界を超えているかもしれないね。


 でも、恥ずかしい中にも嬉しいことは一杯あったんだ。

 入り口で会った時の彼の表情はとても可愛かったし、メリーゴーランドでのエスコートはカッコ良かったよね。

 ボクのお弁当を美味しいと食べてくれたし、その後は勇気を出して手も繋ぐ事ができた。

 本当に良い一日だったと思う。


「……結局、充とカナメはどこに行ってしまったのかな」


 それでもずっと気になっているのは、やっぱりあの二人の姿だ。

 一度しか見ていないから、見間違いという可能性もあるけれど……。


「ちょっと進藤、ダメだってば!」


「なにがダメなんだよ。後輩もいないし、さっさと渡して帰れば良いんだろ?」


 なんだか聞き慣れた声。それに進藤って……


「み、充? それにカナメも。二人ともどうしたんだい?」


 声の方に視線を向ければ、充とカナメがいるじゃないか。

 やっぱり見間違いじゃなかったみたいだ。ボクの前に現れたってことはやっぱり、二人はそういう関係だったということなんだね?


「もぅ、進藤が言うこと聞かないから! エリーだって混乱してるでしょ!」


「うるせぇ。こいつがドジなのが悪いんだから、こっちに非はないだろうが」


 な、なんかボクがけなされていないかい? 


「とりあえず、説明してもらえるかな、二人とも?」


 二人は顔を見合わせ、カナメが大きくため息を吐く。どういう反応なんだい、それは。


「えっとつまりこれはね、エリー。あれだよあれ。えーっと──」


「お前が上着忘れたんだろうが。望月からアドバイスとやらをもらったらしいが、忘れてちゃ世話ないよな」


 そんな悪態をつきながら、肩に担いでいたパーカーを急にパタパタと……ボクの頭はこんがらがっているよ。二人はお付き合いしているんじゃないのかい?


「よく分からないけれど、二人はどうしてここに」


「ほら」


 おおぅ。ボクの言葉も中途半端に、充の上着が頭から被せられる。


「な、なにをするんだい充! まだボクの話が終わっていないんだよ!」


 なんとか上着を払い除け、充に怒りの視線を送ってみる。なんで呆れた顔で返すのさ。


「お前の話なんかどうでもいい。俺たちはただ偶然この遊園地に遊びにきていて、偶然みつけたお前が上着を着ていなかった。そんな状況をみたなら、仕方なく上着を渡すのも、さもありなんだろうが」


 偶然に偶然で仕方なく……なるほど。


「いやエリー? 今の信じるところじゃないと思うよ?」


「へ? そうなのかい?」


 今日のカナメはよくため息をつく。疲れているのかな。


「別に、あたしたちは遊びに来た訳じゃないし、多分エリーの思ってる関係でもないから。変な勘違いは、お互い良くないと思うんだよね」


「じゃあなんで二人はこんなところに?」


 遊びに来たわけでもなく、カナメがボクの思っていることを理解しているとするなら、二人は何のためにここに?


 二人して言い淀むのはなんだか怪しいな。


「あれ、先輩。こんなところで会うなんて奇遇ですね?」


 凪くんが帰ってきたみたいだ。

 言い方に含みを感じるのはなんでだろう?

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