◇life13 「本作はテニスが中心の小説ではありません!」
ずいぶん更新が遅れてしまったことをお詫びします
まぁ年末は何かと忙しいですね
よぉ、こんなとこで逢うなんてな。え、なんで"そんな格好"してるかって?…見ての通り…――
―――罰ゲームさ。
クソっ、このままじゃ俺は本当に学園の変態、さらし者になっちまう。早く、一刻も早く課題をクリアして戻らねえと…!
日曜の人の多い図書館を"こんな格好"で…!!
あぁ、そもそもなんでこんなことをさせられてるか、っつーと…――
◇
5月26日日曜日快晴。
季節は初夏を迎えようとしている。暑すぎることも肌寒いこともないこの時期、スポーツをするにはうってつけだ。
さて、そもそも俺たちは久々に4人でテニスしにきたんだ。
ただ打ち合っても面白みがないから、とか言って罰ゲームを用意した。
言い出しっぺ?
俺だよ…。
「最下位のヤツはそれ以外の3人の言うことを何でも聞く、っつーことで!」
「ほー、晃にしてはずいぶん鬼畜なこと言うじゃないか」
「…なんか意地でも負けたくなくなったわ」
「あんまりむちゃなことは言わないほうが得策よ?ほら、言うじゃない"口は…"」
「"目ほどにモノを言う"!だろ?」
「うーん…、それを言うなら"目は口ほどに"よ。それに本当は"災いのもと"って言いたかったんだけどね」
……。いや、バカじゃねーよ?ちょっと記憶が曖昧で…。
「こいつのバカは今にわかったことじゃないわ。やるならサッサとやろうじゃない」
なんかもう、いちいち俺への侮辱にツッコむのがちょっと疲れてきちまった…。
「…晃、熱でもあるのか?」
「なんでだよ?」
「けなされてるのに否定しない」
「なんか疲れた」
「おいおい、それじゃ自他公認のクズになるぞ?まぁどちらにせよお前のバカに変わりないがな」
よくわからんが、こいつはすごくいいことを言ってるような気がする。
「サンキュー、翔。俺は大丈夫だ」
「(……、こいつはもうダメかもしれんな…)」
ボソッと暗い表情で何かを呟く翔。ここ最近こいつの反応がわからねえ。
「…で、どうやって決めるの?」
「何を?」
「順位」
「あぁ、説明しよう!――」
・ゲームは1セットマッチ12ポイントタイブレーク、デュースあり
・リーグ形式で全試合行う
・男女ハンデで0-15から
・能力使用可能
・勝ち点が並んだ場合は得失ゲーム差で決定
どうだ?完璧だろ…?俺のプラン。
「アンタにしちゃよく考えたじゃない」「だろ?なんてったって昨日寝ないで考えたからな」
俺は大きく胸を張った。
「一つ追加してもらえるかしら?」
この完璧なプランに口出ししようとは、香奈も度胸あるヤツだな。
「能力の使用は一試合3回まで」
なるほど、あくまで競技姿勢にこだわろうってわけか。こいつも本気だな。
「いいぜ、燈響祭を考慮するならルールも燈響祭に合わせようじゃねえか」
◇
くじの結果―――
第1試合
翔-晃
第2試合
翔-伊織
第3試合
翔-香奈
第4試合
晃-香奈
第5試合
伊織-香奈
第6試合
晃-伊織
「なんかズルくない?!」
「は?」
「みんな連戦ありなのに、アンタだけ十分休んでるじゃない!」
急に何を言い出すかと思えば…。
「おいおい伊織、これは厳正なくじの結果だぜ?俺の運がさいきょーだっただけじゃねーか」
「"昨日徹夜でイカサマくじ作って正解だったな"」
!!!!!
「悪いけど"読ませて"もらったわ。…あなた、昔から嘘をつくのが下手ね」
「…やーっぱりズルじゃない。いいわ、アンタのその腐った根性叩きなおしてあげるから!」
「さぁ、やろうか晃。真剣勝負だ」
トスの結果は俺サーブ。
やっぱり、出だし1ポイントは大きい。ここは一発でかいフラットを…。
『センターにフラットよ』
「了解!」
……?
見えなかった。ヤツのリターンが見えなかった。
「ってか、今香奈コース読んだだろ!!?」
「あら、先にイカサマしたのは誰だったかしら?」
くっそ!これじゃ、まず勝ち目ねぇじゃねーか!!!
「香奈、悪いが助言は必要ない。俺は真っ向からこのバカを叩き潰す」
上等じゃねーか!いつまでも自分が最強だと思ってんじゃねえぞ!!
0-15―――
―――ゲームカウント5-1、翔リード。
晃も頑張ったけど、やっぱり翔にはかなわないわね。…まぁいい気味だけど。
「…まだ能力が2回使える」
まだやる気かしら?あいつはあきらめ悪いからねー。
どうやら風にサーブを乗せるみたいね、まぁ風系の能力者なら常套手段よね。
「くらえッ!!」
晃は持ち前の早めのフラットサーブに風の能力を付加し、超高速サーブを放った。…がそこは天才真中翔、目では追いきれない高速サーブをきれいな形ではないもののなんとか返す。
「ハッ!!」
だが通常よりは浅めの翔のリターンを見逃さず、すかさず晃は前へ詰めてドライブボレーで仕掛ける。
さすがの翔もこれだけのテンポで攻められては取ることはできない。
15-0――
「まだまだァッ!!」
次は先ほどの高速サーブよりはだいぶ遅い、しかしかなりキレるスライスサーブを打った。先のサーブがあれだったために速度の落差のせいで非常に打ちにくい。晃に残された能力使用の回数は1。まだ使うわけにはいかない。
タイミングを大きくズラされた翔だったがそこはさすがと言うべきか、ボールを見極め攻撃的なリターンで返す。だが、あとのない晃はより攻撃的なショットで応戦する。
ほぼ互角に思われたラリーの応酬は晃が翔の不意をついたドロップショットにより決着。
30-0――
ここで晃は再び高速フラットのサーブを放つ。再びラリーが続くかと思いきや、ラリー中に能力を使い、通常ではありえない速度のショットで翔からエースを奪う。
40-0――
明らかに有利なポイントだが相手は翔、格上だ。しかももう能力は使えない…、このポイントがカギだ。
「もらった!!」
晃はここぞの高速フラットでワイドに打ちこむ。これまでセンター狙いだった分、センター寄りで逆をつかれた翔はスライスでなんとか返球する。しかし、明らかにふかしたリターンを見逃さずにボレーで仕掛けると見せかけて、ドロップボレー。
ここにきて晃はラブゲームでキープに成功。
「ずいぶん頑張ったみたいだけど、もう限界かしらね」
「まぁ、翔に2ゲームとれただけでかなりの健闘じゃない?」
二人がサイドから試合を批評しているが、どうも俺が負けると思っているらしい。
ここからが本当の闘いだというのに…。
――――ゲームアンドマッチ翔6-2
「ずいぶん苦戦させられたな」
このヤロー、ラストゲームを全部サービスエースで決めておきながら何を言うか…。
「イカサマしたわりには普通に強くなってたじゃないか」
「まぁ、調子良かったしな」
急に誉めやがって…、照れるじゃねーかこのヤロー。
「結果は結果よ。アンタの負け」
「んだよ、可愛くねぇな」
どうやら俺が気にいらないのか、伊織は怒ったように背を向ける。
「ちょっと飲み物でも買ってくるわ」
意外と気がきくあたりはさすが伊織。ふと翔のほうを見てみたが、軽い汗しか出ていない。こっちなんかは汗だくだというのに…。
「買ってきたわよ。みんなこれで良かった?」
伊織は手に持った3本のスポドリを俺たちに見えるように小さく掲げた。
ん?
もう一度"気がきく"伊織の両手を確認する。
500ミリと思われるペットボトルがやはり3本。
この展開は…嫌な予感しかしない。
「はい、お疲れ翔。香奈も暑かったでしょ?んで私も…」
「ちょっ、待て。ちょっと待ってくれ…」
「何、何の用?言っとくけどイカサマするような卑怯者におごる飲み物はないわよ」
「…って、それそんな引っ張るか?!それに自分で言うのもアレだがあんなみみっちいイカサマにそこまで怒らなくても…」
ヤバい。やっぱり結構怒ってる。そういやイカサマとか、曲がったこと大嫌い系のキャラだったな。
「あ、やっぱ悪かった。もうこんなセコい真似しねーから…」
「だから何?私は別に怒ってないわよ。ただアンタの評価は今年で二番目に低いけどね」
「できれば俺の分も欲しいなぁ…なんて。わざわざ買ってきてくれ、とは言わねえよ。飲みさしで構わねえから…」
途端に顔が紅潮していく伊織。
「なな、何言ってんのよ!?…」
(バカ…)
「…もうッ、別にアンタのためじゃないんだからね?!私がもうお腹いっぱいなだけだから!」
あ。
落ちた。
たまに垣間見えるいわゆるデレを見ると、可愛いなぁと思う。普段からこれくらい素直なら彼氏の一人や二人できるだろうに…。
まぁありがたくいただくとしよう。
「なぁ香奈」
「どうしたの翔?」
「やっぱりあの二人はお似合いだと思うんだが」
「そうね…。問題は晃だけど」
「だな」
◇
なんてこった…。
ここにきて翔が文句なしの全勝。香奈は2勝1敗。
…俺と伊織が2敗どうしで最下位決定戦。
まさか香奈に負けるとは思わなかった…。クソ、あとがねえ!
「絶対に負けないんだから」
そしてこの伊織だからな…。いや、ついさっきデレを見せたコイツなら…――
「なぁ伊織、さっきは飲みモンありがとな…」
「…は?何いまさら?何考えてるか知らないけど今のアンタ気持ち悪いわよ」
―――どうやらダメみたいだ。
いや、伊織は連戦で疲れがあるハズ。普通に考えて負けるわけがない…。
伊織のプレースタイルはわりと堅実につなげてオーソドックスに攻める基本忠実型だ。むちゃをしない分疲労しやすいスタイルでもある。となるとこちらとしては、体力消耗を狙ってテンポを合わせて長いラリーをするか、もしくは多少むちゃしてでもゴリ押しでいくか。
俺はもちろん後者を選ぶ。ネチネチつなげるなんて性にあわねえ。
『1セットマッチ伊織トゥサービスプレイ』
始まってしまった…。
この1セットで運命が決まる!




