◇life12 「おかえりなさいませ」
やたらとイベントごとの多い学園設定…。
ネタには困らないですが…
結局、あの後長い議論の末に俺たちの模擬店は"執事・メイドカフェ"になった。
あぁ…、名前の通りの究極の妥協案さ。ま、確かにここは男のスペックもかなり高かったからな…、でもまあ結果オーライだ。
夢のユートピアを現実に!!
今、俺と犀雅先輩はこのスローガンのもと、意気投合している。…ただでさえハイテンションな犀雅先輩と多分それなりにやかましいほうの俺が一緒になっているからだろうか、生徒会室のムードはだだ下がりである。
今日は土曜日。テスト明けの週末…、本来なら出かけたり、一日中ボーっとしたりとオフを満喫するのだが、燈響祭のためこうして会長に集合させられている。
「…何?あのバカはともかく、天童先輩ってそういうキャラだったの…?」
「…そう、みたいだな」
「…どうしてここの人たちはこんなにキャラが濃いのかな…」
「…多分だが、その台詞はお前にも当てはま…ぐほッッ!」
「何か言った?」
「…ひあ…あにお(いや、何も)…」
(あなたも十分よ…翔)
…なにやら3人が盛り上がっているが、気にしないでおこう。それより模擬店の打ち合わせだ。やらなきゃいけないことは山ほどある。さぁ何から始めようか!
「よし、次は各競技のキャスティングだな」
まったく、この人は出鼻をくじくプロか…。
「野球やサッカー等団体種目には一応みんなに参加してもらう。個人種目で出たいのがあったら言ってくれ」
ちなみに個人種目は闘技トーナメント、短距離、テニス、柔道の4つ。各クラス(生徒会含め)男女各1名ずつ選出される。闘技トーナメントは各クラスの最強が、他の3つは基本的にその部の連中に頼んだりするのだが、あいにくここは生徒会。誰もこれといった部には所属していない。…それでも現役でやってる奴らにも負けないのが生徒会メンバー。
闘技トーナメントは言うまでもなく、会長、副会長の2トップ。残りは…――
「俺は短距離だあああぁぁあ!!!!」
そんなこと言われなくてもわかっている、と言わんばかりに会長はスッとホワイトボードにくせのないきれいな字で、短距離:天童、と書いた。
「じゃ、私も」
うん、伊織は昔から抜群に足が速かった。
「短距離は決定でいいな?次、テニス」
テニスは翔に付き合わされて小さいときからやっていた。だから俺もそこらの現役部員には負けないとは思う。が、あいつには永遠に勝てる気がしない…。中等部の頃、トップレベルの奴と一週間テニス留学とやらに行ったくらいだ。
「俺がいきます、会長」
「ほう、あれ以降強くなったのか?」
…どうやら会長も行ってたらしい。どんだけ万能なんだ…。
「まあ一応は…、大したことはないですがね」
大したことありありなんだがな。
「後期で手合わせしたいものだな」
「何言ってんですか、かなわないですよ」
「俺はお前のバリエーション多彩なショットには一目置いている」
「会長のライジングのラリーテンポには付いていけないですよ」
多分、多分すごいレベルの話なんだと思う。ポ◯モンとかだったら個体値がー、とか努力値がー、とか言ってるレベルだろう。
おそらく会長のほうが翔より強いんだろうが、かぶせが効かないのでそれはできない。 この流れだと、女子は…――思った通り、彼女はゆっくりと手をあげた。
「おお、香奈、いってくれるか?」
「はい、テニスならいけます」
そう、香奈や伊織、あの頃は宙もいたっけな。俺たちは翔に誘われて5人でよくテニスしたものだ。香奈はもともとあまり運動が得意なほうではないが、テニスなら大丈夫だ。
それにしても、いまさらながらこの会長、初見から下の名前で呼ぶから何とも親しげだ。何でも少しでも面識があれば全員下の名前で呼ぶとか…。馴れ馴れしいと思わせないあたりがやはりカリスマ的である。
俺?俺はただ呼びやすさで…
「…さあ、あとは柔道か…」
なぜか。本当になぜかわからないが、この部屋の全員が俺を見た。
「…、さて女子のほうは…」
「なんで決定してんだ、なんで?!」
「……私やる」
「智子先輩が柔道?!!」
「これでキャスティングは済んだな」
「無視すんな!!?」
「なんだ晃。"決定事項"だ、諦めろ」
「諦めろ、ってなんだよ!逸樹先輩とか祐介先輩とかもいるじゃねーか」
なんで俺なんだ、なんで…。
「他の1年が3人とも出場するのにお前だけ出ないのはアンフェアだろう?」
「う゛っ…」
「それに、逸樹は生徒会の重要な応援団長だ。祐介はムラが多すぎて、競技に使うにはリスクが高い」
全員が全員「もうお前しかいない」目線を俺に向ける。昔から役を背負わされるのは好きじゃねーんだよなあ…。
「……、わかったわかった。やるよ」
「よし、今日の議題は以上だ。解散」
って速えぇ!!俺が負けを認めてからの流れがハンパなく速えぇ!!!
しょうがないから4人で帰ろうとしたときだった。
「ちょっといいかしら…?」
どうしたのか、渚先輩には珍しく少し謙遜したようすだ。てっきりまたガミガミと言いがかりをつけられるかと思った…。
「綾瀬えぇえー!!!!」
「…はいぃぃ!!」
思わず反射的に返事してしまった。俺を呼んだのはもちろん犀雅先輩。
「悪ぃけどまた今度でいいか?ちょっとアッチの話を…」
「ちょ、ちょっと…」
やっぱし口うるさくない渚先輩はちと苦手だな…。やりづれー。
「この変態!!」って捨てゼリフを吐いていたが、俺は気にしない。いや聞こえない。
男なんてみんなこんなモンさ。
◇
「…とゆーわけでぇ、俺は西に行かねぇといけねぇの」
薄暗い何もない空間。そこで口を開くのは例の黒コートの青年。
「…フンッ、理事も面倒なこと頼みやがんな。…で何の用だ、私は関係ねーよな?」
答えるのはあの口の悪い女。
「うーん、俺がいねぇ間に"コイツ"張っといてくれねえ?」
青年は先の資料を女に手渡す。
「ハァ?!面倒くせぇ!なんで私が?」
「まぁー、そう言うなって。別に◯◯だけにやってくれとは言ってねぇんだしよぉ。"他のメンバー"使ってもいいんだぜぇ?」
「……、帰ってきたらぶっ殺すかんな」
「おぉー、怖ぇ〜…。……じゃーあな」
すでに部屋に彼の姿はなかった。
◇
「…で、コスプレの手配は済んだ、と」
「もちろん、かなーりきわどいのにしといたぜ…!」
「……、犯罪にならないか?」
犯罪?何の話だ?
「?…大丈夫だろ〜?」
まぁ翔の妄想がぶっ飛んでいたってことだわな。
「物凄く不安なんだが…」
何をこいつはそんなにビビってんだ?
「"◯◯◯用フリフリ×××Verメイド〜御主人さまの***癒やします〜"ってーのを頼んだだけなのに…」
「今すぐ!!今すぐ手配を取り消してこい!!!あと、あのハイテンションやろうを連れてこい!!!!!」
◇
こうして俺たちは犯罪を犯さずに済んだ(らしい)。無事、オーソドックスなメイド服+執事スーツも手配できた。
明日は久々のオフ。翔と香奈のために俺たちは久しぶりに4人でテニスをすることにした。
燈響祭開始まであと一週間と2日。




