成果
リアルの方が何かと忙しく、お待たせしました。第二章、始まります
忙しいのも落ち着いたので、これからは短いスパンで上げられるかと思います
なにとぞよろしくお願いします
鋭く突きこまれた木剣を、体をひねってかわす。いくら訓練用の木剣と言えど、職業「剣士」を持つクラスメイトが繰り出すそれは立派な凶器だが、今更そんなもので体がすくむことはない。
「ふっ」
軽い呼気とともに、僕のわきを抜けた木剣が跳ね上がるように顔面に迫る。一撃目の突きをかわした瞬間からこの追撃は予想できていた僕は、自分の持つ木剣を相手の木剣の側面に叩きつけることで、強引に対処する。
「……」
「……」
一瞬、相手と僕の間に訪れる膠着。二度の攻撃に対処したことで体勢が崩れている僕だが、それは相手も同じこと。攻撃中の木剣に、側面からの予期せぬ方向からの力が加わったせいで、すぐさま攻撃できる状態ではない。
沈黙ののち、お互いが示し合わせたように後ろに距離をとった。いわゆる一足一刀の距離。互いに、相手の打ち込んでくるタイミングを読みあい、自分の打ち込むタイミングを計る。先ほどとは異なる、嵐の前の静けさにも似た沈黙。
――と、息の詰まりそうな沈黙を破ったのは、凛と通った鋭い声だった。
「そこまで!」
その声が聞こえると同時に、僕はふっと構えを解いた。相手も同じように構えを解き、こちらを見てあいまいに笑う。その笑みに対して、僕も似たような笑みで返した。模擬戦が終わった後の、この何とも言えない相手との距離感は、お互いいまだに慣れないようだ。
ぐるりとあたりを見回す。訓練場の端あたりにいる僕の位置からは、訓練場内に散っているクラスメイト達がよく見える。
各々、自分の職業にあった武器をもって息を整えているクラスメイト達と、その間を鋭い視線を走らせながら歩いているメルさん。僕らは現在、メルさんの指導の下、毎日恒例の訓練となった二人一組での模擬戦を行ったところだった。
ちなみに模擬戦の相手だが、これは馴れ合いや癖の固着を防ぐために毎回ランダムな相手と組むことになっている。さまざまな職業のクラスメイトと戦うことで、各職業ごとの得意な距離などが分かって、自分の訓練になることはもちろんのこと、クラスメイト達との連携訓練の助けにもなっている。――まあ、剣士と当たることが圧倒的に多いんだけどな。
実力が拮抗した者同士で訓練をした方が良いのでは、とも思ったが、今現在クラスメイト達の間でさほど実力差がついていないというのが実際のところだ。
まあ、例外はいるけどな。
訓練場の、僕がいる方と反対側に視線を向ける。そこでは、僕らが行っているのと一線を画した模擬戦が行われていた。
「――やっ!」
鋭い居合の声とともに、木剣が振り下ろされる。その速度も目を見張るものだったが、驚くべきところはその木剣が炎をまとっているところだ。――っておいおい、普通にあれ危ないだろ。
だが、その剣を受ける男はもっとまともではなかった。なんと、迫りくる炎をまとった剣を素手で受け止めたのだ。しかも片手で。よく見ると、薄い光を手にまとわせているのが見える。おそらく、何か魔法的な防御なのだろう。しかし、あんなのありかよ。
炎をまとった木剣を振り下ろした女子も、まさか素手で受け止められるとは思わなかったようで、動きが止まっている。受け止めた男は、逆の手に持っていた木剣を動きの止まった相手に振りかぶり――瞬間、驚異的な速度で背後から迫った矢を振り払った。
あわてて視線を向けると、弓を構えた女子が小さく舌打ちして駆け出すところだった。――てか、マジでいつの間に矢を放ったんだ。全く見えなかったぞ。
矢の奇襲によって窮地を免れたと判断したのか、炎の剣を持ったまま後退する少女。弓をぴたりと構えたまま、冷静に立ち位置を調整する少女。戦いは振り出しに戻ったかに思われた。――が、真に驚嘆すべきはこの後だった。
「……」
男が無言のまま、地を蹴る。と同時に、その姿がぶれたように感じた。
「くっ」
後退していた少女が、小さく歯噛みする。男は驚異的な速度をもって、すでに少女に迫っていた。早すぎて、勝負にならない。
このままでは見方が危険と悟った弓を持った少女が、ザッと足を止めて弓をつがえる。それとほぼ同時に、カッと閃光が走った。
「……」
「……」
「……」
三者三様に無言で動きを止める。男の持った木剣が炎の剣を持った少女に突き付けられ、男の木剣を持っていない方の手から伸びた純白の槍が、弓を持った少女ののど元で止まっていた。勝敗は明らかだ。
「なんだあの人外大戦……」
あんなの混ざったら、一瞬で死ねるぞ。思わずつぶやくと、先ほどまで僕の相手をしてくれたいたクラスメイトが同意するように苦笑した。
あれが才能の差か。僕は構えを解いて和やかに話し始める三人の様子を見て、小さく息を吐いた。なんでも才能のせいにするのもよくない気がするが、あんなんどうしようもないだろう。
木剣に炎をまとわせていた少女は月川美月。職業「魔法剣士」。女子では珍しい近接職である彼女の職業は、まあ見たまんまというか読んで字の通りというか、そんな感じだ。きりりとした黒髪美人な彼女が木剣をふるう様は、なんというか画になる。木剣を構えたところで痛々しい感じしかしない僕なんかとはえらい違いだ。
さらに彼女はあの神代と幼馴染と言ってもいい昔からの間柄であり、神代と対等に話せる希少なクラスメイトだ。いや、神代は誰とでも対等に話してくれるんだが、あいつが完璧すぎて喋ってるこっちが勝手に気後れしているだけなんだが。
そんなわけで神代とも対等に話せる彼女に淡い恋心を抱く者は、男性はもちろんとして女子にも多い、らしい。聞くところによれば、彼女のファンクラブなるものが存在し、その半数が女子なのだとかなんとか。え、誰に聞いたかって?寺岡だよ。
次に弓を持っている少女が野中悠里。職業「弓術士」。こっちもこっちで、字面のまんまな職業だ。女性にしては短い髪と、何を考えているかわからない無表情の彼女は、その整った顔立ちも相まって神秘的な雰囲気を醸し出している。ぶっちゃけ、人間っぽくないというか生命体っぽくない。少なくとも僕は少し苦手だ。まあ、話したことすらないんだけど。
とはいえ、美人なのは確かなので、一部の男子からは熱狂的な人気があるとかないとか。これもソースは寺岡だ。
そして最後に、その二人を相手にしてまったく寄せ付けない力を見せたのが、言うまでもなく神代大地だ。あの万能な働きを見せた白い光は、職業「聖騎士」の力らしい。防御にも遠距離攻撃にも使える上に、あの発生速度。木剣を必死に振り回しているこちらからしたら、チートもいいところだ。
イケメンで誰にでも分け隔てなく優しく、さらにはチートじみた強さまで持っていて、それでも驕らない性格。わがクラスにおいて、神代の存在はもはや英雄と呼んでもいいまでに不動のものとなっている。この世界を救うべくして呼ばれた集団の中に、その集団から英雄視される存在が生まれるとはこれいかに。
この三人に、職業「炎術士」の宮野杏と、いつの間にやらすっかり神代に心酔してしまったこの国の王女セシリア様を加えた五人が、僕ら勇者集団の顔ともいうべきものになっていた。
誰が言ったか、人呼んで「神代ハーレム」。普通ならば失笑ものの呼称だが、王女まで加えてしまったその手腕を見てしまうともはや笑えない。さらに笑えないことに、この集団はセシリア様をのぞいて、全員がチートじみた強さを持っている。
神代は言うまでもなく、月川さんは先ほどみたとおりの高火力な魔法剣を操り、野中さんは弓の腕もさることながらその冷静な立ち回りと状況判断がずば抜けているし、「炎術士」の宮野さんは魔法の使い方がクラスメイトの中でずば抜けてうまいらしい。
それに比べて僕は――。軽く木剣を握り直す。別に卑下するつもりもないが、それなりに真面目にやってきたつもりなのに、あんな戦い見せられたらやる気も削がれるというものだ。
「全員、注目してください!」
凛とした声が響くと、僕含めクラスメイト達は訓練場の中央に視線を集めた。メルさんは自分に注目が集まったのを確認してから、辺りを軽く見渡して口を開く。
「今日の訓練はこれにて終了となります。来週に控えた出立に向けて、各自、体調管理は怠らないようお願いします。では、解散」
相変わらず短い挨拶とともに、クラスメイト達は一気に騒がしくなった。誰もが話題にしているのが、来週の出立についてだ。僕はこちらに歩いてくる寺岡に、軽く手を振った。
僕らが召喚されて約半年、魔王率いる魔族との戦いのときが迫っていた。
どうも、kimeraです。ここまで読んで下さり、ありがとうございます。
名前って考えるの難しいですね。
ほかの作者の方のように魅力的な名前のキャラクターを考えたいのですが、なかなか難しいものです。
感想・誤字の指摘・評価等していただけると、泣いて喜びます。よろしくお願いします。




